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東大の自主ゼミの第1回は、「『私』を生きる、という困難を超えるために」と題して、顔にアザのあるジャーナリストとして有名な石井政之さんをゲスト講師に招きました。
ゼミ生には毎回ゲスト講師の略歴をレジュメとしてメールしてあります。
では、石井さんの略歴を彼自身の自筆年譜から紹介しましょう。
1965年、名古屋出身。豊橋技術科学大学卒業。
1999年、顔にアザや傷のある人を支援する市民団体「ユニークフェイス」を設立。
2003年、日本ジャーナリスト専門学校非常勤講師に。「現代文化論」(教養)担当。
2006年、合同会社ユニークフェイス研究所を設立。
アザを持つ人たちの現状を伝えるドキュメンタリー映画「ユニークフェイス・ライフ」の上映会をミニシアターや公共機関を中心に各地で開催。多数のメディアに取り上げられ、映画と講演で全国を奔走。
著書に『顔面バカ一代』(講談社文庫)、『肉体不平等』(平凡社新書)他多数。
生まれつき、顔に「単純性血液腫」があった石井さんは、保育園時代に既に「集団生活に馴染めない」と自覚していました。
子供から「その顔どうしたのか?」と聞かれ、本人としては困惑するばかり。
「当時は、病名について説明する知識ゼロ、説明方法を知らなかったため。名古屋大学病院で、ドライアイス治療を開始。痛いだけで治療効果はなし。当時は幼児にはその治療方法しかなかった。母は完治しないと知って、小学校入学前に治療は中止に」
今でも「小学校時代については記憶はほとんどない」そうです。
ところが、中学に入ってからは状況が一変。
「イジメから身を守るために1年生の1学期のテストをがんばる。1年生全体で7位(5位だったかも)をとり、周囲の態度が一変。成績の良い者を子供は尊敬し、いじめの対象にしないことを知る。
不良の同級生とすこしだけ交流。集団で他校(朝鮮人が多かった)とケンカをしたところ、すぐに私の顔から身元がばれて、教師に呼び出されて説教される。顔にアザのある人間には匿名性がないことを思い知らされる」
そこで石井さんは「顔や人格などとは関係なく、実力本位の生き方をしたい」と思い、エンジニアになろうと、工業高校電気科を受験、合格します。
高校に入った彼は「虚弱体質の克服といじめから身を守るため」柔道部に入部し、2年生になると極真空手に入門。
また、母親に「顔のアザの治療したい」と申し出た彼は、名古屋大学病院の診断を受け、完治しないことを宣告されると同時に、カモフラージュメイクについて知ることになります。
カモフラージュメイクについて学ぶために化粧品会社に出向くと、そこにはアザのある女性が働いていました。
これに感動した彼は「この会社に入社したい」と思い,すぐに人事課に手紙を書いたそうですが、「大学卒業」が必要条件という返事で受験勉強を開始。
推薦入学選抜で大学に合格した彼に、「顔のアザを完全に隠す化粧品開発研究」という夢が生まれました。
大学では「大嫌いな子供に慣れるため」ボランティアサークルに入ってダウン症、自閉症の子供を2年間担当し、「かなり子供に慣れたと思う」。
4年生になってピースボートに乗った彼は、ベトナムクルーズに参加。
枯れ葉剤被害をみて、報道写真家になることを決めます。
「夢は顔にアザのある人を世界規模で取材するジャーナリストに変更された」
自分が自分であるというだけで抱えなければならない重さを、石井さんは物心ついた頃から引き受けてきたのだろうと思います。
その後、社会に出て企業広告の記事を執筆していた27歳の頃、石井さんは「不安神経症(?)のように」なります。
「理由は、(1)誰にでもできる仕事をすることに嫌気がさした。(2)顔面問題取材を先送りすることへの焦燥感」
その後、「何もかも忘れて新しいテーマを探すためにレバノン取材に向かう」ものの、彼は顔にアザのある女の子の家庭と出会ってしまいます。
「やはり顔面問題を取材するしかない!」
そんな使命感に駆られて帰国した彼は、「人間にとって顔とは何か」(講談社)が刊行されているのを知ります。
ユニークフェイス問題について世界の最先端事情をまとめた翻訳書でした。
アメリカが研究の本場であると知った彼は、1996年にニューヨーク市立大学ブルックリン校に入学します。
「ニューヨーク市内の図書館で、顔面と心理についての英語論文の収集と読破に励む。ロンドン(英国)、トロント(カナダ)に渡って顔面問題を取材。欧米ではユニークフェイス問題が研究テーマとして認知され、セルフヘルプグループが社会に根付いていることを知ってしまう」
そして1999年3月、処女作「顔面漂流記」を出版し、本格的にジャーナリストとして顔面問題に取り組み始めると共に、市民団体「ユニークフェイス」を立ち上げ、毎月の定例会(ピアカウンセリング)を実施していくようになるのです。
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