プロフィール

毎週木曜更新の予定です

関西の中高一貫校で
国語を教えています。
Z会の模擬試験作りなどの
お手伝いをしています。
趣味は登山、読書、音楽鑑賞
その他です。

最新記事
最新コメント
垂渓庵
旧暦6/23 後悔 (2008年08月05日)
垂渓庵
旧暦6/23 後悔 (2008年07月30日)
垂渓庵
旧暦6/1 灯りまたたく黒門町に (2008年07月30日)
ゴンザレス
旧暦6/1 灯りまたたく黒門町に (2008年07月27日)
垂渓庵
ちぎれる本─和本の話の続き (2008年06月24日)

http://www.zkaiblog.com/jr06/index1_0.rdf

旧暦4/25 直球勝負2.5 真・ユーモア・抒情

[2008年05月29日(木) ]

垂渓庵です。

前回はとんでもなく長い前振りで終わってしまいました。
本題の北杜夫さんの話に入りましょう。というわけで、バージョン2.5です。ついでに表題に「真」の字をつけてみました。おお、幻魔大戦みたいだな、こりゃ。

では、まいります。

小学生のころに話をもどします。

始めてひとりで本屋さんに入って
何を買ったものか判断に迷っていたわたしは、
本棚を前にいたずらに時を過ごしてしまいました。
前回ご紹介した本屋さんの奥さんは、そんなわたしにぴりぴりし出します。
わたしは、奥さんに恐れおののきながら、
あまり厚くも難しくもなさそうな本を適当に選び取りました。
ウブで純真だったわたしは、
とても何も買わずに店を出る勇気がなかったのです。
いや、あの奥さんが昔のままだったとしたら、
今でも何か買って帰るに違いありません。

とにかく、わたしの選び取ったのが、
北杜夫さんの『どくとるマンボウ航海記』だったのです。
全くの偶然がこの出会いをもたらしたのですね。
いや、違うな。あのぴりぴり奥さんがもたらした出会い、か。
何にしても、買うつもりのなかった本を手に、
何か損したような気持ちで本屋さんを後にしました。

そんな買い方をしたものですから、
『航海記』もしばらくは読まずにほっていました。
そんな時に、これも何かの偶然で
『どくとるマンボウ昆虫記』を読んだのです。
これで、はまってしまいました。
嫌みではないユーモア。時にまじる抒情的な部分。
ユーモアと抒情との塩梅がとても心地よいものでした。

それで思い出したのですね。買ったままにしていた本。
あれも北杜夫の本だ、と。
で、読んでみると、こちらもとても面白かったのです。
それ以来、くだんの本屋さんの
新潮文庫と中公文庫の北杜夫さんの棚の前には
常にわたしの姿があるようになったのです。

北杜夫さんの最高傑作はおそらくは『楡家の人々』です。
やはり上質のユーモアと北さんの持つ抒情的な部分が
奇跡的な融合を果たしている傑作だと思います。
北さんは『航海記』でブレイクしたこともあり、
エッセイなどではどうしてもオーバーめのユーモアを
前面に出しておられます。
その分、純文学的な小説ではユーモアが
抑制されるきらいがあります。
時にはシリアスな面が前面に出ることも。

わたしは北さんの持ち味は、
シビアな視線に裏打ちされながらの
ユーモアと抒情との心地よい融合にこそあると
思っているのですが、
それが思わずうなってしまうほどの見事さで
達成されている作品が、
『楡家の人々』だろうと思うのです。

『どくとるマンボウ航海記』がブレイクしたのは、
北杜夫さんの経済的にはよかったに違いありませんが、
『楡家の人々』のファン的には
ちょっとした損失だったかもしれない、
と思ってみたりすることもあります。

思えばファンになってすでに三十年が過ぎました。
最近は目を通さないままのエッセイ集もいくつかあります。
これを機会に何冊か買って読んでみようと思っています。
今ではそんな怠惰なファンのわたしですが、本棚には
『昆虫記』以来買い集めた北杜夫さんの本がぎっしり並んでいます。
北さんはやはりわたしにとっては特別な作家なのです。

コメント

Z会のSNS パルティオゼットならもっと多くのユーザーで交流を深められるよ!コチラから参加しよう
名前 : 
Email : 
URL : 
クッキーに保存

小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク

>わくわく田中さん。

「マンボウvs狐狸庵」という対談集もありましたね。今あんな風に小学生までも肩入れする作家は、誰になるんでしょうか。
Posted by:垂渓庵 at 2008年06月19日(木) 09:41
「マンボウ対狐狸庵」ですね。私もマンボウ派でした(遠藤周作も読みましたけど)。
小学生がそういう派閥争いに参加してたんですから、今から考えるとすごいですよね(自分が特別文学少女というわけではなかったような)。
Posted by:わくわく田中 at 2008年06月07日(土) 15:41
田中さん、どうもです。
ご返事が遅くなってしまいました。
残念ながら楡家のドラマは見ていません。
小林桂樹が主演した「優しい女房は殺人鬼」のドラマ版なら見たことがあるのですが。

かつては北杜夫派と遠藤周作派が截然と分かれていたそうです。わたしは北杜夫さん一筋というわけではありませんでしたので、筋金ならぬ針金入りの北杜夫派です(笑)
Posted by:垂渓庵 at 2008年06月06日(金) 20:58
「楡家の人々」田中も好きです。
NHKでドラマ化されていたのは御覧になりましたか?
ポートワインを氷にかけて食べているのが
子供心にそそられましたが。
Posted by:わくわく田中 at 2008年05月29日(木) 19:50