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横浜市大のコンプライアンスと「イラク戦争のアメリカ」と、国語力検定

[2008年04月02日(水) ]

昨日の国語力的ニュース。

夕刊社会面にも掲載されていたが、asahi.com(2008年04月01日10時50分)より。

《「通報者の責任追及を」申入書 横浜市大謝礼金問題》

夕刊で最初この見出しを目にしたとき、「ん?」と思った。

「通報者の責任追及」?

「通報者が責任追及」じゃなくて?

記事本文を読んでみる。

横浜市立大学医学部の医学博士号をめぐる謝礼金問題で、金銭授受をしていた前医学部長が主任を務める教室の医局員たちが、問題が発覚する端緒となった内部通報者の責任追及を大学側に求める申入書を出していたことが分かった。》

……「内部通報者の責任」って、何だろう。

《申入書は2月12日付で、前医学部長の嶋田紘教授が主任を務める消化器病態外科(旧第二外科)に所属する准教授(講師)ら11人が署名し、理事長、学長あてに出された。/申入書は、同大コンプライアンス推進委員会の調査を踏まえ「医局に在籍するものが医局内の出来事を悪意によって歪曲(わいきょく)し伝えなければ作り上げられない内容」と批判。「一緒に研究してきた仲間を犯罪者に引きずり降ろそうとする人間と職場をともにすることに恐怖感と強い嫌悪を抱く」としている。/そのうえで、理事長らに「早急に本事件の発端となった人間(投書をした者)の厳しい責任の追及と猛省をお願いしたい」と訴えている。》

てことは、だ。

申入書を出した人たちは、内部通報者が根も葉もないデマ、悪意に満ちたデマをコンプライアンス推進委員会に密告したと考え、コンプライアンス推進委員会もそれ(内部通報がデマであること)を認めた、ということが前提となっていると、こう物事が進んでいると考えるのが妥当ですね。

ていうか、最初、そう思ったわけですよ。

じゃなきゃ、ノーマルに考えて、「通報者の責任追及」なんて発想、出てこんでしょ。

しかし、である。

《謝礼金問題について、同大は昨年11月に通報を受けてコンプラ委で調査。3月に「謝礼が一部存在していた」などとする報告書をまとめた。》

うーむ。

申入書を出した人たちは、「コンプラ委の報告書は誤りである!」と主張しているのだろうか。

であれば、内部通報者云々よりも、まずはそれを主張すべきだろう。コンプラ委の報告書は誤りであるということが前提にないと、内部通報者の責任云々は出てこないと思うが。

あるいは、コンプラ委の報告書(の一部、少なくとも核心部分)は事実と認めたうえで、こういう申し入れをしているのだろうか。

もし、細かな事実関係において「悪意によって歪曲」されたと思しき部分があったとしても、今回問題となっている「医学博士号をめぐる謝礼金」、その一点が事実であるならば、そしてそれが不正な行為であるならば。

こういう申し入れをする人たちの神経は、ちょっと理解を超える。

……お医者さんになる人って、お勉強ができたんだよねえ。お勉強の出来と倫理意識の強さが相関するわけじゃないけど、でも、お医者さんを志す人って、高い倫理意識の持ち主が多いんだろうなあ、と、漠然と思ってたんだけどなあ。

でも、そうか、手術中に「あちゃー、失敗!」となっても、患者さん側にはそう言わない、というのも、同じような構図か。あ、これは、誰かのことを言ってるんじゃなくて、『白い巨塔』の話ね。



ジョージ・パッカー『イラク戦争のアメリカ』(みすず書房)読了。



600ページの大作。読み応えアリ。4200円(本体)という値づけも、まあ妥当か。

しかし、アメリカ、大変です。なんだか気の毒になるくらい。おれに気の毒がられたくないか。

アメリカが攻め込んだ後、イラクのいわゆるインフラはガタガタになりましたが、その復興資金はどうなったか。

《議会は、一八四億ドルのイラク復興費用を含む、八七〇億ドルの歳出法案を大急ぎで可決した。(中略)歳出法案可決から一〇カ月後の二〇〇四年八月になっても、一八四億ドルのうち四億ドル――およそ二パーセント――しか支出されていなかった。ごく一部を除く大半の金が諸経費、警備(契約のおよそ四〇パーセントを占めていた)、汚職、儲けに消え、その頃になってもイラクの下請け会社は金をまったく受け取っていなかった。》(p299)

イラク人の懐までおカネが回っていかないと、不満は高まるばっかりで。

……あれ。日本も、おカネ出してなかったっけ。ちゃんと有意義に使われたんだろうか。

どこかのオリンピックのときみたいに、後で何に使われたか調べようとしても、「帳簿は捨てちゃいましたー!」ってなるのかなあ。

そういや、一昨日の新聞だっけ、日本がイラクに作った浄水施設、キレイにはなるが塩水のまま、とても飲めたもんじゃない、現地の人は洗い物に使うだけ、という話が載ってたな。


現場の兵士の述懐。

《士気が下がった理由は、上の指導力だ。(中略)彼らは現地で何が起こっているのか知らされていないようだ。あるいは真実を聞きたくないのか、それとも(この可能性が一番高いが)何が起こっているのか知っていながら、昇進したいので兵士をひどい目にあわせることも厭わないかのどれかだろう。彼らは士気の問題から目をそむけて、兵士に少ない人数で多くのことをさせつづけている。(中略)彼らは深刻なアルコール中毒者のように、問題があることすら認めようとしない。》(p306)

こうなると、負のスパイラルですな。

ところで、「兵士」を「従業員」に置き換えると、そのままビジネス書に出てくる「悪い例」ともなりますね。

つい最近書いたような気もするが、人は見たいものしか見ない。というより、見たいようにしか見ないのか。

《暴動が最初の中心的な集団から広がりを見せるなかで、アメリカの役割を直視するには、まず暴動そのものを直視する必要があった。しかしワシントンでは、ゲリラ戦に対する計画は立てていなかった。ゲリラ戦は、軍のイラク駐留をめぐるすべての計算を狂わせるので、起こらないことになっていた。わざと目をつむった結果、現地のイラクでは、装甲車や防弾チョッキの供給が数カ月、あるいは数年も遅れるという重大で悲惨な事態を招いていた。》(p373)

「起こらないことになっていた」、か。それが起こった瞬間、計画はオジャンになる、と。

これも、ビジネス書によくある「悪い例」ですね。コンティンジェンシープランの欠如、などと言われるところの。

アメリカって、そういう、プロジェクトマネジメント的なところに、最も長けている国のようなイメージがあったんだけど、どうしちゃったんだろう。それとも、先の戦争で日本に勝った後は、どんどんダメダメになっていったんだろうか。