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『サムライとヤクザ――「男」の来た道』と、国語力検定

[2008年03月27日(木) ]

氏家幹人『サムライとヤクザ――「男」の来た道』(ちくま新書)読了。



最後の最後に、実に見事に一冊の内容をまとめてあるので、それを紹介。

《江戸時代の武士は、将軍大名以下幕臣藩士に至るまで、総じて非武闘化の道をたどり、戦士の本分を弱めていく(中略)とはいえ将軍を頂点とする武士階級は、社会を支配し日常や非常時の秩序と治安を維持するために、それなりの武威を必要としていた。(中略)ならば誰が武士たちの武威を支えたのか。(中略)自前ではなく、町の荒くれ男たちに武士の本領であるはずの武威を外部委託(アウトソウシング)したのである。(中略)そして、近代以降、庶民の荒くれ男たちの側にも、俺たちこそ本物の武士の末裔だという自信が芽生えてくる。弱者を救い国を憂う高貴な侠客というキャラクターの登場である。》(p249〜250)

コアスキルをアウトソーシングしてしまったことによる、アウトソース先との力関係の逆転。

……すいません、つい、こなれないビジネス本的言葉遣いをしてしまいました。

《武威の外部委託と、武士における“男としての引け目”が、明治以降たぶん現代に至るまで、サムライを自負する政治家や企業戦士が、アンダーワールドの男たちを毅然と排除できないばかりか、ややもすれば彼らと“共存”し、その力を“活用”する慣習を生んだ歴史的素地だったのではないか。》(p250〜251)

なるほど。なかなか説得力のある議論ではある。と思いましたが。

興味がわいたのは、ヤクザ的なものが生まれたのは近世以降だとして、では中世以前、そういう存在はあったのか、あったとしたらどういう形態をとっていたんだろうか、ということ。

気性が荒くて乱暴な人間はいつの時代にもいたはずだし、かといって、中世以前がずーっと戦乱の世だったわけでもないしなあ。盗賊かな。



同じ本の中から、国語力的に「ほう!」と思った箇所を。

江戸時代の武士の気配り術(というか、無益な争いを避けるための心得)として、以下のようなことがあった、と紹介されている。

《(諸大名のお供や奉公人で)混み合う「下乗」から先では、人を除ける際にも注意が必要だ。手の表(掌)で押すと「突」になり、手の裏(甲)で払うと「除る」になる。表と裏では大違い。手のひらで突くと相手を刺激して喧嘩の原因になるが、手の裏でなら少々強く当てても許されるだろう。》(p141〜142)

なるほどなるほど、確かにね。

混んだ電車とかで「ちょっとスイマセン」と降りるときも、手のひらで人を押すよりも、手の甲で押すほうが、「スイマセン」感が出ますね。

どこかのネタで使おうっと。