[2008年08月28日(木) ]
垂渓庵です。
今でもクワガタ捕りは夏の子供の遊びの定番なのでしょうか。それともクワガタなどは捕るのではなく買うものになっているのでしょうか。
わたしが子供の頃にもクワガタを買ってくれるところがあると聞いたことがあります。当然どこかで売られていたのでしょうが、わたしもわたしの周りの友達も、買ってもらいたいと思うことはありませんでした。裏山に行けば普通に捕れるのですから。
とは言え、あの当時も今のように外来種のカブトムシやクワガタなどが大々的に売られているとすれば、買って欲しいと思ったかもしれません。ムシキングなどなかった当時、外国に多様な甲虫がいるなどとは考えてもみませんでした。「どくとるマンボウ昆虫記」を読んでいながら、うかつな話です。
さて、外国に目を向けることなくひたすら自分達の周辺に意識を向けながら暮らしていたわたしたちは、クワガタの呼び名もひたすら土地の伝統に忠実でした。次に当時のわたしたちのクワガタ類の呼び名を挙げてみましょう。
ゲンジ…クワガタの総称。
ナス…ヒラタクワガタ
ヘイタイ…ミヤマクワガタ
スイカ…大型のノコギリクワガタ
ノコ…小型のノコギリクワガタ
マッカ…コクワガタ
いかがでしょうか。みなさんの呼び方と違うものが多いのでは? こうして書き表してみて一番に目を引くのは、「ナス」「スイカ」「マッカ」という名前です。わたしの地元はもともとは大阪の東郊の農作地でしたので、これらの名前がつけられたのではないかと思います。「マッカ」とは、いわゆるマクワウリのことです。中でも「スイカ」「マッカ」はクワガタの好物の名前をとったのでしょう。
よくわからないのは「ナス」です。なぜに「ナス」なのか。わたしの父に聞いても、気がつけばそんな名前で呼んでいた。「ナス」と名付けられた理由はよくわからないということでした。クワガタの捕れる時期に収穫されるという意味では関連がなくはありませんが、そんな野菜は他にも沢山あります。あるいは、あのつやのある丸い姿がなすびを連想させたのでしょうか。
「ノコ」は比較的見た目に忠実で、他の地域でもその呼称が用いられていたようです。「ヘイタイ」もその見た目のいかつさから名付けられたもののようで、やはり他の地域でもそんな名前で呼ばれることがあったみたいです。ちなみにわたしたちは「スイカ」と「ノコ」は別種と考えていました。角の形がかなり違っていますからね。
「ゲンジ」は武家の頭領ですから、あの戦闘的なフォルムの虫の総称として似つかわしいものではないかと思います。地方によってはカブトムシのことを「ゲンジ」と呼ぶこともあるようです。やはりあのフォルムですし、それはそれで似つかわしい名前だと思います。
それにしても、クワガタ捕りに行かなくなってどれくらい経つのでしょう。暗い時分に山に入ることがなくなってからも、明るい間に行くことはしばらく続いていたはずです。が、学年が進むにつれ、次第にクワガタやカブトムシを卒業していったのです。いつしか裏山に入っていくこともなくなりました。
ごくたまに裏山を歩いてみると、その変化に驚きます。舗装された大きな道がわたしたちのクワガタの木のあったあたりを貫通し、ため池には大規模な堤防の補強工事が行われています。かつての面影はかなり失われてしまいました。が、わたしがあのころのことを思い出しているときは、裏山も昔の姿に帰っています。そこには少年の頃のわたしやヒロちゃんたちがいて、夢中になってクワガタを捕っていることでしょう。
いつかその裏山に行き、少年のわたしやヒロちゃんたちに会えないものか。暑い中そんなことを考えたりしています。
来週は月曜日の更新を予定しています。