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輿論と世論と、国語力検定 (2008年11月15日)

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モテる人はなぜますますモテるのか?と、国語力検定

[2008年04月05日(土) ]

さて、問題です。

問1:近所の電器屋で2000円の目覚まし時計を買おうとしたら、友人から、隣町の電器屋では同じものが1000円で売っていると言われた。アフターサービスはまったく同じとして、あなたなら、どっちで買う?

具体的な「隣町」を想定しつつ、考えてみてください。

続けて、もう1つ問題です。

問2:近所の電器屋で、252,000円の大型液晶テレビを買おうとしている。一方、隣町の電器屋では同じものが251,000円で買える。配送等アフターサービスはまったく同じとして、あなたなら、どっちで買う?

これは、ロバート・H・フランク『日常の疑問を経済学で考える』(日本経済新聞出版社)の、p28〜29に載っていた例を、少しアレンジしたものです。



さて、答えは。

《費用便益の原則から考えれば、ふたつの例の答えは同じになる。》(p29)

アレンジした例で言うと、どちらの問の場合も、隣町まで行くことによって得られる便益は1,000円。費用は、隣町まで行く手間をいくらに換算するかによるが、どちらの場合も同じ。費用も同じで便益も同じならば、答えは同じのはず、というわけ。

しかし、多くの人は、252,000円の品を1,000円安く買うよりも、2,000円の品を半額で買ったほうがおトクと考える傾向がある。

《それは間違いだ。この例では、割引率を問題にすべきではない。》(p29)

なるほど。

というわけで、なかなかおもしろい本でした。

日常のなかで「?」と感じることをQの形で提示し、それに対する解答の考察、という構成が、堅苦しくなくて読みやすい。4時間ほど楽しめて、楽しめるだけじゃなくて「ほう!」というところもあって、1800円。まあ、なかなかのコストパフォーマンスだと言えるでしょう。

いくつか引用。先にQを引用した場合は、答えを考えてみてください。

《Q.生産性の低い従業員には、貢献度より高い賃金が支払われ、生産性の高い従業員には、貢献度より低い賃金が支払われるのはなぜ?》(p90)

へーえ。アメリカって、貢献度と報酬がモロに連動、賃金格差が激しく大きい、というイメージがあったんだが。それは一部のCEOだけの話か。CEOがホントに貢献してるのかは、また別の話として、CEOが新入社員の何倍の報酬を得ているか、といった面での賃金格差の話。

答え、考えてみました?

この本には、こうあります。

《それは、従業員のほとんどが、グループ内の低い職位に甘んじるよりも高い職位につきたいと考えているからだ。だが、すべての人がこうした希望をかなえられるわけではなく、結局グループ内の半数は中位以下の職位に甘んじるしかない。一部の従業員が高職につけるのは、他の従業員が低い職位につくことをがまんするからにほかならない。》(p90〜91)

なるほど。「高い」ものの存在には、「低い」ものが不可欠、逆に言えば、「低い」ものがあるからこそ「高い」ものが存在しうる、ということですな。

この本の別の箇所で触れられていましたが、「クラス全員が、クラス平均以上の成績を!」というスローガンは成り立たない(論理的に実現不可能)、というのと似てますね。

「クラス平均」じゃなくて「学年平均」だと成り立つのでは?と思われるかもしれませんが、突き詰めていくと、「全世界のすべての人が、全世界平均以上の学力を!」になってしまい、結局成り立たないことがわかるでしょう。

《しかし、従業員を意に反して低い職位にとどめておくためには、それなりの補償が必要になる。/その補償はどこから得られるのだろう。どうやら高い職位にある従業員の所得に課された、目に見えない税によってまかなわれているようである。この税が高すぎなければ、高い職位にある従業員は、他社でより高い所得が得られる可能性があるとしても今の会社にとどまり、低い職位にある従業員は、低い職位に耐えるに値する給料を受けとることができる。よって給与体系は、累進課税と似たような傾向を示すようになる。》(p91)

まあ、賛否両論あるでしょうが、とりあえずこれがフランクさんの考える答えでした。

《Q.フルタイムの管理職を低い給料で雇う代わりに、高い給料を払ってパートタイムの経営コンサルタントを雇うのはなぜ?》(p102)

これ、まさに「パートタイム」でしか仕事がないからで、だからトータルコストで考えた場合、コンサルタントのほうが安上がり、と、これはわかると思います。もし、「フルタイム」でコンサルタントを雇っている企業があるとしたら、その企業はちょっと……みなまで言わないでおきます。

ただ、それ以外に、フランクさんは、こういう理由も挙げています。

《多くの抵抗にあいそうな経営戦略は外部のアドバイザーによって導入されるほうが受け入れられやすいことを企業は知っていて、高い費用を支払っても経営コンサルタントを雇うのかもしれない。たとえば、ある企業が売上の見通しが悪いため、従業員の何分の一かを解雇しなくてはならないが、それが残された従業員の士気低下につながることを恐れているとしよう。このような場合、解雇は経営陣の考えではなく、マッキンゼーの推奨事項だと従業員に伝えるほうが容易なのだろう。》(p103)

なるほど。単なる責任逃れのような気もしますが。

《Q.株式アナリストが「売り」を推奨しないのはなぜ?》(p188)

これはすぐに答えを。

《アナリストにとって安全かつ最上の策は、他のアナリストの評価を予想して右にならうことだ。他のアナリストも「買い」を推奨すれば、その企業との関係を良好に保てることは同じである。アナリストの仕事は株価動向を予想するだけでなく、他のアナリストの評価を予想することでもある。となれば、「買い」を推奨することが安全かつ最良の策といえるだろう。要するに「買い」の推奨には、今後の株価動向の動きに関する有益な情報など含まれていないのである。》(p189)

なーんだ。そういうことか。

女性の方、つまんないですか。では、女性向けの話題を。

《一九五八年、商務省は婦人服のサイズに関する商業基準を公布した。しかし小売業者はほどなく、実際の大きさよりも小さめにサイズ表示をすると服の売れ行きが伸びることに気づいた(「虚栄のサイズ」と呼ばれる)。基準サイズと小売業者がつけるサイズ表示との開きはどんどん大きくなり、一九八三年、商務省は基準を廃止した。今日、虚栄のサイズを採用しないメーカーは生き残れない。多くの女性は、「思ったよりも痩せている」という幻想を抱かせてくれるので、実際の寸法より小さめのサイズ表示がある服を好むからである。》(p245)

たしかに、昔、カミサンがユニクロで試着後、「このサイズ、おかしくね?」と言っていたことがある。「そんなに痩せた覚えはないんだけどなあ」ということで。

最後の引用。

《Q.一夫多妻制は女性には不快だが、男性には好都合だといわれる。それなのに、男性が多数を占める議会が、一夫多妻制を禁止する法律を認めるのはなぜ?》(p264)

これは、「モテる人はモテるということによってますますモテる、モテない人はモテないということによってますますモテない」ということにも関連します。

モテる→モテるだけの何かがあるのだろうという魅力を生む、となるんですね。

売れる本やCDがますます売れる、というのも同じか。チャートに入れるために自社買いする、という話も聞いたことあるしな。そうだ、国語力検定関連書籍も……冗談ですよ冗談。

では、答えを。

《一夫多妻制が認められれば、一夫一婦制を支持する人たちのなかで、男性と女性の数の不均衡が起こる可能性がある。かつては大勢いた自分にふさわしい女性がいなくなってしまうと、条件は男性に不利になる。結局、多くの男性が結婚できなくなるかもしれない。/要するに、需要と供給の論理から考えると、一夫多妻制が女性を不幸にするという考えは、じつは逆だということになる。一夫多妻制になって困るのは、むしろ男性なのだ。/(中略)一夫多妻制を法律で禁止することは軍縮協定のようなもので、男性の人生を楽にする。議会で優位を占める男性もそれがわかっているのだろう。》(p266〜267)

一夫多妻制の禁止=軍縮協定、という比喩は、なかなか秀逸だと思いました。