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折々のうだうだ

[2007年12月03日(月) ]

垂渓庵です。

「名詮自性」ということばがあります。
いや、わたしが自慢げに胸を張って「あります」などと言わなくても、
一般的なことばとして存在するわけですが。

「名は体を表す」というような意味のことばでした。

「名は体を表す」。それはそれである種の真理を突いているように思います。
ジャイアン、ジャイ子。いかにも彼らにピッタリです。
バイキンマン、食パンマン。それ以外にはありえません。
シャア・アズナブル、ミハル。ガンダム世代にはたまりません。
……。

しかし、逆の場合もあるのではないかと思ったりもするわけです。
「名は体を規定する」とでも言えばいいでしょうか。
名前がそのものの本性・性質を形作る、というような場合です。

「名詮自性」をもじって言うなら、「名先自性」とでも言えるでしょうか。
「名は自らの性に先だつ」というわけですね。

何のことやらわかりにくいですね。これも例をあげましょう。

たとえばボルシェビキとメンシェビキ。
ロシア社会民主労働党幹部の中では多数派だったものの、
党員全体から見れば少数派だった左派がボルシェビキ(多数派)を名乗り、
それに対してメンシェビキ(少数派)と呼ばれた右派。
結局その名前の通り、右派は党全体の中でも少数派に転落してしまいました。
こんな名乗りをすることによって末路が規定されてしまったと言えるのではないでしょうか。

たとえばどくとるマンボウ。
北杜夫の随筆、紀行のシリーズ名です。
もともと北杜夫にはユーモアの素養があったと思われますが、
自身の随筆、紀行文にこの軽妙なシリーズ名をつけたことで、
彼のユーモラスな側面がより前面に出てきたのではないかと思います。
もしもこのシリーズ名がなければ、
北杜夫はシリアスな側面とユーモラスな側面を、
理想的な形で融合させた作品をもっと多く書いていたかも知れません。
「楡家の人々」のような作品を。

たとえばヴォネガットの「母なる夜」。
こちらは名前ではありませんが、
逆スパイとして親ナチス的言動をくり返していた登場人物が、
結局親ナチス的人物として断罪されてしまいます。
この場合は、外から見たありようによって内実が規定されてしまうわけですね。

何やら先ほどの「名は体を表す」の例とあまりにもアンバランスな気もしますが…。

何が言いたいのかというと、
実はわたしのブログ名にも同じような「名先自性」の傾向がありはしまいか、
と最近思うのです。
あ、わたしが北杜夫やヴォネガットなどと比肩しうる存在だ、
などと不遜なことを考えているのではありませんよ。
わたしが考えているのは、もっとつましいことです(笑)

わたしがもともとこのブログの名前として考えていたのは、
今回のタイトルである「折々のうだうだ」です。
その後、多少の曲折があって、結局「耽読翫市」に落ち着きました。

もちろん、「耽読翫市」という名前は、それはそれで気に入っています。
ネットで検索してみても、ブログ名や記事のタイトル名に
この字句を使っている人は誰もいないみたいですし。
してやったり! ってなもんです。
でも、もしも「折々のうだうだ」という名前にしていたら、
どうなっていただろうな、と思うのです。

「折々のうだうだ」と「耽読翫市」では、印象がだいぶ違うように思いませんか?
「耽読翫市」という名前にしたために、内容はともかくとして、
語りの形式がけっこう四角いものになってしまったような気がします。
もしも「折々のうだうだ」だったとしたら…。
もっとくだけたものになっていたかもしれません。

どちらがよかったのかはわかりません。
「耽読翫市」としたが故に、多少の調べ物が必要なネタが多くなりましたが、
それはそれで作業としては面白いものです。

逆に「折々のうだうだ」だったならば、そんな調べ物をせずに、
もっと肩肘張らずに書くことができたかもしれません。
が、肩肘張らなすぎて、安易な妄言が今以上に多くなった気もします。

いずれにしても、ここまで「耽読翫市」できたわけですから、
これからもこの名前でいこうと思います。
が、せっかく考えついた「折々のうだうだ」が
日の目を見ないままではかわいそうなので、
ここでタイトルに登場させてみたのです。

企画段階でシリーズに与えられた「ベムラー」という仮称を、
初回の怪獣名としたウルトラマンのひそみにならったというわけです(笑)

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