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すし屋でマグロは嫌われると、国語力検定

[2008年05月24日(土) ]

サーシャ・アイゼンバーグ『スシエコノミー』(日本経済新聞出版社)読了。



評論というより、レポートですね、これは。

スシネタ、とりわけマグロが、まさにグローバル経済(書いてて恥ずかしいな、この言葉)の真っ只中にある、というお話。

「ふーん」あるいは「へえ」と思った箇所を、いくつか引用。

築地の仲卸業者さんが、競り落としたマグロを解体する場面の描写。

《そして同じ背側のブロックからもう少し小さく、ぴったり二キロの塊をカットして、同様に重さを量り、包み、箱に入れる。三菱東京UFJ銀行本店の重役用の食堂に配送されるものだ。》(p90)

重役用食堂の食材として、築地からマグロ直送。

へーえ。

ていうか、重役用食堂というものの存在自体が、「へーえ」でした。

戦前ならともかく、そんなの、今でもあるんだ、と。

古臭い会社だなあ、と思ってしまうのは、戦後民主主義教育ゆえか……てこともないか。

ヘルシーな食べ物として、アメリカでスシの人気が高まったことを記述したくだりの中。

《渋滞に巻き込まれながら四五分かけてエクササイズに行くのに、地元の歩道ではけっして歩かない、といった彼らの矛盾に満ちた行動はロサンゼルス人の本質というしかない。》(p131)

そうそう。スポーツクラブまで歩いていけばいいじゃん、通勤も徒歩にすればいいじゃん、とよく思う。

ダイエットだかエクササイズに費やす仕事量(だっけ? 理科的に言うと)を、なんかこう、もっと生産的なものに結びつければいいのに。

ジョギングとか自転車こぎ運動で発電するとかさ。

ただ一方、無料のウォーキングやジョギング、徒歩通勤じゃなくて、わざわざスポーツクラブでカネを払ってエクササイズ、という気持ちも、わからなくもない。

「こんだけカネ払ったんだから、モト取らなきゃ」的心理に自分を追い込む、という側面もあるんでしょうね。

ああそうか、公立小中学校も、タダだと思われているところがネックなのかもしれない。ホントはいくら税金がつぎ込まれていて、ここでちゃんと勉強しないといくら損するよ、というのを、目に見える形で提示すれば、少しは変わるかも。

例の、グリーンピースについて。

《「グリーンピースがどこから資金を得ているか、知っていますか?」上野は苦々しくいう。「アメリカの精肉業界ですよ。クジラが宣伝されたら、ビーフの消費量が減ると彼らはわかっているんです」》(p319)

アメリカ精肉業界、誰かに騙されてるかもしれませんよ。

もし、クジラ取り放題、流通させ放題、となったとしても、牛肉の消費量には、そんなに影響を与えないような気がしますけど。

ぼくは給食でも、家庭でも、クジラをよく食った世代ですが、別に日本人の嗜好として「牛肉よりもクジラが口に合う」というわけではないと思いますよ。

あ。実は、逆にアメリカ精肉業界の人がクジラを食べてみて「ヤバイ、おれらの牛肉より美味いじゃん、これ」と思っちゃったのかも。笑えるな、それ。

スシを食べる文化が、世界に広まりつつあることについて。

《どんな食べ物、そしてどんな商品と比べても、すしを食べるという行為は、高度に発達した取引のネットワークへの直接的な関与であり、世界を股にかけた国際取引への全面的な関わりといえる。》(p322)

だそうです。

これまで生魚をあまり食べなかった中国やインドにも、徐々にスシが入り込みつつあり、これが普通の食事として定着しちゃうと、マーケットの大きさが大きさだけに、マグロ争奪戦が起きることが予想されます。

まだ、スシ自体のレベルは低いらしいですが。

それで思い出したのが、もう10年近く前になるか、モルディヴで食ったスシ。

ホテル名は秘すが、ある日の夕食がアジア各国料理ブッフェで、その中にスシもあった。

これがもう、まずいまずい。

レシピも見ずに、大体こんなもんだろう、という感覚で、作ったんじゃなかろうか。

シャリはベトベトで、やたらに酢がきつかったような記憶がある。

欧米からの観光客も多数いたが、「ひょっとして、スシってまずいのか?」と思っただろうなあ、あれ。

最後に、すし屋さんでスシを食うときのポイント。

《板前の仲間内では「すし屋でマグロしか食べない客は嫌われる」といわれている。》(p336)

すし屋にとって利益率が低い、ということは逆に、客にとって得した感が強いのが、マグロ、というわけ。

えーと、どういうことになるんだろう。

近所のすし屋さんでは嫌われないようにマグロだけじゃなく、旅行先ではマグロばっかり、てなことになるでしょうか。