安倍晋三首相(以下、肩書は当時)は、7月29日に投開票された第21回参議院議員選挙(ブログ「
社会をよみとくキーワード」今年8月28日参照)で、自身が総裁を務める自由民主党が歴史的大敗したのを受けて内閣を大幅に入れ替え、安倍改造内閣が8月27日に発足した。従来の安倍晋三内閣(ブログ「
社会をよみとくキーワード」2006年11月7日参照)は、昨年9月の自民党総裁選で安倍氏を支援した論功行賞や側近を重用した「お友達内閣」と揶揄されたが、改造内閣は「内閣の要」といわれる官房長官に与謝野馨氏、外務相に町村信孝氏、財務相に額賀福志郎氏、防衛相に高村正彦氏を起用し、文部科学相の伊吹文明氏を留任させるなど、主要ポストに派閥の領袖や、閣僚経験のあるベテラン議員を配した。
内閣改造は、首相が憲法68条の「閣僚任命権」に基づいて人心一新などを目指して閣僚を大幅に入れ替えること。衆議院の解散、総選挙後に新内閣を立ち上げるのは「組閣」と呼ぶ。仮定論として、首相が衆院選前に内閣を再び改造すれば「安倍再改造内閣」、衆院の解散、総選挙を経て安倍首相が組閣すれば「第2次安倍内閣」と呼ばれていた。
注目されたのは、構造改革路線による「地方切り捨て」との批判が参院選惨敗の一因になったために新設された「地方・都市格差是正担当相」で、総務相の兼務で前岩手県知事の増田寛也氏を起用。また、社会保険庁の事務作業のミスなどが原因で国民年金と厚生年金の加入記録の年金記録不備問題が課題になっている厚生労働相には、安倍政権に批判的な発言をしてきた舛添要一氏が初入閣した。ほかに農林水産相の遠藤武彦氏、環境相の鴨下一郎氏、少子化担当相の上川陽子氏、国家公安委員長の泉信也氏、沖縄北方担当相の岸田文雄氏も初入閣した。
法務相には鳩山一郎元首相を祖父に持ち、鳩山由紀夫・民主党幹事長の弟の鳩山邦夫氏を起用し、渡辺喜美氏は行政改革担当相を留任して新たに金融担当相を兼務した。安倍首相に近い甘利明経済産業相や、自民党と連立与党を組む公明党の冬柴鉄三国土交通相、民間からの大田弘子経済財政担当相は留任した。女性閣僚は上川氏と大田氏の2人で、参議院からの登用は舛添氏と泉氏の2人、民間からが増田氏と大田氏の2人。自民党の派閥別では、津島雄二自民党税調会長が率いる津島派が最多の3人、安倍政権に批判的な言動が目立つ谷垣禎一元財務相がリーダーの谷垣派からの入閣は引き続きゼロだった。
同じく8月27日に決めた自民党役員人事は、幹事長に前外務相の麻生太郎氏、政調会長に石原慎太郎東京都知事の長男で幹事長代理の石原伸晃氏、総務会長に前国会対策委員長の二階俊博氏を充てた。また、昨年9月の安倍内閣発足時に定数の5人を満たしていた首相補佐官は、機能を疑問視する向きも多かった中で、拉致問題担当の中山恭子氏と教育再生担当の山谷えり子氏が留任するのにとどまり計2人に大幅縮小した。
安倍首相は安倍改造内閣発足後の記者会見で、閣僚に「政治とカネ問題」が発覚した場合は「自分で説明できなければ去っていただく」と説明責任を果たせなければ更迭する考えを示していた。しかし、遠藤農水相をめぐって自らが組合長理事を務める農業共済組合が国からの補助金を不正受給していたことが発覚した責任をとり、就任からわずか1週間後の9月3日に辞任。安倍首相は後任に、改造前の内閣で環境相と農相を兼任していた若林正俊氏を起用した。さらに坂本由紀子外務政務官も自民党支部の政治資金収支報告書に領収書の改ざんがあることを認め、同じ9月3日に辞任した。
改造前の安倍内閣は4人もの閣僚が交代し、中でも農水相ポストは政治団体の事務所経費で不透明な光熱水費などの疑惑を追及された松岡利勝氏が自殺し、後任で農水相になった赤城徳彦氏も政治団体の事務所経費問題などが相次いで発覚して参院選後の8月1日に事実上更迭されたばかりだった。このため、安倍首相の側近は閣僚を選ぶに当たって「政治とカネ問題」を抱えていないかなどの「身体検査」を強化したと説明していた。
だが、安倍改造内閣発足後も遠藤氏のほか鴨下一郎環境相の借入金問題、上川少子化担当相の資産公開での記載漏れといった閣僚の「政治とカネ問題」が相次いで発覚しており、安倍首相の任命責任や求心力低下を問題視する声が噴出。安倍首相は安倍改造内閣が発足してわずか約2週間後の9月12日に辞意を表明し、安倍改造内閣は1カ月ももたずに“解体”することが決まった。
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