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1965年生。早稲田大学第一文学部を3か月で勇退。広告業界を経て25歳でフリーライターに。企画・編集した『日本一醜い親への手紙』はベストセラー。『完全家出マニュアル』で造語した「プチ家出」が流行語に。2007年春から東京大学(駒場キャンパス)で自主ゼミの講師を始める。著書に『親より稼ぐネオニート』(扶桑社新書)、『ゲストハウスに住もう!』(晶文社)など多数。
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お父さんの育児 (2008年06月22日)

第27回 ソ−シャルベンチャーB[2007年12月21日(金) ]

 山本さんは、翌2006年3月に東京・神田に事務所を移転。
 6月にはさっそく「ニート・不登校・ひきこもりNEXT VISION FORUM」を開催しました。

 若手の研究者や作家などの支援者8人に集まってもらい、ネットワークを作ろうと試みたのです。

 そして、作家志願のニート・ひきこもりにプロの講師が文章技術の向上や就労などを支援する「神保町小説アカデミー」を開校。

 19歳以上の大人も受け入れることにしました。

 支援対象の年齢を上げたのは、「ビジネスにするにはそうするしかなかったから」です。

「仕事を得るための投資ならお金を払ってくれると思ったんです。
 プロ志向の人は専門学校やライター教室に行くわけですから」

 ネット上に彼が書いたテキストには、こうあります。

「これまでの若者支援は、『あそこの業界は若者不足だからそこらの余っている若者を連れてこよう』といった労働市場のニーズに合わせたもの。
 私たちが生み出したいのは、若者それぞれが自分の就きたい仕事に就けるよう支援する仕組み」

 それは、厚生労働省がニート対策として行った政策とは、まるで違う視点のものでした。

「ジョブカフェとかサポートセンターに行くと、挨拶の仕方とか名刺の渡し方、履歴書の書き方など最大公約数的な支援をしてくれます。
 でも、それでは支援される側の個別のニーズを満たせないし、当事者のやりたいことをコントロールできるものでもない。
 だから自分の気持ちを表現したい人たちの支援から始めたんです」

 新聞・テレビなどにリリースを流すと、取材が一斉に集まりました。

 編集家の竹熊健太郎さんや作家の雨宮処凛(かりん)さんなど現役の業界人を講師に招くと、2万8千円の月謝で15人の生徒が集まり、月謝の合計は42万円。

 また、ジョンソン・エンド・ジョソンからは20万円、NECからは社会起業塾生としての支度金として35万円+ノートPC1台が助成されたほか、講師の方が謝金の一部を寄付してくれました。

 それでも不足する部分は、山本さん自身が個人的な持ち出しをしながら事業を軌道に乗せようと奮闘したのだそうです。

「作りたいのは、目標を持ったらまわりが応援してくれるチャンスのある社会。
 それは視覚化しなくちゃ。
 僕がNECからお金をもらった時も、世の中にはチャンスに金を出してくれるところがあるなんて思いもしなかったですから」

 8月には、漫画家志望のフリーターに住居支援する「トキワ荘プロジェクト」を開始しました。

 トキワ荘といえば、手恷。虫や藤子不二雄などの有名漫画家たちが若い頃にみんなで住みながら漫画家修行をしていたところとして伝説化しているアパート。

 山本さんには、自宅の空き部屋だった6畳一間を女優志望者に3万円の格安家賃で貸した経験がありました。

 すると、鳴かず飛ばずだった彼女は、週3回のアルバイトで済むようになって演技訓練に時間を割くことができ、芝居に出演したり、テレビドラマの仕事をもらえるようになったのです。

 生活コストを下げられれば、その分だけやりたいことに情熱を傾けられる時間を作れます。

 家賃を安くするだけでも、それを支払うお金を作るアルバイトの時間を減らし、マンガ制作に専念できるというわけです。

 そこで、都内に祖母が持っていた2階建ての一戸建てを山本さんが丸ごと借り上げて部屋別に貸す形で「第一トキワ荘」を作ったんですね。

 公共料金とインターネット利用料込みで家賃は1室4万5千円。
 これは、東京都内で一人暮らしをするための家賃としては格安といえます。

 そこで、「本気で漫画家を目指している」高卒から26歳くらいまでの男女が原則として1年間だけ入居できるようにしました。

「1日8時間、月に20日間バイトしても手取り12万程度。
 家賃を払えば生活するのがやっと。画材や漫画も満足に買えない。
 漫画なんか描けないですよ。
 そこでゲストハウス(※月単位で借りられる格安賃貸物件。6畳個室で家賃は6〜8万円程度)より2〜3万安い家賃にしました。
 入りやすくして、救われる人を増やしたいから。
 全国に夢を持った若者はいますが、才能と技術があるのに、東京生まれなら夢を叶えるチャンスがいっぱいあって、地方出身なら少ないのはおかしいですから」

 つまり、ゲストハウスのように、今は使われなくなっている住居を丸ごと安く借り受けて、部屋別に安い家賃で入居してもらえるように大家さんと交渉し、そうした物件数を増やしていけば、入居者の家賃収入が「コトバノアトリエ」に事業収入として入金されるため、その収益からニート&フリーターへの支援活動にかかる経費を捻出できるというわけなのです。

 2007年12月現在、「トキワ荘」は6軒にも増え、既に31人の漫画家志願の若者が住んでおり、住人のみを対象に『新耳袋』などの怪異蒐集家で有名な編集者・木原浩勝さんを招いての講義を実施したり、1年以内にデビューした入居者にはその時点から月に5千円の家賃から減額される仕組みを作るなどして、プロとしての独立を応援しています。

「3年後には200人くらい支援したい。
 目標をもってフリーターを選んでいる人を支援できる環境を作れば、ニートからフリーターになる足掛かりになるから。
 他の人たちがノウハウを継承していけば、『ミュージシャン版トキワ荘』とか、演劇や音楽などいろんなアーチスト支援の形ができる。
 10年後には数万人くらい支援されるといい」

 最初は少ない人数を支援するあり方でも、そこからちゃんとデビューする人が増えていけば、その成功モデルをほかの分野にも応用できます。

 そこで、山本さんは、自分の出来るところからコツコツと持続可能なビジネスモデルを生み出そうとしているわけですね。

 物件が増え、家賃収入が増えた今日では、「トキワ荘プロジェクト」に専従するスタッフを雇うことができるようになり、スタッフの生活を保障しながら、活動を続けていけるようになったのです。

(つづく)