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「島根は、過疎や高齢化、伝統ある仕事の後継者不足など日本が抱えるあらゆる課題の先進地。ここで問題を解決した成功例は、全国そして世界のモデルになるはず」
山根さんは、コミュニティ・ビジネスを手掛ける醍醐味をそう説明しました。
どんな田舎でも、そこにある問題を一つ一つ解決していければ、その方法を共有できるほかの地方にも応用することができます。
そのためには問題解決に取り組む方法ばかりでなく、そこに携わり続ける人材の確保も必要であり、それはより若い世代に役目を引き継ぐことを意味します。
山根さんも、2007年秋の段階から若女将の座を後進の現役女子大生・三原綾子(22歳)に譲りました。
週刊誌『読売ウィークリー』で彼女を取材したフリーライターの遠藤一さんは、こう書いています。
「三原は若女将を引き継ぎ、スタッフ総出で遊休農地を利用して収穫の比較的簡単なブルーベリーを栽培し、高齢者や障害者が働ける環境を作ったり、世界遺産に登録された石見銀山近辺の竹の伐採を行うなど、若い力を地域再生に活かしている。
そんな三原も、島根県立大学に進学し、2007年夏には東京で就職活動をしていた。数社も内定したが、地元に残ることを決めた。
『東京で学ぶより、地元で挑戦したい。地域の人は私を支えてくれると思う』
吉田屋には、全国から多くのインターン希望者が続々と集まっている。彼らを「修行」させながら将来の地域のリーダーに育てるのも吉田屋の役割だ。
『みんな居場所を探しています。なら自分で作れといいたい。私も代わりなんていくらでもいると大組織の中で言われたくないから、ここで活動しているのかも』
三原は『農家での宿泊体験』という新しい観光旅行のプランも進めており、集荷のついでに生産農家に提案している。そんな彼女に生産者の顔も自然にほころぶ」
(『読売ウィークリー』2008.2.3号新就職先「ソーシャルベンチャー」って何?)
僕自身も2007年12月に吉田屋を若者雑誌の取材で訪れました。
和風の客室で夕食を待ってると、配膳と同時にお品書きが渡されました。
そこには「美千代さんのいんげん」といった具合に、食材提供者の農家の名前と似顔絵イラストがありました。
吉田屋の若いスタッフたちが地元の農家さんと一緒に地域活性をしていきたいという思いが伝わると同時に、顔の見える食材としての安全さも同時に伝える素敵な試みだと感じました。
朝食には発展途上国からフェアトレードで買い付けたコーヒーが出されました。
フェアトレードと呼ばれる貿易活動は、世界の南北間にある経済格差問題の解決を目指し、1960年代にヨーロッパで始まった世界的な活動です。
吉田屋の仲間である東京の株式会社プレス・オルターナティブの「第3世界ショップ」では1986年からこの活動を始め、現在はフェアトレードをベースに、コミュニティ・トレードを推進しています。
コミュニティ・トレードとは、地域の問題解決に役立つビジネスと、そこから生まれる商品やサービスの交流、流通のかたちを意味します。
たとえば、アジアや南米にはいくら農作物を生産しても安い賃金で貧困を余儀なくされている農民がいます。そこで、生産農家と直接契約して、国際市場価格よりも高い値段で農作物を買い取ることで現地の農民の暮らしを向上させると同時に、生産者の顔の見える安全な食材を確保するという試みを意味します。
お金のある国の民がこのようにトレード(商品の売買)をすれば、現地での雇用や経済的自立を促進し、貧困という問題を解決することに貢献できます。
ただエスニックな食材を得る楽しみだけではなく、いつも飲むコーヒー1杯をフェアトレード商品に変えるだけで世界の貧困の解決にお手伝いできるのですから、これは消費者による貧困救済運動ということができますし、そういう経済活動の仕組みを作ることが、コミュニティ・ビジネスがソーシャルベンチャー(社会的企業活動)であるゆえんなんですね。