最近、鉄道ブームが一段と盛り上がっているようだ。鉄道紀行漫画『鉄子の旅』のヒットもあり、「鉄子」と呼ばれる女性鉄道ファンも広がっていると聞く。お堅い交通行政のイメージが先行していた国土交通省も、「鉄男・鉄子、みなさんの部屋」を開設して国民に鉄道の利用促進を呼び掛けている。原油高に伴ってガソリン価格が高騰している上、二酸化炭素の排出量削減が大きな課題となっている現状を踏まえると、鉄道に関心を持って利用することは時宜にかなうのではないだろうか。
皆様に閲覧いただいている「社会をよみとくキーワード」では、以前から鉄道関連のテーマを積極的に取り上げており、おかげさまで
Z会ブログに掲載している鉄道関連のキーワードへのアクセス数は多い。人気を呼んだ1つに、茨城県ひたちなか市を走る茨城交通湊線を引き継いで今年4月1日に発足した「ひたちなか海浜鉄道」(メールマガジン2008年3月31号、ブログ4月1日参照)がある。私は「筆者の見解」の中で「ひたちなか海浜鉄道は観光客誘致のために人気の高い旧型車両を土曜日や休日に積極的に走らせ、ホームページに運行時刻を掲載するなどして告知することが大切ではないか」と要望したが、ひたちなか海浜鉄道は6月から土、日曜日の旧型ディーゼル車両の運行計画をサイトに載せるようになった。
自動車、鉄道を問わず昔の車両に愛着を抱いている私としては「これは再訪するしかない!」と一念発起し、6月中旬に「ひたちなか海浜鉄道」を訪れた。茨城県の県庁所在地の表玄関である水戸駅から、JR常磐線でわずか1駅の勝田駅(茨城県ひたちなか市)に降り立つと、駅の片隅にあるプラットホームに「お目当て」がつかの間の休息を取っている。
この車両は1962年に製造されて旧羽幌炭鉱鉄道(北海道)で活躍していた「キハ222」で、70年の旧羽幌炭鉱鉄道の廃止後は茨城交通湊線(現ひたちなか海浜鉄道湊線)に転じて地元利用者や観光客、海水浴客らの足となってきた。旧日本国有鉄道の塗装をほうふつとさせる塗装がよく似合う。正面は上部に1灯だけのヘッドライトを冠し、貫通扉には「祝 開業 ひたちなか海浜鉄道」の看板が誇らしげに掲げられている。雪深い地でキャリアをスタートさせた「道産子」だけに、運転席の窓には、豪雪時の視界に配慮した「旋回窓」がワンポイントのように付いている。その姿は「いぶし銀」の貫禄を漂わせながらも、風雪に耐えうるおしゃれさと愛きょうを持ち合わせているように感じられてならない。カメラを向けてしきりとシャッターを切る愛好家の姿は引きも切らないのは、当然と言えよう。
△ひたちなか海浜鉄道を力走する「キハ222」(茨城県ひたちなか市の阿字ケ浦駅近くで筆者撮影)
車内は木の板が敷き詰められ、年代を感じさせる対面式のクロスシートに腰掛けて沿線の田畑を眺めていると「ああ、遠くに来たんだな…」と旅情をかき立てられる。お隣では、地元住民らしき女性が「どこから来たの?」となまった口調で若い男性に問い掛け、その男性が「これに乗るために、東京から高速バスで来たんですよ」と返す光景も。合理的にデザインされた車内に乗客が押し込められ、それぞれが寡黙に過ごしている大都市の通勤電車にはない温かさがひしひしと伝わってきた。
そして先日は、関東鉄道のホームページで旧型ディーゼル車両「キハ532」の定期運行を始めたことを知り、茨城県南部を走る関東鉄道竜ケ崎線に赴いた。竜ケ崎線はJR常磐線の佐貫駅から竜ケ崎駅までのわずか計3駅、営業キロ4・5キロのミニ路線だ。佐貫駅から竜ケ崎駅に向かっていずれの駅のプラットホームも進行方向の右側にあり、キハ532はワンマン運転に適するように車両の両端にある運転台がともに右側に付いている。わずかな距離にもかかわらず、重厚なモーター音と味わいのある車内を存分に堪能できた。こちらも、多くの鉄道ファンでにぎわっていたことは申すまでもなかろう。
08年1月15日に掲載した「オフタイム レトロブームの中で、手軽にタイムスリップ」では、1961年から77年まで製造されたディーゼルカー「キハ200形」ばかりを運行しており、新しい形式の車両に当たってしまうことのない「ハズレなし」なのが魅力的な小湊鉄道を紹介した。小湊鉄道の状況は個人的には「理想的」に思えるが、他社は車両のメンテナンスや運用を考えると旧型車両ばかり走らせていられない事情もあろう。よって、ひたちなか海浜鉄道や関東鉄道のように旧型車両を一部でも走らせ、運行時刻を告知することは“粋な計らい”と言える。鉄道ブームを背景に、旧型車両は遠方からも乗客を呼び込める“集客装置”としてさらに大きな役割が期待できるだけに、行楽客の多いシーズンを中心に「線路は続くよどこまでも」とばかりに走り続けていただきたい。
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