JR福知山線脱線事故は、兵庫県尼崎市のJR福知山線で2005年4月25日午前9時18分ごろ、同志社前行き快速電車が制限速度の70キロのカーブに時速約116キロで進入して脱線し、線路脇のマンションに衝突して乗客と運転士の計107人が死亡、562人が重軽傷を負い1987年の旧日本国有鉄道分割民営化でJRが発足して最悪の事故になった。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は約2年2カ月をかけて事故を調査し、最終報告書をまとめて今年6月28日に公表した。
事故原因として、事故直前の伊丹駅でオーバーランをした高見隆二郎運転士(当時23歳、死亡)がJR西日本の懲罰的な日勤教育を恐れ、車掌にオーバーランした距離を過少申告するように要請し、オーバーランに関する車掌と輸送指令の交信に気を取られてブレーキ操作が遅れたと考えられることを指摘。ミスをした場合に乗務から外し、運転技術向上に効果のないペナルティーと受け取られていた懲罰的な日勤教育を課すなどの運転士管理方法が事故に関与した可能性があるとして、事故の背景にあるJR西日本の企業体質を厳しく批判。事故を起こした電車は宝塚―尼崎間を16分25秒で運転するダイヤも時間通りの運行は容易ではなく、JR西日本がダイヤ管理を適切に行っていなかったと考察。列車が制限速度を超えるスピードでカーブに進入しようとした場合、制限速度まで落とせる最新の列車自動停止装置「ATS―P」(ATSは英語のAutomatic Train Stopの頭文字を略)が現場カーブ手前に設置してあれば事故は防げたとも指摘した。
その上で、「所見」でJR西日本が取るべき措置として、精神論的な日勤教育を改善して制限速度超過の危険性を十分に認識させるなど実践的な教育に改めることや、人命最優先の運行管理をするように改善、車両形式の違いで出るブレーキ性能の差を小さくして運転士の負担軽減、事故時の被害軽減のための車体構造の改善などを提言。また、行政指導などに反映するために国土交通省や関係行政機関に向けた「建議」では、非懲罰的な報告制度の整備や事故情報の活用や、安全上の必要性が高い場合を除いて運転士が走行中に交信をメモすることの禁止、車両や信号機器などのメーカーに関係法令の周知徹底などを求めた。
△脱線事故を起こした快速電車の最後部(事故後に兵庫県尼崎市で筆者撮影)
最終報告書の認定事実によると、高見運転士は事故を起こした車両で回送電車としてJR福知山線の尼崎駅から宝塚駅に向かう途中、宝塚駅でATS(列車自動停止装置)による非常ブレーキが2回作動した。同志社前行き快速電車として宝塚駅を出発後も、停車駅の伊丹駅で所定位置より約72メートルも行き過ぎた。約1分20秒遅れで伊丹駅を出発後、高見運転士は走行中の車内電話で「まけてくれへんか」と松下正俊車掌に虚偽報告を依頼し、松下車掌は「だいぶと行ってるよ(だいぶオーバーランしているよ)」と答えて乗客の応対のため電話を切った。
松下車掌は輸送指令に対し、無線で行き過ぎた距離は8メートルだったと虚偽報告したが、高見運転士が右手の手袋を外していたとみられ、運転席から赤鉛筆が見つかったことから、否定的な態度で車内電話を切られたと思った高見運転士が「日勤教育を受けたくない」との懸念から、交信に注意を払ったため、ブレーキをかけるのが約16―22秒遅れた可能性があると指摘した。
JR福知山線脱線事故をめぐっては、兵庫県警尼崎東署の捜査本部が業務上過失致死傷容疑での刑事責任追及に向けて捜査。JR西日本も6人の有識者で構成する「安全諮問委員会」を立ち上げて2年間に計10回の委員会を開催し、今年7月3日に最終報告書を策定した。
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