連休にちょっとしたお出かけを予定しているタムラは、今週はごきげんです。
同じく連休を待ちわびている方も多いのでは?



さて、今日は最近読んだ本から。
野矢茂樹『入門! 論理学』(中公新書・2006年)

「記号論理学」という学問の入門書なのですが、本文中にほとんど記号は出てきません。
それもそのはず、なにせこの本は縦書きですから。
序の部分で野矢さんご本人も書いていますが、記号論理学の本で縦書きというのは、ちょっと見たことがありません。
ふつうは横書きで、記号や式をたくさん使って書かれているものです。
で、タムラのような文系人間は、その記号や式の羅列を見ただけで「記号論理学、ムリ!

野矢さんは、論理学を身近に感じさせてくれる楽しい本を何冊か出版されていますが、それらの中でも、この本は「論理学の最初の1冊」として向いていると思います。
とりわけ、記号や式を見ると頭痛がするという体質の方にはおすすめの1冊です。
本の紹介はこのくらいにしまして。
突然ですが、問題です!
次の二つの文章は、演繹的推論として正しいでしょうか。
(簡単にいえば、「論理的に正しい」と言えるかどうか、判断してください、ということです。)
1)A店では商品Pの売り上げがよくない。しかし、B店では商品Pはよく売れている。
比べてみると、値段はどちらも同じなのだが、
A店では商品Pは店の奥に置いてあり、B店では入口付近に置いてある。
このことから、A店では商品Pの売り場の位置が適切ではないと判断できる。
2)ある行為が犯罪とされるためには、その行為が刑法で定められた犯罪の型にあてはまり、
かつ、正当防衛のように違法性が阻却される理由もなく、
かつ、その行為を為した人に責任を帰することができるのでなければならない。
その観点から、たとえば借金を踏み倒すといった債務不履行を見てみると、
債務不履行は刑法が定める犯罪の型には該当しない。
だから、債務不履行は犯罪ではない。
(例文1は『入門! 論理学』14ページ、例文2は同23ページより引用)
どうでしょう。なかなか紛らわしいのでは?
1)のほうは、一見、正しいように見えますよね?
スーパーの店長が、部下からこんなふうに言われたら、「じゃあ、うちも商品Pを入口近くに置いてみる?」と言いたくなりますし、実際に商品Pの置き場所を変えたら、売り上げがアップするかもしれない。
でも、「絶対に正しいか」と言われると、そうは言えません。
そもそも、A店の立地が悪くて、商品Pの売り上げが悪いのかもしれない。
(小さな子どもがほとんどいない地域にあるスーパーで、ミルクやおむつの売り上げが悪いのは当然ですよね。)
ですから、1)は「論理的に正しい」と言うことはできないのです。
では、2)はどうでしょう。
「債務不履行は犯罪ではない」と言い切られてしまうと、「え? そんなバカな」と思ってしまいますが、実はこれは「論理的に正しい」と言うことができるのです。
2)の文章を整理すると、
A「刑法で定められた犯罪の型にあてはまる」
B「違法性が阻却される理由がない」
C「行為を為した人に責任を帰することができる」
この3つの条件をすべて満たして、初めて「犯罪」と言うことができる、と書かれています。
しかるに、「債務不履行」は、条件Aを満たしません。
よって、「債務不履行」は「犯罪ではない」のです。
※実際、「債務不履行」は、刑法で裁かれる犯罪ではなく、民法の範疇なのだそうです。
日本の教育現場では、上の1)と2)の違いを見極めさせるようなトレーニングが欠けている、と指摘されることがあるそうです。
そういえば学生時代、「論理的に考えなさい」「論理的に書きなさい」とは何度も言われてきたけれど、「論理的な考え方とはどういうものか」ということを直接教えられたことはなかったように思います。
すみません、今回は本の紹介だけで長くなってしまいました。
次回、もう少しこの問題を続けて考えたいと思います。
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