熊本市にあるカトリック系病院の慈恵病院が、経済的に苦しいなどの事情で子育てが難しい親から新生児らを匿名で受け入れるために病院1階の一角に設けて今年5月10日正午に運用を始めた。赤ちゃんポストはドイツの教会や病院などに設置されている事例があるが、日本で本格的に導入されるのは初めて。正式名称は「こうのとりのゆりかご」。
慈恵病院のホームページなどによると、病院の外壁に付いている縦50センチ、横60センチの扉を開けると、新生児を体温と同じくらいの温度にした保育器に預け入れることになる。赤ちゃんが置かれるとブザーが鳴り、病院の従業員が駆け付けて保護するが、親は病院側と接触せずに立ち去ることができる仕組み。ポストの扉のわきには病院の専門スタッフとつながるインターホンがあり、保育器の中には「もし、あなたがこのことで心配なことが起きたり、あるいはもう1度赤ちゃんを引き取りたいと思われる時は、私たちを信頼して、いつでも連絡してきてください」などと連絡先などを書いた手紙を置いている。
慈恵病院は、熊本県内で新生児が捨てられる事件が相次いで起きたことを問題視し、昨年12月に「こうのとりのゆりかご」の設置のための施設構造変更許可を熊本市保健所に申請した。厚生労働省が「現行法に違反していない」との見解を示したことなどを受け、熊本市は今年4月に設置を許可した。慈恵病院は「『こうのとりのゆりかご』への赤ちゃんの受け入れはあくまでも緊急避難的な措置であり、事前相談こそが母と子、双方を救う道であると考えている」と説明している。世論には「赤ちゃんの命を救うことができる」などとの評価する意見がある一方、「親の育児放棄を助長しかねない」といった批判も多く賛否が分かれている。安倍晋三首相は「大変抵抗を感じる。子どもを匿名で捨てていくことはあってはならない」との意見を述べた。