2008.06.06 18:01

 約1年続けてきたこのブログも、今回で最終回となります。

 そこで、東大自主ゼミで僕が社会起業をテーマに取り上げる前に、なぜさまざまな「社会的弱者」(ニートやユニークフェイス、精神科通院者など)の当事者たちをゲスト講師に招いたのかについて、説明しておきます。

 その理由は、社会の仕組みが悪いために「社会的弱者」にさせられている立場の人に共感できる能力がないと、社会起業は成り立たないからです。

 たとえば、何不自由なく育てられ、受験勉強のための塾や通信添削などの費用も無理なく調達できる富裕層の親に育てられた人ほど高学歴になっている現実は、端的に貧乏な家に生まれた不幸な子は低学歴の人生を余儀なくされるということを同時に意味します。

 幼稚園や小学校の頃から私立に通い、中高一貫教育を受けている高校生が、自分と同じ年齢でも貧乏な家の子が高学歴の人生を手にできず、気がつけば、「社会的弱者」の大人になってしまうという現実に対して、ただ「かわいそうな運命ね」と片付けてしまうのを見る時、僕はやりきれない気持ちがします。

 恵まれた環境に育った以上、それによって育まれた知恵や人脈、資産を低学歴の子たちともシェア(共有)していくことはできないのでしょうか?

 僕の自主ゼミでは、常にそうした問いかけを行いました。
 すると、東大をめざしていた女子高生が社会起業家を多く輩出している慶應大学湘南・藤沢キャンパス(SFC)に志望校を変え、見事合格しました。

 成績優先で進路を決めるのではなく、本当に学びたいものを学べる大学へ進学したいから受験勉強にも身が入ると思うのです。
 
 大学は長い人生の中ではただの通過点にすぎませんし、卒業後の進路はみんな「社会人」になるわけですから、会社から雇用されるか、自分でビジネスを始めるかのどちらかを選んでいるわけです。

 会社という組織では、どの社員も「取り換えのきく存在」です。
 誰かが今日抜けても、明日から業務が止まるわけではありません。

 しかし、世の中には、誰かが手を差し伸べないと問題に苦しみ続ける人がたくさんいます。

 だからこそ、「俺がやらねば誰がやる?」と意気に感じて社会起業家になり、毎日生き生きと働いている人がいるわけです。

 その一方で、心を病んで自殺してしまう人もいます。

この両者は、どこでどう差がついてしまったのでしょうか。

それは、連帯できる仲間を見つけられたかどうか、です。

 自殺を選んでしまう者の多くは、下流資産層から中流層に成り上がった低学歴の親に育てられたため、「食えれば仕事は何でもいいんだから。夢なんか追わずにとにかく働け」「夢なんか持ってもお前なんかにできるわけがない」などと言われ続けてきました。

 簡単に言えば、自分の生きがいを親にも教師にも応援されてこなかったのです。

 しかし、それだけに「この社会には生きやすくなるための風穴が必要だ」という直感だけは冴えていました。

 まさに、それは社会起業家であるジェッド・エマソン(※渡邊奈々・著『チェンジメーカーⅡ』参照)のいう「パンクロック」の精神そのものです。

 NHKのワーキングプア層を取材したドキュメントの番組でも、若年ホームレスが行政の仕事で草むしりをしたら市民から感謝されて自尊心を取り戻し、復職への意欲につながったという実例が紹介されていました。

 このように、下流資産層は自分が必要とされる体験に飢えていますし、それは同時に社会起業家の存在意義にもピンと来ることを意味しているのです。

 言い換えれば、自殺にまで追い込まれているようなニートやフリーター、ネットカフェ難民の若者ほど、社会起業家として成功するポテンシャル(潜在的な勝算)が高いのです。

 事実、自身のホームレス経験から起業した「エム・クルー」の社長・前橋靖さんは、建設軽工事請負業を通して「社会的弱者にやさしい社会を作りたい」と考え、街をさまようホームレスの若者に声をかけては、自身が作った短期宿泊施設に泊まらせました。06年度の売り上げは約9億円に上るといいます。

 「2015年には正社員が労働者全体の半分になる」と試算される今日、2人に1人は雇用されないのですから、自営業者になるか、自分で会社を立ち上げる以外に、まともな暮らしは望めなくなります。

 その時、ホームレス生活のようなどん底を経験したことは武器になります。

 社会的弱者だった経験は、自分と同じような社会的弱者が何を切実に求めているかがわかるので当事者意識を分かち合えますし、支援対象である顧客と連帯できるからです。

 山口県で生まれた地域活性化のための社会起業家「地域維新グループ」でも、「自称ニート」の青年たちが荒れ果てた茶園にレゲエを聞かせながら再生に挑んでいるといいます。
みんなが放置してしまった場所は、彼らの愛しい楽園なのかもしれません。

 社会起業は、ともすれば死んでしまいかねない社会的弱者にも居場所を与えるのです。

 自分自身の働きが社会問題を解決することに貢献できることは喜びであり、ふつうに会社に就職してもそうした喜びや働く意味が得られない若者にとっては、目の前の社会問題を解決できる仕事こそが働く意欲をそそるものになるでしょう。

 働く意欲を得れば、人は「今」という時間を楽しく生きられます。

 自分の仕事だと胸を張れるものが見つかれば、それがすぐには人並みの暮らしを約束しないものであったにせよ、人は笑って死ねるのだと思うのです。

 読者のあなたにこう問いかけて、このブログを終わります。

「今日で人生最期でも、あなたは今の仕事をやりますか?」


《了》
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2008.05.30 17:57

 イベント制作費の18万円をねん出するために、次の方法を複数同時に採用すると、それほど無理なくイベントを開催することができるかもしれません。

●地元の大学(高校)・学部・研究室・自治体行政の予算からの助成金申請

●イベントの入場料(※一般市民の来場も呼びかければ、千円で100人なら10万円)

●地元企業(青年会議所など)からの寄付金やスポンサード(※広報チラシに1社数万円で広告掲載)

●ゲストの講演録を有料冊子あるいはshare300.comのような有料ダウンロードサイトで電子ブックとして後日に期間限定販売(※あらかじめゲストに承諾しておけばOK)

●教授・先生のポケットマネー(※赤字になった時の担保程度にお願いする)


 また、地元の本屋さんにも、「●●の学生が読んでいる本ベスト10」とかを学内アンケートをとって提供し、2万円くらいのアルバイト代をもらえるようにお願いしてみるのも手です。

 地元企業も巻き込んで、学生ニーズを掘り起こすマーケティングをして、その結果資料を企業に売ったり、どんなアンケートがほしいのかを企業からヒアリングして、イベント事業の経費を作れるようなアクションをおこしてみても面白いと思います。

 こういう実務経験は、就職や進学の際に必ず役立ちます。
 だから、●●の学生1000人アンケートなど、伝説になるようなアクションをおこしてみると学園生活が面白くなるかもしれません。

 そういう事業が軌道に乗ったら、浮いた金でどんどん東京の面白い人材をあなたの地元に呼ぶといいでしょう。

 あとは、広報活動を大学内のタダコピーを使い、会場を学内の教室を借りれば、あとは先生を口説いたり、いろんな大人に知恵を借りれば、どんな地方の学校でも社会起業を考えるイベントはできると思うのです。

 同じタイトルのイベントの「●●大学(高校)版」として、やってみませんか?
 まずは、興味のありそうな学生たちを集めてみましょう!

 そして、社会の先生や、地元の大学で社会福祉や経営学、社会学などを教えている教授の中で、「社会起業」を知っている先生を探してみましょう。

 なお、社会起業に関するリンクの資料として、下記を挙げておきます。

◎ソーシャルベンチャー ~もっといい世の中を作ろう!
http://gogo-socialventure.blogspot.com/

◎東大自主ゼミ・ダイジェスト(仮) ※社会起業について
http://www.zkaiblog.com/so03/archive/26

 下記は、『社会起業家に学べ!』(アスキー新書※6月11日発売)で紹介されている全国の社会起業家の団体です。


【地域再生】
旅館・吉田屋(島根)/地域維新グループ(山口)/LET'Sきさらづ(千葉・木更津)

【キャリア支援】
Eyes(愛媛)/NPOカタリバ(東京)/キャリナビ(東京)/こども盆栽(大阪)

【ワークライフ・バランス】
ファザーリング・ジャパン(東京)/モーハウス(茨城・つくば)

【農業再生】
シックス・プロデュース(島根)/みやじ豚(神奈川)

【在日外国人支援】
座游(東京)/インターナショクナル(大阪)

【途上国支援】
マザーハウス(東京)/かものはしプロジェクト(東京)

【環境保護】
エコモット(札幌)/エコトワザ(東京)/グリーンズ(東京)/音力発電(神奈川)/リコリタ(東京)

【NPO/NGO支援】
ユナイテッドピープル(神奈川)

 興味があったらググッてみて、尊敬できる社会起業家がいたら、イベントに呼んでみましょう。

 そういうアクションを少しでも起こしてみると、それをきっかけにもっともっと自分にできることがあると気付きます。

 これまで東大での自主ゼミの講義録をこのブログにアップしてきましたが、それらからインプットした知恵を、今度は自分のアクションとしてアウトプットしてほしいのです。

(つづく)


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2008.05.23 17:55

 もちろん、誰もが社会起業家になれるわけではないし、実際になるわけでもありません。

 しかし、政治や行政、既存の企業が解決できない社会問題が増えてしまった今日では、社会起業家に期待されることは極めて大きいのです。

 他人事のように社会起業家に期待ばかりしていても、世の中は変わりません。
 むしろ、社会起業家たちを無理なく支援できる方法を考えることも必要でしょう。

 それは、たとえば、自分の仕事柄、よその会社に発注している仕事を社会起業家に発注することかもしれませんし、彼らのホームページにあるブログパーツを自分のブログに貼り付けることかもしれません。

 あるいは、社会起業家の集まる勉強会などのイベント案内サイトへのリンクをいろんなサイトに貼り付けて告知を陰ながら支援することかもしれないし、何か手ごたえのある仕事がしたくてウズウズしてる友人をイベントに誘うことかもしれないし、校内放送を通じて僕の本に書かれた社会起業家の物語を全校生徒に読み聞かせることかもしれません。

 他にも、社会起業家の売るフェアトレード商品を自分の経営する店で売ってあげたり、近隣に社会起業家がいれば、欲しいものを尋ねて中古の事務机を提供してあげることかもしれません。

 そういう一つ一つのささやかなアクションこそ、この世界をもっと良いものにしていくために積み重ねられるべきことでしょうし、「良いことをする」気持ち良さにつながるものだと思います。

 政治や行政に文句ばかり言って、デモ行進や集会を続けていても、ただ貧乏になるばかりですし、そもそもデモで社会が根本的に変革された歴史は少なくともこの国にはありません。

 時代の節目には、社会起業家のような変革者が必要です。

 こうした変革者たちを多くの市民がボランティア精神で支えることで、いつの時代も歴史は重い扉を開けてきたのです。

 2ちゃんねるに毒を吐いているヒマがあるなら、アクションを起こしましょう。
 何よりも自分のために。

 実際、学校や教科書で教わる知識は「納得」を生みますが、実学や個人の経験に基づいた知恵は「行動」を生みます。

 知識は現状肯定を導きやすいですが、知恵は現状を打破するイノベーション(新たな社会的価値の創造)を目覚めさせるのです。

 僕自身も、東大での自主ゼミが終わり、今季(2008年春以後)に新しいゼミを始めるかどうか、これを書いている5月6日時点ではまったくの白紙ですが、「社会起業」についてもっと多くの学生や一般市民に知ってほしい気持ちがあります。
 
 そこで、現実に社会起業をしている人たちと一緒にシンポジウムをやったり、聴衆からインターンを募ったり、インターンでなくても学生に具体的に協力してほしいことを各代表からプレゼンしてもらったり、資料を聴衆に配布したり、アンケートをとったり、社会起業を少しでも普及させる具体的なアクションとしてのイベントを、首都圏の大学の講堂を借りて手掛けてみたいと思います。

 既に社会起業に関する勉強を始めているサークルも首都圏にはいっぱいあるので、僕から声を直接かけ、大学生を中心とした学校の枠を超えた連携になるようなアクションに育ってほしいと考えています。

 学生や若者たちを組織し、イベントをおこない、その方法を広報することで、同様のイベントを全国各地のほかの学校でも連続的に手掛けられるような仕組みを作るきっかけにしてみたいのです。

 だから、「6月中旬にイベントをやる」と、とりあえず〆切を決めて、中心スタッフとして活動してみたい人材を広く募集することにしました。

 全国共通のイベントタイトルは、「社会起業家に学べ! 学生サミット2008」(仮)。
 僕自身はあくまでも発起人の一人として、あとは全国各地の大学生有志にまかせたいと思っています。

 全国で同時多発的に社会起業家を招いてのイベントが起こり始めたら、面白いと思いませんか?

 そこで、僕はイベントの開催について不安がる学生たちからの相談に乗ると決めたのです。

 共通のイベントブログもそのうち作る予定ですし、そこで「全国社会起業・学生ネットワーク」をオンライン上で組織し、収支やビジネス、シュウカツのことまで情報交換できる場所を作ってしまおうと思います。

 イベントを広報する経費も、みんなでやれば同じフォーマットのデザインで経費が浮いたり、マスコミの取材もブッキングしやすくなります。

 もちろん、学生中心とはいえ、社会人や高校生も仲間に入れて、みんなで作り上げてみたいです。

 たった1日のイベントなら、きっと未経験者でもできると思うのです。
 できることから、やってみようと。

 東京ででかい1発イベントをやったら、全国各地に同じタイトルのイベントを地元の大学生中心で開催してほしいです。

 首都圏でなくもできると思うのです。

 どんなに東京から遠い学校でも、最寄りの都市部から社会起業家のゲスト1名を呼ぶのに往復交通費3万円ほどでしょう。

 つまり、ゲスト3人でも9万円程度。

 これにギャラを1人分3万円程度と考えて9万円+9万円(交通費)=18万円程度をゲスト人件費とし、この金額を賄うための方法を考えればいいのです。

 では、どうすればいいのでしょうか?

(つづく)

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2008.05.16 17:53

 しかし、「報道の公共性」や「中立性としての客観報道」を隠れ蓑にして、結局は「べき」論に終始する議論ばかりを投げかけるのが仕事だという時代は終わりつつあります。

 だからといって、既存のメディアがそっくりインターネットにとって代わることはありません。

 なぜなら、ネットで読めるニュースの多くは既存メディアによる取材に依存しており、ネットだけで膨大な取材コストを賄えるビジネスモデルはまだ開発されていないからです。

 僕の仕事は、社会起業家に関するコンテンツをこうしたメディアの中に増やしていくことで社会起業家を志す若者やその支援者を増やし、「問題提起型」の報道から「解決方法(ソルーション)発信型」へとメディアのあり方を変えていくことです。

 もっとも、体力を余らせている若い世代をけしかけるほうが、同時多発的に新しい社会起業家を急速に増やすことになります。

 だから東京大学の駒場キャンパスで学生自治会の承認による自主ゼミの講師を務めたんです。

 そもそもは東大生たちからのオファーによるものだったのですが、東大生以外の人も受講できるようにしました。

 mixiで「Conゼミ@東大」のコミュを立て、受講希望者を募ると、他の大学に通う学生から女子高生、主婦、50代のおじさんまで集まったんです。

 このブログで書いたとおり、前期ではふだんの暮らしでは目に入らない社会問題の当事者を招いて話してもらいました。

 ユニークフェイスという顔に傷のある人、レズビアン、ニートから起業した人…。マイノリティで弱者だからマスメディアになかなか紹介されない存在だからこそ、学生には「この人と自分との接点を探せ」と言いました。

 相手の立場を想像したり、共感したりする力をつけることで、自分が社会の中で何を問題として認知するのかという感性を養った後、後期では社会起業の担い手をゲスト講師に招いたのです。

 ゲスト講師に来てくださった社会起業家のみなさんは、「コトバノアトリエ」の山本繁さん、「WWBジャパン」の奥谷京子さん、「座游」の川田さん、「モーハウス」の光畑由佳さん、「ファザーリングジャパン」の安藤さん、「ユナイテッド・ピープル」の関根さん、「吉田屋」の山根多恵さん、「市民バンク」の片岡勝さん、「LET’Sきさらづ」の筒井啓介さん、「音力発電」の速水浩平さんなど。

 受講生たちは、毎週彼らの講義を無料で受けられたのです。

 大学生たちからは「通常の授業や他のゼミより面白い」と好評を得ましたが、1コマ1万円しか自治会から予算が出ないため、ゲストの方々に謝礼として1万円を払ったんですね。

 これで僕自身のギャラは出ませんが、毎度、講義内容をビデオカメラで録画し、書籍のような執筆仕事に講義内容を移すことでよしとしました。

 それが、6月11日に発売される『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)です。

 この自主ゼミは単年度で終わるため、存続を望む受講者たちの声に押されて、僕は12月上旬に東大総長の小宮山氏にメールを出しました。

 当局公認ゼミでは、1コマ3万円が支給されるものの、東大生しか受講できません。
 それでは、社会人と触れ合いながら社会起業を学びたい学生にとっては損です。
 どうせならゼミ講義内容の動画もインターネットで公開したい。

 そこで、ゼミの運営コストを受講生たちと僕が一緒に事業を興すことで賄う実践型ゼミの企画書を書いて東大総長にメールで送り、「とりあえず会って話をさせてほしい」と申し出たのです。

 東大には「学生アントレプレナー道場」という学生ベンチャー支援の授業もありましたが、「企業とは何か」という話で1コマが終わる一方的な講義スタイルで、僕らがやりたいゼミとは違っていました。

 社会起業家の方々の実体験に触発されるほうが学生たちの関心度を高められるし、東大生以外も参加できるなら、親がいなくて学費が払えず、職業選択の自由がない子でも参加できます。

 東大に一銭の負担もかけないこの新しいゼミのプランを総長と理事会がどう評価してくれるのか、受講希望者たちと一緒にワクワクしながら返事を待っていると、翌08年2月になって「自主ゼミをソーシャルベンチャーに展開させることには、今のところ、こちらで検討が必要と考えています」という事実上の却下の返事がメールで届きました。

 すべてのやりとりは総長秘書によるメールと電話で済まされ、総長自身の声を聞くこともなければ、僕やゼミ責任者との話し合いのテーブルに着くことさえ検討されませんでした。

 総長に送った企画書には、受講生1人あたり1年間で10万円程度(=月あたり1万円以下)を稼ぎ出せばゼミが運営できるというビジネスモデルを書いたのですが、「検討が必要」な額面でしょうか?

 2000年4月から山口大学で「ベンチャー論」を教え始めた片岡勝さん(※日本の社会起業家の草分け的存在)は、同大学の広中平祐学長に会った際、こう言ったといいます。

「これからの大学は地域問題の解決に知恵を出しあい、実践していく実行力を持たなくてはならない、机上の空論ばかり教えていたり、卒業証書だけを発行している大学は存在意味がないから淘汰される」(町田洋次・著『社会起業家』より)

 この言葉を広中学長は即座に理解し、商店街にある店で講義を開くことを許可し、大学生には単位を与え、学生以外の受講生も歓迎しました。

 先見の明、ここにあり。

(つづく)
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2008.05.09 17:48

 2007年春から2008年1月末まで開講してきた東大自主ゼミ「自分を知るための当事者学」は、下半期では社会起業家に重点を置き、社会起業の担い手をゲストに毎週招いて、ゼミ最終日にはレギュラー受講生を2班に分けて発表を行いました。

 社会起業とは、社会問題を解決するためのビジネスを開発し、働きながら問題解決を進めることに存在意義があるわけですから、それぞれ取り組みたい課題を設けたわけです。

 男子学生の多い班は、人手不足の地方の農家に都市部のワーキングプア層の若者を派遣することはできないかと考え、実際に農作業の現場を視察し、その作業の様子をビデオに収め、YouTubeのような動画共有サイトにアップしました。

 また、ワーキングプア層の若者の当事者たちにヒアリングするために、深夜の公園でホームレスに声をかけたり、ネット喫茶で長時間滞在してそうな「ネットカフェ難民」を探すなど、「ワーキングプア層は仕事がほしいはずだ」という自分たちの立てた仮説を実証しようと務めました。

 こうして実際にリサーチに動いてみると、農作業の現場は意外に軽作業だとわかったものの、ワーキングプア層の若者は農作業の現場にあまり興味を示せず、仕事があるとわかっただけでは一人では決して農作業へ赴かないというところまではわかってきたのです。

 一方、女子学生の多かった班では、「痴漢撲滅キャンペーン」と称し、通勤・通学で利用する電車内での痴漢を減らすために、どんな工夫が必要で、そのための活動経費をどう作るのかについて発表を行いました。

 いずれの班の活動もその後から展開が進んではいませんが、大事なのは目の前にある見過ごせない社会問題を行政や政治に解決を任せているばかりではなく、自分の力で解決するためにビジネスモデルを開発していくという発想とノウハウを学ぶことだろうと思います。

 僕自身、長年働いてきたマスメディア業界(新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど)にも、解決すべき問題が少なからず横たわっていることを痛感しています。

 多くの人に影響を与え、世の中の「空気」さえ変えかねないマスメディアを担う企業こそCSR(企業の社会的責任)について最も敏感になってほしい業界です。

 しかし、現実は、他社・他分野のメディアを責め落しても、自社のコンテンツの質については吟味が行き届いているとは言えませんし、インターネットと既存メディアを有機的に活かしている段階でもないんですね。

 そして、何よりも、「問題提起型」の報道が支配的であるために、社会問題の多さによる無関心さえ国民に刷り込ませてしまった感があります。

 現実には、それぞれの社会問題に対してその解決に取り組んでいる人たちが少なからずいて、解決方法を次々に開発しています。

 それこそが今を生き、明日も生きる僕らにとって勇気と希望を与えるのに、日本のマスメディア業界は「社会問題の解決は政治家や役人に任せておけ」という風潮が支配的だった時代の報道のあり方をいまだに引きずっているのです。

 だから、問題に対して議論はしても、問題の当事者の立場に身を置いて解決策を提示するという感覚そのものが薄いんですね。

 ドキュメント映画『靖国』の上映拒否問題が、いい例でしょう。

 新聞各紙は、「これは言論の自由の危機だ」「映画を見てから論議せよ」などと社説で書きました。

 でも、各社が保有している多目的ホールで試写会を開くようなアクションは起こさないんですよねぇ。

 上映を自粛した他の映画館と同様に、自社のホール前に右翼の街宣車が来るのが面倒だからだろうし、新聞社が保有しているホールも商業施設だから、コストに見合わない上映はしたくないというのが本音でしょう。

 三つ目の理由として、社として有言不実行でも、自分がコントロールできるマスメディアでは叩かれることはないし、他社の部数の多い雑誌社もホールを持っている手前、叩かれることがないからだともいえると思います。

 結局、マスメディアには、組織の内側から変革できるだけの自浄作用はないんです。

 というか、そもそも社内変革をしたい気持ちが起こりえないほど、そこに正社員として働いている人たちは高給取りなんですね。

 ちなみに、フジテレビの平均年収は1574万円(従業員数1384人、平均年齢39.7歳)で、日本人全体の平均年収437万円(2005年度4,494万人※国税庁民間給与の実態調査結果より)の3倍以上。

 言わば、札束に横っ面を張り倒されながら仕事をしているわけです。

 そういう人たちに、「会社員である前に市民だし、市民である前に個人としての人間だ。その個人としてのプライドとして、問題提起型の報道に終始してていいのか?」と詰め寄ったところで、蛙の面に小便でしょう。

 「どうせうちの会社を飛び出しても、お前一人じゃこんな金、つかめないだろ。その暮らしを維持したいなら、お前も波風立てずにおとなしくいい子にしてろ」というわけ。

 働けど働けど年収300万円に満たないワーキングプア層のネットカフェ難民の報道をしていても、結局は他人事だから解決策に取り組む人たちまでは取材しないのも当然。

 公益に敏感な人材に優秀な人が多いと気付いたアメリカ企業の波は、遅かれ早かれ、日本にも来るでしょう。

 その時に、自社の利益や自分の収入にしか目のない人間を集めている組織は、やがて自滅していくと思います。

 政治や行政、既存の企業の力では解決できない問題に社会起業家は取り組んできたけれど、第4の権力であるメディアこそ手つかずの病巣なのです。

(つづく)

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2008.05.02 14:45

 「座游」の川田さんのように、外国人に対して必要な支援を事業として行っている社会起業家は少なくありません。

 法務省入国管理局の統計によると、2006年(平成18年)の外国人入国者数は2005年比8.8%増の810万7963人で過去最高、2006年末の外国人登録者数は2005年比3.6%増の208万4919人で、総人口に占める割合も1.63%で過去最高を更新しました。

 これだけの数の外国人が日本に住めば、当然、レストランに入ったり、スーパーで材料を買うなどして食事をする際に、さまざまな不都合が生じてきます。

 彼らの中には、自分の信じる宗教によって食べることが禁じられている食材があったり、メニューが日本語表示だけで食べられるかどうかの判断ができなかったり、食習慣の違いから日本では当たり前の食材に対してアレルギー反応をひき起こしてしまうなど、食生活に困ってしまう人が少なからずいるからです。

 たとえば、牛や豚が食べられない人がふらりと店に入った時、複雑に料理されて差し出された皿の上のものやソースなどに牛や豚の肉が入っているかどうかを見極めるのは困難です。
 見た目でわかりにくいものを避けていけば、必要以上に限定された貧しい食生活を強いられることになります。

 そんな不便な食生活を少しでも改善し、多様な外国の文化も受け入れられる日本のあり方を目指そうという活動を始めたのが、大阪に事務所を構える団体「Internashokunal(インターナショクナル)」(http://www.i-nsl.org)です。

 また、海外に住む外国人に対して、そこにある問題を解決しようという社会起業家たちもいます。

 たとえば、「アジア最貧国」であるバングラデシュに雇用と女性の教育機会を増やすために現地の原産であるジュートという麻を加工しておしゃれなバッグを制作し、日本で販売を始めた株式会社マザーハウス(http://www.mother-house.jp)の山口絵理子さんもその一人。

 彼女は慶應義塾大学四年生時にワシントン米州開発銀行でインターンを経験したのをきっかけにバングラデシュを単身訪れてみると、国際開発援助金が実際には貧困層の生活向上に寄与していない現実を知り、卒業後にそのままバングラデシュの大学院に進学。

 二年間の滞在を経て、24歳でマザーハウスを起業し、日本の大手デパートでの販売を実現させたんですね。

 その詳細は、彼女自身が書いた自叙伝本『裸でも生きる~25歳女性起業家の号泣戦記』(講談社・刊)を読んでみてください。

 他にも、ホームページ制作を主としたIT事業の収益の一部をカンボジアの児童買春問題を解決・支援する活動の資金に当てるために働いているNPO法人「かものはしプロジェクト」(http://www.kamonohashi-project.net/)や、クリックやネット売買をするだけで平和活動や環境保護などのNGOやNPOに募金できる仕組みを作った「ユナイテッドピープル」(http://www.unitedpeople.jp/)など、20~30代の若い世代から社会起業家たちが続出しています。

 そのようすは、5月に発売予定の拙著(アスキー新書)で詳細を書きますので、お楽しみに!

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2008.04.25 14:44

 「座游」の外国人サポート・サービスの対象エリアは開始当時は東京都のみでしたが、現在では電話とメールですべて対応する形で全国にまで広げています。

 入国管理局の統計によると、既に200万人以上の外国籍の人が日本に住み、年間7万人以上が新たに日本に住み始めているといいます。

「全国で同じ問題があって、地方ほど深刻です。
 日本はもう外国人を受け入れるしかないのに、いつまでも偏見なんて持っていられないでしょう。
 住宅を借りられない『住宅弱者』には外国人だけでなく、障害者、母子家庭、単身高齢者と4者がありますが、それぞれ対応策が違います。
 行政の支援が行き届かないことが多いので、うちとしても取り組みたい課題です。
 自社の売上を伸ばすことより、多くの方々に協力していただき、最短距離で目的を達成することが大切だと考えています」

 同年10月、川田さんはアパ・マン経営のスペシャリストとして有名な浦田健氏と業界向けセミナーを開き、ゲスト講師として外国人入居のノウハウを話したり、法務省が2015年までにニューカマー(※1945年以前から日本に住んでいる外国人を「オールドカマー」と呼ぶのに対して、それ以後に日本に住んだ外国人をこう呼ぶ)を300万人に増やす方針だと説明しました。

 現在、日本に住んでいる在日外国人は160万人ですから、7年後には外国人向け住居市場は約2倍に増えるのです。

 12月には東京ビッグサイトで行われた「賃貸住宅フェア」(主催:全国賃貸住宅新聞社)で外国人座談会を開き、在日外国人たちと一緒に家主や不動産会社向けに入居をめぐる現状を説明しました(この内容は全国賃貸住宅新聞に見開きで紹介されました)。

 外国人入居についてのノウハウを身につけておけば、大家さんにとって頭の痛い空室問題も怖くありません。

 そこで川田さんは、そのノウハウをインタビューに答える形で明かした『高収益!ノントラブル!外国人入居の新潮流』というCDも5千円の安価で売り出したほか、自社サイト上でもノウハウの一部を公開しました。

 ノウハウがより多くの大家に共有されれば、外国人の入居問題の解決はそれだけ早まるからです。

 また、英語圏の外国人に対しても賃貸住宅を借りる際の流れを教えるコンテンツを日英バイリンガルサイト『ひらがなタイムズ』へ提供しました。

 2008年8月には、2万人が来場する賃貸住宅フェア(東京)で講演する予定です。

「座游は、外国人が日本人と同様の条件で住居を借りられる社会を構築するため、家主や不動産業者の意識改革を行うのと同時に、外国人の優良顧客化を目指しています」

 20代の若き社会起業家の挑戦は、まだまだ続きます。

(つづく)

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2008.04.18 14:43

 2007年5月。

 川田さんは在日外国人の生活や地位の向上を図るために住宅支援事業などを行っているNPO法人「在日外国人情報センター」(ICFJ)で仲介業者や家主向けの勉強会を開催し、在日外国人のマーケットの魅力や外国人の接客・応対時の留意点、管理テクニックなどを話しました(川田さんは同団体の参事を務めています)。

 こうした活動が認められ、7月に川田さんは『Newsweek』誌で「世界の社会起業家100人」の一人に選ばれました(ちなみに同誌で紹介された日本人はたった6人)。

 でも、家主に管理コストを負担してもらうビジネスモデルは、9月末頃まで5カ月ほど試みたものの、広く支持されませんでした。

 それでも外国人客のニーズは高く、多少余計に金を払っても賃貸物件に入居したい人は少なくありません。

 そこで川田さんは、11月からは入居時に3万円(翌年度からは1万円)を外国人自身から受け取り、入居から退去までのトラブル解決を一手に引き受けて多言語で対処することで大家を安心させて入居可能物件を増やすというサービスを始めてみました。

 外国人であれば誰でも無審査で受け入れ始めると、3ヶ月間でなんと約300件の契約が成立したのです。

「外国人の多くは日本人の連帯保証人をつけられず、滞納保証会社に月額賃料の半分程度を支払って連帯保証人の代わりになってもらうのですが、日本語を話せないと契約できません。
 弊社は彼らに同行して保証の審査を通りやすくすると同時に、滞納しても保証会社の代わりに入居者の話す言語で督促するので滞納率も下げられますし、弊社はその際の緊急連絡先にもなるので日本人を探す必要もありません。
 実際、最初に契約の中身やゴミの分別、騒音などの生活上のルールの理解させておけば、後はほとんど手間がかからないんですよ。
 外国人を入居させて、外国人が嫌になった人はあんまりいません。
 貸したことがなく、慣れてないだけなんです」

 このサービスはたちまち都内の外国人たちの知るところとなり、急速に契約数を伸ばしているため、川田さんは2008年12月までには五千件、三年後には三万件にまで広げたいといいます。

「新しいモデルなので、軌道に乗るには三年くらいかかるでしょう。
 それに乗じてスタッフも増やしていきます。
 当初は僕以外に中国人・韓国人・アメリカ人・スイス人の社員が一人ずついましたが、社員自体を増やす考えはなく、NPOを通じたボランティアの力を借りたいです。
 たとえばスワヒリ語を話す客がいても、一年で一回しか出番がなく、需要がないので雇えないからです。
 現在はすべてボランティアやアルバイトの外注スタッフにし、20名程度のスタッフで13言語に対応しています。
 みなさん、『同国人のために何か手伝いたい』というモチベーションの高い人たちです。当事者ですからね」

 つまり、座游は、同国人が同国人を助ける場を提供しているのです。

(つづく)

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2008.04.11 14:41

 川田さんは、外国人を賃貸物件に入居させる困難について、こう言います。

「外国人客が増えたといっても、一日に一人程度の客しか契約が成立しないという規模では問題は解決できないし、大家さんの外国人に対する偏見はなくならないんですよ。
問題は偏見です。
『家賃を滞納するのでは?』
『言葉が通じないのでは?』
『無断で帰国するのでは?』
 こうした不安が、仲介業者や大家には根強くあります。
 でも、調べてみると滞納率は日本人が4%で、外国人は2%。
 外国人に貸すほうが安心ですし、外国の方はお客さんを紹介してくれることが多く、いいお客さんつかまえると友人も一緒に入居されるので広告費もかからず、紹介で入ると友人に迷惑かけられないのでトラブルも少なくなります。
 しかも、日本語をほとんど話せない外国人は全体の11%なんですよ」

 そのように外国人が入居するメリットの大きさを知りながら、なかなか変わらない業界の現状にイライラしていた頃、彼は「NEC社会起業塾」の存在を知りました。

 この塾はNPO法人ETIC.が運営するソーシャルベンチャー創出プロジェクトで、事業立ち上げ期の社会起業家を募集し、塾生の提案するビジネスモデルが認められれば、資金とパソコンが提供されます。

 そこで2006年8月、川田さんはこの塾の半年間のプログラムに参加し、ビジネスプランを磨きました。

「最初に出したモデルは、外国人自身に不動産を買わせて、そこに外国人を住まわせるもの。それは今でも良いビジネスになると思う」

 同年9月には外国人の日本での不動産売買が活発になってきている現状から中国系の新聞「陽光導報」で日本での不動産投資について注意事項を伝える記事を連載し始め、翌10月にはアーク森ビルの国際交流基金国際会議室で「在日外国人の住宅問題を考えるシンポジウム」を開催。
 仲介業者の立場としてパネリストを務めました。

 そして11月。
 川田さん自身が100%出資し、在日外国人の賃貸住居への入居をスムーズにする支援事業を行う株式会社「座游」(http://www.the-you.com/)を設立すると、全国賃貸住宅新聞で連載を始め、「近い将来14兆円になる在日外国人マーケット」と書いて外国人に対して不安がる家主に対して関心を煽りました。

 もっとも、設立当初は仲介業を行わず、NEC社会起業塾を通じて出会った「OK Wave」(※同名の日本初、最大級のQ&Aサイトを持つIT企業)に営業に行き、「外国人が日本での生活で困らないようにするためのポータルサイトを作らせてください」と社長と交渉を続けていました。

 2007年1月にようやく提案が承諾され、「OK world」(http://world.okwave.jp/)というサイトのコンテンツを制作し始めると、すぐに春がやって来ました(※同サイトは同年7月から運営開始)。

 4月から日本の不動産を買いたい台湾人に仲介業を行いましたが、儲けが出ても川田さんは不満でした。
 こうした業務はバイト時代と同じで、条件に合う物件を探すだけだからです。

「そもそも外国人に貸したい大家さんの不安を根本的に解消していくのが基本的なミッション。
 だからその後、一世帯に対して5000円を月額の管理料として大家さんからいただいて外国人の入居をめぐるトラブルを何でも対処するという業界初のサービスを始めたんです」

(つづく)
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2008.04.04 14:38

 外国人が日本でアパートやマンションなどの賃貸物件を借りて住みたい時に、不動産屋に行くと、断られてしまうことが少なくありません。

「日本人の連帯保証人をつけてくれ」
「アジア人はダメ」
「日本語を話せない人はお断り」

 不動産屋は、物件のオーナーである大家さんから、そのように言われているため、なかなか仲介窓口で日本人と同等に外国人を受け入れるということができずにいます。

 大家さんにとっては、文化や習慣も違う外国人と付き合って、想定外のトラブルに対処していく面倒を負いたくないというのが本音なのでしょう。

 そこで、入居中のトラブルの解決をすべて請け負うことで大家を安心させ、すみやかな入居を実現させた会社があります。

 東京・高田馬場にある株式会社「座游」(The-You)です。
http://www.the-you.com/index.html

 社長の川田利典さん(24歳)は東京生まれ。

 2003年に明治大学に入学した後、実家の家具会社を手伝う必要が生じ、1年間休学して仕事をしていると不動産ビジネスを知りました。

 復学してからも学校へはあまり行かず、宅建(※宅地建物取引主任者。不動産を取引したい人に宅地や建物の売買、交換・貸借の契約を成立させるまで説明などを行う国家資格)を勉強し、新大久保の不動産会社でアルバイトをしました。

「そこの社長さんは韓国人で、お客さんも全員外国人でした。大家さんに『外国人の方は入居できますか?』と聞くと、当時の新大久保では9割の人が『外国人は全部ダメ』っていう現状でした。
 連帯保証や滞納保証を肩代わりする仕組みもなかったんです。
 大家さんより年収が高くてちゃんとしたところで働いてる黒人さんが来店した時も、通常その条件だと日本人なら100%通るのに、大家さんに『黒い方はダメ』とか『アメリカ人は戦争で負かされたからダメ』とか言われてしまいました。
 不動産業界の常識と一般常識はかけ離れてて、大家さんもお山の大将という意識が抜けません。
 外国人というだけで9割の物件が候補から消え、日本語がしゃべれないだけで残り1割の候補の9割が消えてしまうんです。
 全物件の1%の中から入居先を選ぶしかないと、それは必ずしも良い物件ではないです。
 『なんで外国人というだけでこんなに住めないんだ』と理不尽さにだんだん腹が立ってきて、これを解決したい、解決にはビジネスライクじゃなくて、NPOや行政と仲良くする必要を感じました」(川田さん)

 そこで彼は、NPO法人「東京エイリアンアイズ」(高田馬場)が公募していたボランティアスタッフに参加しました。

 同団体は在日外国人の人権擁護や日本の内なる国際化に寄与することを目的とし、在日外国人の保証人ボランティアや留学生向けアパートの紹介、アルバイト・就職支援、留学生活トラブル相談などの事業を行っていました。

 川田さんは3人の外国人スタッフと共に外国人に住宅を提供する役目を請け負いました。

 そして、アルバイトを池袋の不動産屋に変えてみました。

 すると、店長から外国人専門の担当者に命じられました。
 順調に外国人客を増やしていくと、外国人専門の店舗が新設され、店長を任されました。

 でも、しばらくすると、川田さんは外国人に賃貸仲介する仕事に飽きてきたのです。

(つづく)
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