社会をよみとくキーワード

共同通信社記者の大塚圭一郎氏執筆、Z会の人気メルマガ「社会をよみとくキーワード」(毎週月曜日配信)より、
キーワードの説明部分を、配信翌日の火曜日に本ブログにて公開していきます。
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株主総会
[2008年07月29日(火) ]

 株式会社の株主が集まり、経営者として業務の執行に当たる取締役と、取締役の職務執行や企業業績を監査する監査役の選任、他社との合併などを決議する企業の「最高意思決定機関」。決算発表が終了後に、株主を集めて定時株主総会を年に1回開かれている。日本は会計年度を4月1日から翌年3月末までとしている企業が多く、今年も6月下旬にピークを迎えた。かつら最大手のアデランスホールディングス(アデランスHD)や、流通大手のイオン、セブン&アイホールディングスなどは決算期を3月1日から翌年2月末としており、株主総会を5月に開催している。企業がほかの時期に重要事項を決める必要があると判断した場合は、臨時株主総会を開いて株主の承認を求める。

 証券取引所に上場している株式は証券会社を通じて売買でき、株主は保有株式数に応じた議決権を与えられる。持っている議決権が多いほど、株主総会の議案に対する賛成または反対の「意思表示」が強まる仕組み。株主総会時の議案で、取締役や監査役の選任といった「通常決議」は過半数の賛成、他社との合併や会社の定款の変更といった特に重要な議案の賛否を諮る「特別決議」では3分の2以上の賛成が必要となる。全株主が議決権を行使した場合でも、議決権の3分の1超を握れば「特別決議」を否決に追い込むことができ、議決権の過半数を取得すれば「通常決議」への賛否がそのまま反映されるため経営権を事実上握ることができる。

 企業は、株主総会の前になると開催を知らせる「株主総会招集通知書」を各株主に発送する。株主総会に出席できない株主は、招集通知書に同封されている「議決権行使書」に議案への賛否を記入し、総会前に返送すれば議決権の行使が可能。株主総会は、議決権行使書を含めて議決権の過半数に当たる株式を持つ株主が出席すれば成立し、議案の承認を求めることができる。

 かつて日本企業は企業同士でお互いの株式を持つ「株式持ち合い」が多く、株主総会も会社側の議案がそのまま通って短時間に終了する「シャンシャン総会」が横行していた。しかし、1990年代のバブル崩壊後に銀行や企業が持ち合っていた株式を手放し、株式持ち合いの解消が進んだ。代わって外資系投資ファンドや年金資金などが日本企業の大株主となるケースが増え、それらには大株主としての権利を行使して業績改善に向けた提案や、株主に還元する配当金の増額といった要求を突きつける「もの言う株主」も多い。

△自身の社長辞任と、筆頭株主のスティール・パートナーズが推薦する社外取締役の受け入れを内定したと発表するアデランスホールディングスの岡本孝善社長(現在は前社長、今年6月に筆者撮影)

 多くの日本企業に投資している外資系投資ファンド「スティール・パートナーズ」について、「社会をよみとくキーワード」2007年7月9日号の「キーワードの解説」では、このようにご説明していた。
http://www.zkaiblog.com/zkai04/archive/73
<筆者注>
1)ブルドックソースはスティールの新株予約権を約21億円で買い取った。
2)スティールは最高裁判所に上告をしたが棄却され、買収防衛策の発動が確
定した。

  「キーワードのその後」

 アデランスHDが今年5月29日に東京都新宿区で開いた株主総会で、今年2月末で議決権の28・8%を握る筆頭株主の米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドなどの反対により、岡本孝善社長を含む取締役7人の再任が否決された。投資ファンド主導で社長ら取締役の再任を否決したのは極めて珍しく、社会から大きな注目を集めた。

 スティール・パートナーズは今年2月にアデランスHDへ送った書簡で、アデランスHDの業績不振と株価低迷を受けて「過去及び昨今の低迷する業績を見るにつけ、我々は現経営陣の経営能力をこれ以上信用し続けることはできないと判断した」として岡本社長ら経営陣の総退陣を要求。併せて他社との経営統合や、スティール・パートナーズからの取締役受け入れ、新潟県胎内市にあるゴルフ場など本業と関係のないすべての資産の売却を検討するように求めた。

 岡本社長は書簡への返信で、2011年2月期(2月期の決算期は3月―翌年2月末)までの中期経営計画を推進して「企業価値を向上させ、株主と顧客、取引先、従業員を含むあらゆるステークホルダー(利害関係者)の利益に資する」と理解を求めながらも、スティール・パートナーズの要求に事実上の“ゼロ回答”を示した。スティール・パートナーズはこれを一蹴し、議決権行使書を通じて岡本社長ら取締役の再任に反対したほか、今まで役員選任に反対することはなかったという2位株主の米投資顧問会社ドッチ・アンド・コックスなども追随したため、再任が否決された。アデランスHDは新任の社外取締役2人だけが選ばれ、取締役数が会社法に規定している3人に満たなくなった。

 このためアデランスHDは6月30日、岡本社長が辞任して特別顧問に退き、後任社長に女性用かつらを製造、販売する子会社のフォンテーヌ(東京)の早川清社長を充てるトップ人事を内定。社外取締役にはスティール・パートナーズ・リミテッドのジョシュア・シェクター氏と、スティール・パートナーズが推薦する元三菱商事副社長の相原宏徳氏を迎え、ともに創業者で取締役最高顧問の根本信男氏、大北春男氏が取締役を退くことも内定した。アデランスHDはスティール・パートナーズなど複数の大株主はこの人事案に賛同しており、8月9日に東京都新宿区で開く臨時株主総会で承認されるのはほぼ確実だ(筆者注:8月9日の臨時株主総会で承認され、その後の取締役会で人事を正式決定した)。

 アデランスHDの経営陣が白旗を掲げた格好となり、スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表は「アデランスで起きたことは、日本でもはや株主を無視することはできないことを明確に示唆している」と“勝利宣言”ともいえるコメントを出した。

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http://www.zkaiblog.com/zkai04/archive/129