社会をよみとくキーワード

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赤ちゃんポスト
[2007年06月20日(水) ]

 熊本市にあるカトリック系病院の慈恵病院が、経済的に苦しいなどの事情で子育てが難しい親から新生児らを匿名で受け入れるために病院1階の一角に設けて今年5月10日正午に運用を始めた。赤ちゃんポストはドイツの教会や病院などに設置されている事例があるが、日本で本格的に導入されるのは初めて。正式名称は「こうのとりのゆりかご」。

 慈恵病院のホームページなどによると、病院の外壁に付いている縦50センチ、横60センチの扉を開けると、新生児を体温と同じくらいの温度にした保育器に預け入れることになる。赤ちゃんが置かれるとブザーが鳴り、病院の従業員が駆け付けて保護するが、親は病院側と接触せずに立ち去ることができる仕組み。ポストの扉のわきには病院の専門スタッフとつながるインターホンがあり、保育器の中には「もし、あなたがこのことで心配なことが起きたり、あるいはもう1度赤ちゃんを引き取りたいと思われる時は、私たちを信頼して、いつでも連絡してきてください」などと連絡先などを書いた手紙を置いている。

 慈恵病院は、熊本県内で新生児が捨てられる事件が相次いで起きたことを問題視し、昨年12月に「こうのとりのゆりかご」の設置のための施設構造変更許可を熊本市保健所に申請した。厚生労働省が「現行法に違反していない」との見解を示したことなどを受け、熊本市は今年4月に設置を許可した。慈恵病院は「『こうのとりのゆりかご』への赤ちゃんの受け入れはあくまでも緊急避難的な措置であり、事前相談こそが母と子、双方を救う道であると考えている」と説明している。世論には「赤ちゃんの命を救うことができる」などとの評価する意見がある一方、「親の育児放棄を助長しかねない」といった批判も多く賛否が分かれている。安倍晋三首相は「大変抵抗を感じる。子どもを匿名で捨てていくことはあってはならない」との意見を述べた。

 慈恵病院が運用を始めて間もない初日の5月10日午後、3歳ぐらいとみられる男児が預けられた。報道によると、男児は自分の名前や、父親とみられる男性に福岡県から連れてこられたことなどを話しているといい、身元は特定されている模様だ。病院が想定していた新生児とは異なっていたこともあって論議を呼んだ。

 知人の弁護士に一般的な法解釈を聴いたところ「親が子どもをコインロッカーの中に捨てるといった子どもに生命、身体に危険な状況にすれば刑法の保護責任者遺棄罪に問われるが、『こうのとりのゆりかご』の施設は生命、身体を保護できるシステムなので預けても保護責任者遺棄罪に当たらない」と指摘していた。ただ、預けた際に子どもが衰弱していたり、虐待されたりしていれば親が児童虐待防止法などに問われる可能性もある。

 新生児が「こうのとりのゆりかご」に預けられてそのまま親に引き取られない場合は、慈恵病院が健康状態などを確認した上で、2歳ごろまでは乳児院で育てられる。2歳を過ぎた子どもは児童養護施設に引き取られる。ほかに里親に育てられたり、特別養子縁組が行われたりする可能性もある。

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