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1965年生。早稲田大学第一文学部を3か月で勇退。広告業界を経て25歳でフリーライターに。企画・編集した『日本一醜い親への手紙』はベストセラー。『完全家出マニュアル』で造語した「プチ家出」が流行語に。2007年春から東京大学(駒場キャンパス)で自主ゼミの講師を始める。著書に『親より稼ぐネオニート』(扶桑社新書)、『ゲストハウスに住もう!』(晶文社)など多数。
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お父さんの育児 (2008年06月22日)

第32回 ナーシング・フリーダムC[2008年01月25日(金) ]

 杉山さんがモーハウスに入社してから、たった3ヶ月後の6月。

 彼女は、名古屋で行われた愛・地球博でモーハウスのトークイベントの仕切りをいきなり任されることになりました。

「大変だった? いや、別に。やるしかなかった(笑)。
 授乳ショーに出演してくれる人を募って当日の手配をして…。
 『ほんとに出演者が来てくれるの?』とか、まったく不安がなかったわけではないんですが、そういうことを働いて間もない私にやらせてくれる環境がものすごくありがたかった。
 他の会社ではありえないこと。
 ここまで任せてくれてくれたんだから、すごい頑張ろうと思ったんですよ」

 しかも、光畑さんは毎度、「杉山さん、仕切りやってくれる」「はあ? はい」といった調子で、細かい指示がないんだそうです。

「初めて授乳ショーを観た時に、『これ、大学の学園祭でやりませんか?』と言ったら、『いいじゃない、やったら?』って感じで平気で無茶振りする(笑)。
 常に自分で考えて動かないといけないから、いつの間にかそういうこともできるようになっていったんです。
 知らず知らずのうちに成長させてもらいました。
 新卒を面接して雇うのも私が窓口で、人事もやってるんですよ。
 ありえないですよね、1年目で人事ですよ。
 そういうのも楽しくてしかたがない」

 このように仕事をしていると、杉山さんの中で変化が起きてきたそうです。

「仕事を通じて変わってきたのは、私は子育てしている人たちを『退屈そう』とかすごい偏見の目で見ていたんだなって気づいたこと。
 私みたいな思いをしてきた子たちに対して、私が持っていたような偏見を取っ払えるようにできたらいいなって思えるようになった。
 ママさんたちは思った以上に仕事ができる人がいて、憧れです。
 子育て中の女性に対する見方を変えてくれる人たちに出会えるのが楽しい。
 だから、女性に生まれたことを、自分を、すごく誇りに思いました。
 『知ってしまったからには女であることを満喫しなければ!』という妙な使命感にかられている毎日です(笑)」

 一方、モーハウスは、2005年10月に初めてのショップを東京・青山にオープンしました。

 光畑さんは、その当時の思いをこう話してくれました。

「家賃を日割りにした分くらいは売っていけるだろうか、とまず考えました。
 諸経費を別に考えれば約3万円。
 ライブハウス経営の経験者に聞くと、『そのくらい何とかなるんじゃない』とおっしゃる。
 自宅でのオープンハウスでさえ、日によってはママたちの異業種交流の場になっていました。
 これを青山に持っていけば、さらにいろんな方たちと交流ができて何か面白いことが起こるかも。
 最終的に出店を決めたのは、その魅力に抗しかねたからです。
 売上を伸ばそうということはあまり考えていませんでした。
 誰でも服の質感を味わえる場を作ること。
 お母さんたちに安心して遊びに来てもらえるハレの場を作ること。
 子連れで働く場を作ること。
 ショップに期待するものはそんなものでした」

 このように、赤字にならない程度の仕組みは考えながらも、社会にとって必要なインフラを整備することを優先的に課題にする構えこそ、ソーシャルベンチャー(社会起業家)特有のあり方と言えるでしょう。

 授乳服の製造・販売を通じて女性の自由を一つずつ実現してきたモーハウスは、「母親」になった後から起こりうる問題に、敏感に反応してきたのです。

 実際、出産直後から何をするにも赤ちゃん中心で動き、忙しさの中で自分にとって気持ち良いことや自分らしい暮らし方を忘れてしまう人は珍しくありません。

 また、母親になった途端、出産前には当たり前だった友人との交際や趣味に没頭する時間も捨てなきゃいけないような気持ちにもなりがちなのです。

 そんな女性たちに、モーハウスはオープンハウスやイベント、授乳服を通じて「なんとかなるわよ」とゆるく訴えかけてきました。

 その大らかな構えが「授乳以後」というライフステージにおける新しい選択肢になることを、当事者のママさんたちは自然に感じとってきたのでしょう。

 しかし、女性には、まだまだ明るみにされない可能性が眠っています。

 その一つが子連れ出勤です。

(つづく)

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