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凍りつく

[2007年12月25日(火) ]

垂渓庵です。

土曜日に終業式を終え、いよいよ冬休みに突入しました。
本の部屋の整理や書棚の整理、本の整理など、
やらねばならぬことはいろいろありますが、
今日はとりあえずお休みです。
何と言っても冬休みなのですから

今回のブログも、面倒な調べ物が要るものは避けることにします。
何と言っても 冬休みなのですから。

今回は 凍りつくような話です。

何と言っても 冬休みなのですから……。

わたしは長らく大阪の東郊に住まいしていました。
小学生のころのことを思い返してみると、
この時期、水たまりの水が凍っていることがよくあったように思います。
それが最近はひと冬の間にそんな寒気がやってくるのが稀になってしまいました。

霜でばりばりになった近所の田んぼで、
やはりバリバリの稲の刈りあとを踏みながらたこあげをしたり、
特に寒い日に裏山に登って、
谷川の水がはねとぶあたりに変なこぶのような氷ができているのを
見に行ったりしたものでした。

冬はさむくなければならない、とわたしは思うのです。
おっと、凍りつくような話でした。脱線していてはいけませんね。

小学校五年生ぐらいのある特にさむい一日。
わたしは近所のヒロちゃん、コウちゃんと一緒に裏の山に行きました。
化石の採集が目的でした。
え、大阪東郊の山に化石が出るのかですって?
知りません。
わたしたちは子供の雑誌で化石の話を読んで思ったのです。

「よし、化石しかない!」
「これからは化石だ!」
「おれたちは天使だ!」

で、石を割る金槌を手に、勇躍、山に出かけたたというわけです。

いやあ、あの日の寒かったこと。
谷川では特に盛大にこぶこぶの氷ができていました。
今日はわたしたちには金槌という武器があります。
わたしたちは化石のことはしばし忘れ、氷をたたき割ったり、
それを川にほうりこんだりと大暴れしました。
もちろん、その不思議な形状を感に入って眺めたりもしたのですよ。

そんなこんなで氷にじゅうぶん堪能したわたしたちは、
化石を求めて山の上の方にあるため池のあたりまで行きました。
中三の時、その池でわたしは塾の仲間と入試前日に釣りをしたのですが、
それはまた別の話です。
その時の塾の先生とまだ付き合いがある、というのもやはり別の話。

とにかく池のそばまで行ったとき、向こうから若い兄ちゃんがやってきました。
細身で手に紙袋をさげていました。
何とも言えない脱力感を身にまとわせています。
人気のない山にその兄ちゃんは何をしに来たのでしょうか。
兄ちゃんはわたしたちのすぐそばまで来て、急に尋ねてきました。

「○○に行くにはどう行ったらいいんや」

○○はわたしたちの小学校のあるところです。
そこからは山道の分岐を途中でそれれば近道になります。
少し説明しにくかったのですが、三人がかりでなんとか説明しました。
と、その男は言いました。

「そうかぁ。わかったわ。ところでお前、おれを殺す気やろ」

殺すも何も。わたしたちにそんなつもりなどまったくありません。

「いや、そんなつもりはないです」

「いいや、その金槌でおれを殺す気や」

運悪くその時金槌を持っていたのはわたしです。背筋がぞわぞわしてきました。

と、男の方からプラモデル作りの時におなじみの臭いが漂ってきました。
おそらくシンナーです。
その瞬間、わたしはひらめきました。

「こいつ、いっとる」

両隣の二人も気づいた様子です。
わたしたち三人はパニクってしまいました。
どう切り抜けたらいいのか。
どうにも山や田んぼのなかで育った小学生三人には荷の重すぎる状況です。
荷といえば、男の持っている紙袋には何が入っているのでしょう。
急にそれが心配になってきました。
わたしは一瞬思いました。

ヒロちゃんとコウちゃんを男の方に突き飛ばして、
自分は逆方向にダッシュする。
そんで人里まで下りて応援を呼んで戻ってくる。……。

いや、だめです。
それではヒロちゃんもコウちゃんもどうなってしまうかわかりません。
それに、もしも運よく二人を助けられたにしても、
自分にはずっと嫌な気持ちが残るだろう、と本能的に感じていました。
何とか男にわかってもらうためにしどろもどろの説明を繰り返しました。
両隣の二人も同じです。

そうしてしばし説明を繰り返した後、男に背を向けわたしたちは帰路につきました。
男の視線を背中に痛いほど感じながら。
どうしても早足になってきます。
最後には駆け足になって山を一気に下りました。

わたしの家に着いた後、わたしは思い切って二人に自分の思ったことを告げました。
そのまま黙っているのは何とも気持ちが悪かったのです。
と、二人も同じことを一瞬考えたと言ってきました。

「こいつらを男と対決させよう。金槌もあるし大丈夫やろう。
で、自分はダッシュで逃げて人を呼んでこよう」

でも、やっぱり二人ともわたしと同じ理由で思いとどまったそうです。
わたしたちは思い切り笑いました。

それにしても、あの兄ちゃん、実際にシンナーでいっていたのでしょうか。
それともたちの悪い悪ふざけだったのでしょうか。
わたしはあの時の寒さよりも、一線を踏み越して二人を残して逃げていたらと、
そちらの方に寒けを覚えます。

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