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1965年生。早稲田大学第一文学部を3か月で勇退。広告業界を経て25歳でフリーライターに。企画・編集した『日本一醜い親への手紙』はベストセラー。『完全家出マニュアル』で造語した「プチ家出」が流行語に。2007年春から東京大学(駒場キャンパス)で自主ゼミの講師を始める。著書に『親より稼ぐネオニート』(扶桑社新書)、『ゲストハウスに住もう!』(晶文社)など多数。
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お父さんの育児 (2008年06月22日)

第25回 ソ−シャルベンチャー@[2007年12月07日(金) ]

 ここ数年で、「ソーシャルベンチャー」(社会起業家)という言葉がマスメディアに少しずつ現れるようになりました。

 つい最近(2007年12月現在)では、『クーリエ・ジャポン』という世界中のニュースを日本語で読める月刊誌で元サッカー選手の中田英寿さんが、「持続可能なソーシャルビジネスが、これからの世界のスタンダードになると思う」「思っているだけじゃ意味がない。まずやってみることが大切だよ」と、旅の後からソーシャルベンチャーを始めることを示唆しました。

 では、「ソーシャルベンチャー」「ソーシャルビジネス」とは、どういうものなんでしょうか?

 これは、社会的に良いことをしながら行政や自治体、国家だけでは解決できない問題を市民の力で解決するためにビジネスの手法を使おうっていう活動のこと。

「ふつうの企業だって、『メセナ』をやってるじゃないか。どこが違うの?」

 そう思う人もいるかもしれません。

 「メセナ」っていうのは、社会貢献の一環として文化や芸術に企業が経済的に支援することだけど、これは事実上、企業にとってより大きな利益につながる投資。

 つまり、企業(会社)が儲かっていて、浮いた金が無ければ、そんな投資はしないし、経済状況が煮詰まってくれば、当然のようにメセナ活動から企業は撤退せざるを得ないし、そこで社会問題を解決するための資金援は止まってしまうわけです。

 そこで、ソーシャルベンチャーは、毎日の労働そのものから社会問題の解決を行う活動を続けられる資金を得られる収益構造を作り、問題解決の活動を持続可能なものに変えていこうというわけなのです。

 メセナを行う企業が「利益優先型」であるのに対して、ソーシャルベンチャーは「問題解決優先型」であり、前者が余った金しか支援に回さない一方で、後者は常に解決のためのコスト(出費)を稼ぎ出すために働けるような仕組みを作ろうとするんですね。

 そもそもソーシャルベンチャーの担い手は、以前なら市民活動団体やNPO法人のように完全な非営利活動としてやっていたんです。

 しかし、それらの活動は財団法人や企業などからのスポンサード(資金援助)を受けないと続けられず、かといって営利活動を始めると「金儲けのために良いことしてんのか?」と世間から不審がられてしまうので、なんとも困っていたんですね。

 ところが、20年前くらいからイギリスを起点に世界中で「ビジネスの手法で社会的問題を解決しよう」という動きが出てきて、日本でもここ10年ほどでソーシャルベンチャーの担い手が続出しているというわけなんです。

 というのも、21世紀の現在では、国家や自治体などの税金や企業からのスポンサードを当てにしているだけでは、「今ここにある問題」はあまりにも増えてしまい、それらの多くはマイノリティ(少数派)の問題として行政にとっては解決予算の対象になりにくいのです。

 だからこそ、ソーシャルベンチャーの役割は日に日に増大していると言えるのです。

 貧困、病気、農地の人手不足、環境問題など、社会問題が続々と生まれているのに対して、それらの問題を解決するだけのお金が既に国家や自治体の単位では賄えず、そのために貧困のままの暮らしに耐え続けなければならなかったり、農地を手放して農業を続けられなくなる人が増え続けてしまうような悲劇がいろんな場所で起こっています。

 そこで、行政の力よりも自助努力でそれらの問題に取り組もうとしているのが、ソーシャルベンチャーなんですね。

 国家には「最大公約数の最大幸福」というテーゼ(命題)があって、一番困っている人数の多い課題から優先的に取り組まざるを得ないし、大企業も毎年正社員にベースアップ(基本給の増大)を約束しているから、それを支払うためにも拡大再生産を余儀なくされて利益優先型の経営から降りることが難しいのです。

 つまり、国家も大企業も、少数派の問題を解決する予算をひねり出すことが事実上できないから、本当に多くの問題が解決されないまま放置され、苦しみ続ける人たちがいつまでも取り残されるというわけ。

 そんな時代に登場してきたのが、ソーシャルベンチャーというヒーローなんです。

 発展途上国の児童買春を止めたい女性、地方の農家の人手不足に一役買っている女性、ふつうのネット売買でNGOに募金できる仕組みを作った男性など、ソーシャルベンチャーの担い手は20−30代の若者たちの間から続出しています。

 自分自身の働きが、見過ごせない社会問題を解決することに貢献できることは喜びであり、ふつうに会社に就職してもそうした喜びや働く意味が得られない若者にとっては、社会問題こそが働く意欲をそそるものであり、同時に社会問題は「未開拓のニーズ」として解決することで収益を上げられるビジネスのできる分野であることが発見されたともいえるのです。

 さて、ソーシャルベンチャーの法人格はNPOや会社などさまざまで、個人でもやっている人だっています(つまり、お店を持ったり、作家をやるのと同じ自営業)。

 法人格をNPOにすると、人件費はコストとしてみなされて、それ以上の収益は活動資金に回さなければならないけど、会社法人ならそういう縛りはないため、会社として登記して活動している団体もあるのです。

 しかし、いずれも、自分が見過ごせないと思った問題を、なんとかビジネスモデル(収益構造)を作って解決していける方法を模索している点では同じ。

 そうしたソーシャルベンチャーの活動の詳細は、拙著『プライドワーク/自分をつくる働き方』(春秋社)や、『チェンジメーカー/社会起業家が世の中を変える』(渡邉奈々・著/日経BP社)などの本が既にいっぱい出ているので、「社会起業」という単語でググッて探し、いろいろ読んでみてください。

 そうした本を読んで、一人でもソーシャルベンチャーをめざす若者が出てくると嬉しいですし、そうなれば世の中をもっと良くしていけると思うので、このゼミでもソーシャルベンチャーの担い手をゲスト講師として積極的に迎えることにしました。

 そして、最初にお招きしたのが、拙著でも活動の詳細を紹介したニート支援のソーシャルベンチャー「コトバノアトリエ」の代表理事・山本繁さんです。

(つづく)


※なお、実際のゼミでは「web2.0」についてもゲスト講師を招いて講義がありましたが、都合により割愛します。