社会をよみとくキーワード

共同通信社記者の大塚圭一郎氏執筆、Z会の人気メルマガ「社会をよみとくキーワード」(毎週月曜日配信)より、
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大阪市長選
[2007年12月04日(火) ]

 関淳一市長(72歳)の任期満了に伴って今年11月18日に投開票があり、無所属の新人で民主党と国民新党の推薦を受けたTBS系列の民放準キー局、毎日放送(大阪市)の元アナウンサーである平松邦夫氏(59歳)が初当選し、事実上の一騎打ちとなった自由民主党と公明党の推薦を受けた現職の関氏の3選を阻止した。公選制になった1947年以降で民間出身の市長の誕生は初めて。投票率も43・61%となり、前回33・92%より9・69ポイント高くなり、統一地方選と別日程になった71年以降の投票率で過去最高となった。関市長の任期は今年12月18日までで、その後平松氏が市長の座に就く。任期は4年間。

 福田康夫内閣が今年9月26日に発足後(「社会をよみとくキーワード」10月22日号「福田康夫首相」参照)で初めての政令指定都市の市長選で、与野党とも大型選挙と位置付けて党本部の幹部らが続々と応援に駆け付けた。与党の自民、公明両党は推薦する現職の関氏が落選したことで福田内閣の出ばなをくじかれ、民主党は小沢一郎代表の11月4日の辞任表明と3日後の辞意撤回で党内が混乱した中で反転の材料をつかんだ。

 市長選は5人の候補者が争い、獲得票数は平松氏が36万7058票と、関氏の31万7429票に約5万票差を付けた。無所属で日本共産党推薦の元日本共産党大阪市議団長の姫野浄氏は11万3201票、無所属で元大阪市立大学教授の橋爪紳也氏は8万9843票、新人の派遣社員藤井永悟氏は8199票。

 大阪市は主に1980年代後半以降に第三セクター方式の開発を積極的に手掛け、その中には大阪市住之江区の大阪湾近くにある55階建ての高層ビル「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)、米国ハリウッド映画を題材にしたテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)などがある。
 しかし、多くの三セクは巨額の累積赤字や損失を抱えており、WTCと隣接する大型商業施設のアジア太平洋トレードセンター(ATC)、JR難波駅やバスターミナル、商業施設のある「大阪シティエアターミナル」を運営する湊町開発センターの3社は計580億円の債務超過を抱えて2003年6月に特定調停を申請して事実上経営破たんし、04年2月に金融機関が債権放棄するなどの特定調停が成立。プロ野球公式戦も開催されるドーム球場「大阪ドーム」(現京セラドーム大阪)を所有、運営していた大阪シティドーム、大阪市・南船場の飲食店や雑貨店の並ぶ地下街を運営する「クリスタ長堀」も04年11月、取引銀行などに債権放棄を求める特定調停を大阪地裁に申し立てた。うち大阪シティドームは調停が成立しても二次破たんの恐れがあるとして05年10月に会社更生法の適用を申請して経営破たんし、オリックスなどが事業を譲り受けた。

 さらに、北京に敗れた08年夏季五輪の招致失敗などで財政難が深刻化しており、大阪市は財政再建団体に転落する可能性も指摘されている。故磯村隆文前市長は三セク不振や五輪招致失敗のほか、市職員厚遇問題に対する責任が取りざたされ、関氏から2期目の退職金約4600万円の返還を求められたものの事実上拒否した。

 市長選では、こうした経営不振に陥った三セクの処理に加え、市職員のカラ残業・ヤミ年金などの厚遇問題を受けて関氏が進めた市制改革や財政再建が争点となった。関氏は、職員数削減のために職員の新規採用を原則として凍結するなどの改革の実績を訴え、大阪市営地下鉄の民営化を掲げて「改革続行」を訴えたが、告示直前まで自民、公明両党の推薦が決まらないなどの出遅れが響いたうえ、72歳の高齢もネックになって落選した。

 毎日放送の夕方のニュースをキャスターを約18年半にわたって勤めた看板アナウンサーだった平松氏は、「徹底した情報開示や事業の計画段階からの市民参加などにより、市政を『官』から『民』に取り戻すことが先決だ」と民間の力の活用を訴え、高い知名度を武器に無党派層からも幅広く集票したほか、労働組合などの支援も受けて当選した。平松氏は当選後に「大阪を再生したい」と意気込むとともに、大阪市営地下鉄の民営化については「現時点で民営化の話にはならない」と慎重姿勢を示した。

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