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旧暦2/13 エピグラフ

[2008年03月20日(木) ]

垂渓庵です。

エピグラフとは、小説などの始めに置かれている題辞や引用句を言います。作品全体のはじめに置かれていることもあれば、章のはじめごとに置かれていることもあります。たとえば、堀辰雄の「風立ちぬ」では、作品の冒頭に、

  風たちぬ 我生きめやも

というポール・ヴァレリーの詩が原文で掲げられています。堀辰雄はヴァレリーの詩にインスパイアされて『風立ちぬ』を書いたのでしょうか。何やらエピグラフを使うと高級な香りが漂い出しますね。

さっそく試してみましょう。たとえばわたしのこのブログ。言わずもがなのことばかり書いているわけですが、その始めに次のようなエピグラフがあったとしたら…。

  たいせつなのは
  自分がおもしろいことを
  やってのけることだった。    石毛直道

えーと、あまり高級感が漂いませんね。どうも居直っているような感じになってしまいます。
石毛さんには何の責任もありません。わたしの文章がそう感じさせてしまうのです。

エピグラフは、使う側の文章やセンスがよくないと、噴飯ものになってしまいかねないということがわかります。これから使おうと思っている人は注意しましょう。では、以前書いた文章に次のエピグラフを加えてみるとどうでしょう。

  なるほど本のなかからも何かは教わるでしょう。
  しかし諸国を見ればいろいろたくさんのことを教わります。
                        アナトール・フランス

内容的には照応しているだろうと思います。いや、いい線いってるんじゃないでしょうか。
しかし、これだと読書に対するアンチテーゼとしてひろあき君のことを書いたみたいで、読書を否定的に見ている感じになってしまっています。耽読して翫市しているわたしがですよ。

ただ単に、こんなことばがあるから使ってみようというのではダメだということですね。これもやはりアナトール・フランスに責任はありません。わたしの見識不足ということになります。

エピグラフは、使う側の選択眼の高さを要求するということがわかろうかと思います。これから使おうと思っている人はぜひ見識を高めましょう。

どうもあまり感心しない例ばかりになってしまいました。ここらで口直しといきたいところですが、とても長くなってしまいそうです。みごとなエピグラフの例は次回にご紹介します。

石毛直道さんのことばは、『リビア砂漠探検記』(講談社文庫 昭和1979年刊)からの引用です。アナトール・フランスのことばは、『シルヴェスト・ボナールの罪』(岩波文庫 1975年刊)所収の「薪」という作品から引用しました。

諸般の事情により、このブログの更新はしばらく木曜のみとなります。ネタが枯渇したわけじゃないですよ。ストックはゴマンとあります。ただ、月曜の更新が火曜にずれ込んだりしてなかなか安定しませんので、とりあえず木曜のみの更新としておいて、いずれ更新曜日の調整をしようと思うのです。調整がついた暁には週2のペースにもどせればと思っています。

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