自由を奪われた瞬間に、
自由から遠くなっている自分をはじめて実感する。
そのときには、もう自由はない。
診察が始まった。
この日の夜間外来の医師は、
若くてきれそうな感じの医者。
名探偵コナンのような風貌。
症状を説明する。
どーーーーも、いつも、
医者への、この「症状の説明」が苦手だ。
痛みの様子が、うまく説明できない。
キューーっと痛む。(うーーん、そんな長くないな。)
シクシク痛む。(もうちょい激しいかな。)
ズキズキ痛む。(そんなに鼓動してる感じでもなくてー。)
ジジジグージジグーと痛む。(これ、近いんだけど、言ったらびっくりするよな。)
と、いろいろ候補が出ては消えて、
結果、「なんか痛いんです」と「なんか」で処理する。
床屋で「どうしますか」と聞かれて、
「あ、全体に短い感じで」と答えるときと同じ。
自分のことを説明するのがヘタだ。
さて、診察。
痛みの原因を知るための血液検査と尿検査。
⇒血液検査で「炎症」の反応が正常値の30倍以上と判明。
⇒より詳細を見るにはCT検査が必要。
⇒医師の説明により同意。
⇒CT検査を行う。
あれーーー、薬もらって帰るだけのはずが、
オオゴトになってないか?
ここですでに未知の領域。
CT検査の結果、
輪切りにされた内蔵の写真がペタペタと貼られる。
コナン、写真をじっと見る。推理。
じっちゃんの名に賭けて(それは金田一だよっ)。
説明が始まる。
「上から順に見て行きます。(中略)
肝臓には特に異常がなさそうです。」
この瞬間、めちゃくちゃほっとしたことを覚えている。
「には」だから、
普通は他に異常のある部位があると察して緊張するところ。
どうやら腸に「ケイシツ」というものがあるらしく、
そこが炎症を起こしているらしく、
その炎症がハンパなレベルじゃないらしく、
でも薬で散らせば大丈夫だということらしく、
でも薬が効かないと手術しなくてはいけないらしく、
コナン曰く
「ニュウインしたほうがいいですね」
え?
ニュウインですか?
「あのー、塾で教えてて明日授業なんですけど、
無理ですか?」
「無理ですね。より悪化します。お勧めできません。」
コナンの決断は早い。
わずかな隙を見て
Z会に電話。
国語担当のKさんにつないでもらう。
「いやーーー、まいったよ、ニュウインだよーーー。」
しばらくして連絡が有り、
代講は伊藤先生にお願いできるとのこと。ほっとした。
塾で教えて20年目で、初めて穴をあけることになった。
悔しい。悔しすぎる。
でも、まだ、
「いやーーー、まいったなーーー、ニュウインだってさーーー」
事態が飲み込めない。
そんな深刻じゃない気持ちのまま、
病院パジャマに着替えさせられ、
病室に連れて行かれ、
針を刺され、ベッドにつながれ、
「テンテキ」が食事になると説明される。