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宮部みゆき『楽園』で一息と、国語力検定

[2008年04月22日(火) ]

宮部みゆき『楽園』(文藝春秋)読了。



上下巻で700ページほどあるが、小説はスラスラ読めるのである。

『模倣犯』未読でこれを読んだ人は、思わず『模倣犯』も買っちゃうというわけで、なかなかビジネス的にうまい。さすがである。つか、自分も、「あ、読み直してみようかな」と思ったもん。

個人的には、やっぱ『模倣犯』がベストかなー、と思ったが、こちらも結構おもしろかった。「ビジネス的にうまい」なんて書くと、何だそれだけかよ、と思われかねないが、書き手としてもうまいねー、宮部先生。とりわけ、気の持たせ方、泣かせ方。

新聞小説という制約(漱石の時代と違って、2年も3年も続くなんてことはない)のせいか、後半、ちょっとバタバタした感もあるが、またラスト近く、ちょっと理解に苦しむ箇所もあったが、それでも、こう複雑な話をまとめあげていく力は、見事なもんである。

せっかくだから、「前畑滋子」モノとして、シリーズ化しちゃえばいいんではないか。安直というそしりを受ける可能性なきにしもあらずだが、ビジネス的には大アリだと思う。

では、例によって引用。

《時計の針が午後十時を指す頃合いに、滋子は昭二に電話をかけ、こっちに来て一緒に飲むようにと一方的に命令した。ちょうど帰宅したところだった昭二は(中略)渋々ながら車を転がしてきてくれた。》(下巻p149)

ん? 飲みに行くのに、クルマ? ああ、代行使って帰るのか、そうに違いない。地方じゃよくあることだ。

《店内には酔っ払いの女店主と酔っ払いの滋子二人しかおらず、昭二はビールを一杯引っかけただけで、自然と女たちの世話役に回った。》(下巻p150)

飲み屋に行けば、まあ飲みますわな、たとえビール1杯としても。

《夫婦で「鳩の巣」を後にしたのは、午前零時過ぎのことである。(中略)「おまえなぁ!」息をひとつ吸い込むと、車のエンジンをかけながら、昭二が一喝した。》(下巻p150)

えええ! 運転して帰るのかよ!

ビール1杯だけなら、2時間もすればオッケーってことなんだろうか。

なわきゃないよな。警察的には、量は関係なく、飲んだら乗るな、乗るなら飲むな、だろう。

えーと、国語力的には、文章を書くときには気をつけましょう、というお話でした。

……いや、ひょっとして、こう書くほうがリアリティがある、という緻密な計算のうえで、ビール1杯飲んだ昭二に運転させたのかな、宮部先生。だとしたら、すごいな、やっぱり。

※オマエは『楽園』のそんなとこしか読んでないのか!と言われそうですが、プロットのキモになるとこ引用しちゃマズイかな、と思って、こういう箇所にした次第です、はい。ちなみに、前畑滋子の夫の昭二さんって、キャラ的にすごく好きだな。

もう一箇所。

《時間を浪費するのはたやすい。買い戻そうとするときに初めて、人は、その法外な金利に驚くのだ。》(下巻p221)

こういうのをサラッと書ける宮部先生。いいなあ。