2007.10.26 21:04

 僕はこのゼミを始めるにあたり、僕は若いゼミ生に対してこんな望みを持っていました。

 「今の自分には関係ないと思っても、世の中にはさまざまな弱者が常にいることを忘れないでいてほしい」と。

 現実に経済的な弱者を救うセーフティネットとして機能する持続可能なビジネスの一つとしてゲストハウスの運営があり、フリーター支援に一役買っている点は大いに注目すべきところであり、厚労省や経済産業省なども積極的にゲストハウス業者を支援してほしいところです。

 しかし、現状ではむしろ既存の法律に縛られる点も少なくない、と山中さんは言います。

「保健所から(素泊まりの)旅館業はしちゃいけないという指導が来るんです。
 建築についても消防法の規制があるんです。
 ドヤ街にあるような1泊1500円の簡易宿泊所はそれなりに許可をとっているんでしょうが、 日本のゲストハウスだけがアパート扱いなんですよ。
 いったん物件を建てたら、その当初の目的でそのまま使い続けろというのが日本の法律なんです。
 都心のビルの物件さえ余っているのに、ビジネス物件を住居用にするようなコンバージョン(用途変更)が法的に難しいんですね。
 『ゲストハウスといえば、日本ではマンスリー・アパートですよ』と言うと、外国人はみなビックリします。
 タイでも、ジャカルタでも、ゲストハウスといえば旅館なんですから」

 まさに、「制度疲労」の問題が横たわっているわけです。

 新築物件を増やせば、そのぶん建材に使用される木や土が新たに消費され、環境にいいわけがありません。

 ですから、「もったいない」精神を行政が音頭をとって再発見しようとするなら、既存の建築物件を再利用するゲストハウスに着目し、1泊のみの利用を自由化してゲストハウスの経営を支援したり、ビジネス用の物件も住宅用に容易にコンバージョンできるような建築基準へ見直しを検討するなど、国の制度改革も必要でしょう。

 もっとも、「共同生活」による実現する格安賃貸物件について、まだまだ一般人に認知されていないという逆風もあり、ゼミ生からも素朴な質問が飛び出しました。

 「共有して利用される廊下や玄関などの掃除やお風呂の準備などは、誰がやるんですか?」

 山中さんが答えます。

「住んでいる人にやってもらうか、うちの会社のスタッフにやってもらうか、スタッフが支援できる範囲でやるか、とさまざまに対処しています」

 ハウス内の家事は、ゲストハウス業者によっても、その担い手が異なります。
 管理人がハウス内に同居している場合は、管理人に任せることが多いですが、そうではない場合、利用者全員が交代で掃除をしたり、気のついた人がやるなど、自分が満足する清潔さを自己責任で実現させるという暗黙のルールがあるようです。

「ゲストハウス業者どうしの交流はあるんですか?」

「業者を中心に日本ゲストハウス協会が立ち上がりましたが、まだ、活発じゃないですね。
 弱小業界なんで」

「保証人を立てられなくなった時の選択肢かなと思いました。
 体一つで上京した友達には、ゲストハウスだといいかな。
 畑がついてるとうれしいな」

「0円でも上京できるように、仕事をくれる会社と組んでオークハウスのゲストハウスの家賃を作れる仕組みを作ろうとは思っています。
 地方から来てすぐ住めることには意義があると思ってます」

「お風呂やキッチンが混んだりしないんですか?」

「朝仕事に行く人もいれば、夜学校に行く人もいて、そのへんは大丈夫ですよ。
 キッチンもね、みんなでわいわい作ったり、コンビニで買って部屋で食べたりと、困ってないみたいです」

「子どもの利用は何歳からですか?」

「赤ちゃんは困るけど、うちでは10歳以下は受けつけてません。
 でも、働く女性で赤ちゃんがいる方、ペットのいる方でも入れるハウスがいいかなと思うんですが、嫌いな人もいるんで、なかなか大変ですね。
 ただ受け入れたいなとは思っているんですよ。
 身体障害者の方も来て、一度は断ったんです。
 物件は持ち主(大家さん)から預かっているので、段差の加工もできないので。
 それでも入りたいと言うので、入居してもらったら、『お風呂などはなんとか這ってでも入る。みんなといると楽しいから』と言いながら半年間いたことがありますね」

「若い技術者たちを育てる場所を大企業は放棄しちゃってるんで、駆け出しの20代では20万程度の月収で、いっそ一緒に住んでしまえば、何かトラブルがあってもお互いに技術的な支援ができるし、夜勤や日勤などバラバラなので、ゲストハウスという住まい方はちょっと面白いかな。
 海外、とくにアメリカのハッカーは10人程度が1軒家をシェアしてたり、技術的にわからないことがあっても、教え合ったりして、そういうところからセキュリティの会社を立ち上げたグループも出てきましたし」

「1割以上、技術者がいますよ、うちのゲストハウスには。
 でも、男性専用ハウスって人気ないんですよ。
 入りたいと思わないでしょ(笑)。
 完全にその仕事だけにしちゃうより、実質的には違う人がたくさんいてワイワイやるのが楽しいんですよ」

「疲れた顔して帰ってきた時に、そんな顔を人に見せたくないというか、気の抜けた顔を見せたくないんです。
 そういう人はゲストハウスに向いてないのかな?」

「トイレとかシャワールームなどの既存のスペースは共同で使ってますが、新築部分は個人用のものを足していくことは可能は可能ですけどね。
 ただ、コストをかければかけるだけ、『安く東京に住む』というコンセプトからは外れていくんですね」

 もっとも、本郷には、住人が入口から部屋までは顔を合わせずに済むデザインのシェアハウスがあります。

 下記リンクに、そのハウスを設計した建築士の田中友章さんの説明があります。

http://www.asahiglassplaza.net/kaiteki/architect/ar/topic/400.htm

 こうして考えると、共同生活を前提とする建築物件におけるプライバシー設計については、今後の建築デザイン上の課題になってくるんだろうと思います。

 中流層の家庭の資産が下流化している昨今では、若い頃には安い居住空間に住んで親の経済的負担を軽減し、勉強やコミュニケーションのチャンスと時間を増やすほうがリーズナブルだと思います。

 実際、大学進学までさんざんお金をかけてきたのですから、上京したら子どもをゲストハウスに入れて、お金のありがたみを実感させたほうが、社会に出る前の良い勉強になると思います。

 もっとも、会社単位ではなく、個人的にゲストハウスを運営し、家賃収入で暮らしている若い人も増えているので、東大生なら「受験生向けの宿」として運営して、家庭教師をブッキングすれば、教師紹介料と家賃収入で時給のアルバイトをやるよりもはるかに効率的に儲かると思うんですが、20歳そこそこの東大生諸君はピンと来ていない様子でした。

 通常の家賃より高くても、現役東大生が勉強を教えてくれて、しかも格安で住めるゲストハウスが駒場や本郷などにあれば、全国から問い合わせが殺到するんじゃないかと思うんですけど、勉学に忙しくて、それどころではないのかもしれませんね。
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東大・京大
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この記事へのコメント

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