ふだんは正面から構えて執筆することが多い「
社会をよみとくキーワード」だが、今回は主に祝日の翌日に発行している「オフタイム」なので肩ひじ張らずに趣味の話に触れさせていただこう。
「趣味は何ですか?」と尋ねられて「シャンソンを聴くのが好きです」と答えると、「ずいぶん渋いですね」との感想が返ってくることが多い。しかし、フランス語の「シャンソン」は「歌」という意味で、物知りの日本人ならば思い描くであろうエディット・ピアフの「愛の賛歌」やイブ・モンタンの「枯葉」といった往年の大御所の名曲だけが「シャンソン」ではない。私も「枯葉」や「オー・シャンゼリゼ」もカラオケのレパートリーにしており、2005年12月に関西マスコミ文化情報労組会議(関西MIC)の「歌う望年会」では「枯葉」を歌って「特別賞」を頂いたものの、フランス語の「シャンソン」でよく聴くのはもっと近年のポップス風の曲が多い。
先日、そんな好きな歌手の1人であるクレモンティーヌさんの歌声を至近距離で味わう恩恵に浴した。東京・六本木ヒルズで開かれたフランス関連のイベントに招待していただいたところ、ステージ上にクレモンティーヌさんが現れてミニコンサートと相成った。かつて仕事のためにコンサートに行かれなかったことを後悔していた私としては、「リベンジ」とも呼ぶべき劇的な出来事であった。
△「オー・シャンゼリゼ」を熱唱するクレモンティーヌさん(六本木ヒルズで筆者撮影)
ところが、披露したのが「愛の賛歌」と「オー・シャンゼリゼ」という他の歌手の楽曲だったせいもあろうが、ステージに耳を傾ける来場者の姿はわずか。クレモンティーヌさんが来場者にマイクも向けても、ぽつぽつとしか声を拾えない寂しい反応だった。以前、やはり好きな歌手の1人であるバネッサ・ウィリアムスさんが大阪市の複合商業施設のテープカットを取材する機会があり、私は喜んだものの来場者の反応薄に驚いたことがあったが、今回もその時の出来事をほうふつとさせた。ただ、ウィリアムスさんはいざコンサートに臨むと「ドリーミン」などの名曲を堂々とした声量で歌い上げ、その味わいを理解する聴衆をうならせていた。
そこで思うのだが、クレモンティーヌさんも「日本人でもよく知っている曲を」と遠慮するのではなく、自身の名レパートリーを聴かせるべきではなかったか。中でもカフェラテのテレビ広告にも使われていた「ジェレミー」は美しい旋律で、もしもステージから発していれば聞き覚えのある来場者が振り向いたはずだ。私もカラオケの手本としてじっくりと耳を傾けたであろう…。
クレモンティーヌさんの歌を間近で味わえた充足感とともに、この価値観を共有できる人があまりいなかった寂しさを胸に秘めながら、私は会場を後にした。クレモンティーヌさんの曲「パリ・ラ・ニュイ」にある「Par bonheur,je laisse s'effacer toutes les heures」(日本語で「何て幸せ 時間の流れるのも忘れて」の意味)というパロール(歌詞)を噛みしめながら…。
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