東京都の石原慎太郎知事(75歳)が2期目の2003年4月の東京都知事選挙で銀行創設の公約を掲げ、「貸し渋りで資金繰りに苦しむ中小事業者への安定的な資金供給を図る」として東京都が外資系信託銀行「BNPパリバ信託銀行」を買収し、1000億円を出資して2005年4月に開業した。金利が割高な代わりに無担保・無保証融資を手掛けるのが目玉だったが、ずさんな融資審査が響いて不良債権が膨れ上がるなど業績不振が続いている。
トヨタ自動車出身で元トーメン(現豊田通商)副社長の仁司泰正氏が初代の代表執行役を務めたが、07年3月期決算は純損益は547億円の赤字、累積損失は849億円となり、仁司氏を含めた経営陣を07年6月に刷新。りそな銀行出身の森田徹氏が代表執行役に就任したものの約5カ月で辞任し、後任に元東京都港湾局長の津島隆一氏が昨年11月30日に就いた。08年3月期の累積損失は1000億円を超えた見通しで、金融庁は4月25日、設立以来初めてとなる新銀行東京の金融検査に着手した。
新銀行東京は今年2月に東京都に対して400億円の追加出資を要請し、東京都議会予算特別委員会は3月26日に与党の自由民主党、公明党の賛成多数により可決した。野党の民主党、日本共産党などは反対した。続いて3月28日の東京都議会本会議で記名投票によって採決され、自民党と公明党の賛成67、民主党と共産党などの反対55により可決、成立した。銀行設立を発案した石原知事の責任は極めて重いとして民主党が問責決議案を出し、共産党は不信任決議案を出したものの、ともに否決された。
当初出資した1000億円を含め、これで東京都の新銀行東京に対する出資総額は計1400億円となった。都民1人当たりの負担額は約1万1000円となる計算で、都民からは「多くの都民にとって新銀行東京は不必要な存在であり、巨額の追加負担を強いられるのは納得できない。教育や福祉に回してほしい」(40歳代の女性会社員)といった批判が出ている。石原知事は仁司元代表執行役ら「旧経営陣の経営責任が厳しく問われなければならない」と訴えたが、都民からは「新銀行東京の発案者である石原知事こそ元凶であり400億円の追加支出の責任を取って知事を辞めるべき」(40歳代の男性会社員)、「新銀行東京の津島代表執行役は(東京都が2004年に策定した基本計画)『新銀行マスタープラン』のマスタープラン作成に関わっており、仁司元代表執行役と同様に責任が重い。石原知事の責任は当然として、津島氏も代表執行役を引責辞任すべきだ」(60歳代の会社役員男性)といった反発の声が聞かれる。
△閉店した新銀行東京の店舗跡(東京都千代田区大手町で筆者撮影)
東京都内の自営業者らで構成する東京中小企業家同友会が実施したアンケートによると、新銀行東京が中小企業に役立っているかどうかについて「役立っていない」との回答が60・4%に上り、「役立っている」の10・7%を大きく上回った。今後どうしたらいいかとの設問でも、3択の中で「金融庁とも相談し早急に整理したほうがいい」が60・0%を占め、「存続させるが、400億円の投資は多すぎる」も9・8%となり、「存続させ、業務を改善させる。400億円は必要」は16・9%にとどまった。回答の中には「増資されてもまた何年かすればまた不足ですと言うに決まっている。無駄では?」「この銀行しかお金を借りられないとしたら、その会社は既に破綻状態と見られる」との意見もあった。
新銀行東京が策定した2008―11年度の再建策によると、店舗数を9つに増やしたのを2008年度中に新宿店に集約。うち蒲田店、上野店、錦糸町店、池袋店、渋谷店、新橋店は今年3月24日から新宿店へ移した。行員も450人(08年1月末)いるのを12年3月末までに120人へ削減。2009年3月期決算も純損益が126億円の赤字を予想しており、2012年3月期に純利益8億円にして黒字化する計画。
津島代表執行役を委員長とする「新銀行東京調査委員会」が今年3月に発表した調査報告書の概要によると、融資を奨励するために営業担当の契約社員に対して最大年間200万円の融資実績に応じた成果手当を支給する一方、デフォルト(債務不履行)を不問とした。2006年1月以降は融資実行後6カ月以内にデフォルトが発生した場合は成果手当から控除したが、6カ月を超えた場合には満額支給とした。
仁司元代表執行役の経営責任について「強い権限を背景に経営の意思決定や他の執行役の人事等に影響力を不適切に行使し、独善的な業務を展開した」「デフォルト(債務不履行)発生の危機的状況を認識した2005年度末の時点で、抜本的な対策を実行していたならば、現在の危機的な経営状況は一変していたと思われ(る)」として、特に仁司元代表執行役に対して他の執行役以上に損害に対する責任を求めていくことが適当と指摘。取締役は、東京地方検察庁特捜部長と名古屋高等検察庁検事長を歴任した石川達紘弁護士、石原知事の
一橋大学同期で盟友として知られる元丸紅会長の鳥海巌・東京国際フォーラム社長ら務めており、取締役の経営責任については「厳格な法的責任までは及ばないながらも、何らかの責任を問うことも考えられる」と記述している。
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