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1965年生。早稲田大学第一文学部を3か月で勇退。広告業界を経て25歳でフリーライターに。企画・編集した『日本一醜い親への手紙』はベストセラー。『完全家出マニュアル』で造語した「プチ家出」が流行語に。2007年春から東京大学(駒場キャンパス)で自主ゼミの講師を始める。著書に『親より稼ぐネオニート』(扶桑社新書)、『ゲストハウスに住もう!』(晶文社)など多数。
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第48回 東大自主ゼミとは何だったのか?A[2008年05月16日(金) ]

 しかし、「報道の公共性」や「中立性としての客観報道」を隠れ蓑にして、結局は「べき」論に終始する議論ばかりを投げかけるのが仕事だという時代は終わりつつあります。

 だからといって、既存のメディアがそっくりインターネットにとって代わることはありません。

 なぜなら、ネットで読めるニュースの多くは既存メディアによる取材に依存しており、ネットだけで膨大な取材コストを賄えるビジネスモデルはまだ開発されていないからです。

 僕の仕事は、社会起業家に関するコンテンツをこうしたメディアの中に増やしていくことで社会起業家を志す若者やその支援者を増やし、「問題提起型」の報道から「解決方法(ソルーション)発信型」へとメディアのあり方を変えていくことです。

 もっとも、体力を余らせている若い世代をけしかけるほうが、同時多発的に新しい社会起業家を急速に増やすことになります。

 だから東京大学の駒場キャンパスで学生自治会の承認による自主ゼミの講師を務めたんです。

 そもそもは東大生たちからのオファーによるものだったのですが、東大生以外の人も受講できるようにしました。

 mixiで「Conゼミ@東大」のコミュを立て、受講希望者を募ると、他の大学に通う学生から女子高生、主婦、50代のおじさんまで集まったんです。

 このブログで書いたとおり、前期ではふだんの暮らしでは目に入らない社会問題の当事者を招いて話してもらいました。

 ユニークフェイスという顔に傷のある人、レズビアン、ニートから起業した人…。マイノリティで弱者だからマスメディアになかなか紹介されない存在だからこそ、学生には「この人と自分との接点を探せ」と言いました。

 相手の立場を想像したり、共感したりする力をつけることで、自分が社会の中で何を問題として認知するのかという感性を養った後、後期では社会起業の担い手をゲスト講師に招いたのです。

 ゲスト講師に来てくださった社会起業家のみなさんは、「コトバノアトリエ」の山本繁さん、「WWBジャパン」の奥谷京子さん、「座游」の川田さん、「モーハウス」の光畑由佳さん、「ファザーリングジャパン」の安藤さん、「ユナイテッド・ピープル」の関根さん、「吉田屋」の山根多恵さん、「市民バンク」の片岡勝さん、「LET’Sきさらづ」の筒井啓介さん、「音力発電」の速水浩平さんなど。

 受講生たちは、毎週彼らの講義を無料で受けられたのです。

 大学生たちからは「通常の授業や他のゼミより面白い」と好評を得ましたが、1コマ1万円しか自治会から予算が出ないため、ゲストの方々に謝礼として1万円を払ったんですね。

 これで僕自身のギャラは出ませんが、毎度、講義内容をビデオカメラで録画し、書籍のような執筆仕事に講義内容を移すことでよしとしました。

 それが、6月11日に発売される『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)です。

 この自主ゼミは単年度で終わるため、存続を望む受講者たちの声に押されて、僕は12月上旬に東大総長の小宮山氏にメールを出しました。

 当局公認ゼミでは、1コマ3万円が支給されるものの、東大生しか受講できません。
 それでは、社会人と触れ合いながら社会起業を学びたい学生にとっては損です。
 どうせならゼミ講義内容の動画もインターネットで公開したい。

 そこで、ゼミの運営コストを受講生たちと僕が一緒に事業を興すことで賄う実践型ゼミの企画書を書いて東大総長にメールで送り、「とりあえず会って話をさせてほしい」と申し出たのです。

 東大には「学生アントレプレナー道場」という学生ベンチャー支援の授業もありましたが、「企業とは何か」という話で1コマが終わる一方的な講義スタイルで、僕らがやりたいゼミとは違っていました。

 社会起業家の方々の実体験に触発されるほうが学生たちの関心度を高められるし、東大生以外も参加できるなら、親がいなくて学費が払えず、職業選択の自由がない子でも参加できます。

 東大に一銭の負担もかけないこの新しいゼミのプランを総長と理事会がどう評価してくれるのか、受講希望者たちと一緒にワクワクしながら返事を待っていると、翌08年2月になって「自主ゼミをソーシャルベンチャーに展開させることには、今のところ、こちらで検討が必要と考えています」という事実上の却下の返事がメールで届きました。

 すべてのやりとりは総長秘書によるメールと電話で済まされ、総長自身の声を聞くこともなければ、僕やゼミ責任者との話し合いのテーブルに着くことさえ検討されませんでした。

 総長に送った企画書には、受講生1人あたり1年間で10万円程度(=月あたり1万円以下)を稼ぎ出せばゼミが運営できるというビジネスモデルを書いたのですが、「検討が必要」な額面でしょうか?

 2000年4月から山口大学で「ベンチャー論」を教え始めた片岡勝さん(※日本の社会起業家の草分け的存在)は、同大学の広中平祐学長に会った際、こう言ったといいます。

「これからの大学は地域問題の解決に知恵を出しあい、実践していく実行力を持たなくてはならない、机上の空論ばかり教えていたり、卒業証書だけを発行している大学は存在意味がないから淘汰される」(町田洋次・著『社会起業家』より)

 この言葉を広中学長は即座に理解し、商店街にある店で講義を開くことを許可し、大学生には単位を与え、学生以外の受講生も歓迎しました。

 先見の明、ここにあり。

(つづく)

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