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垂渓庵
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垂渓庵
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旧暦5/16 木を植えた男たち

[2008年06月19日(木) ]

垂渓庵です。

『木を植えた男』というアニメーションがあります。吹き替え版は三國連太郎さんが語りを担当しています。もとはフランスの作家ジャン・ジオノの短編をフレデリック・バックがアニメ化しました。
ご存じない方のためにあらすじを説明しましょう。

語り手が、徒歩旅行中に木などが生えていない不毛の山地を通りかかりました。その土地に住む人々の心も荒れすさんでいました。そこに一人の羊飼いがいました。彼は荒れ果てた大地にたった一人で木を植え続けていました。彼は黙々と木を植え続けたのです。大きな戦争をはさんで、語り手が再びその地を訪れてみると、そこは木々の生い茂る楽園のような地になっていました。

わたしは大学生のころにこのアニメを見てけっこう感動したのですが、今回はこの作品の魅力について語りたいのではありません。上のあらすじを念頭に置いて、次の話を読んで下さい。

「明治の末から大正のはじめのころにかけてのことだった。会津若松の古い商家の主人、遠藤現夢という人が、この裏磐梯にやってきた。噴火での不毛の地となった高原をながめ、私財を投じて松の木の植林をはじめることを思いついた。このあたり一帯に数十万本の松を植えたというからなみのことではない。はじめ村人はだれひとりとりあおうとはしなかった。しかし、不自由な生活にたえながら、黙々と植林をつづける夫妻の姿に、心うたれ、植林を手つだうものがしだいにふえていった。裏磐梯高原が赤松の生いしげる美しい緑につつまれるようになったのは、じつに、このときの遠藤翁らの熱意によるおかげなのだよ。」

アマチュア天体写真家の泰斗、藤井旭さんの『星になったチロ』(1984年 ポプラ社刊)から引用しました。

わたしは中学のころにこの遠藤現夢の話を読んで、すごい人だなあと思いました。その後は忘却の彼方にあったのですが、『木を植えた男』をアニメで見たときに、この『星になったチロ』の一挿話を思い出しました。稲妻のように頭にひらめいたと言えばいいでしょうか。

わたしは二つの話のあまりの一致ぶりに驚きました。そしててっきり遠藤現夢の話の方は、『木を植えた男』に触発された創作なのだろうと思いました。逆の影響関係は考えにくいですからね。今回もそんな方向でこの稿をまとめようと思っていたぐらいです。

それで、両者の成立事情を探る手がかりがないかとネットで検索をかけてみると、なんと遠藤現夢は実在の人物だったことがわかりました。びっくりです。ウイキペディアにはこうあります。その他にも遠藤現夢の事績を伝えるページの多いこと。

わたしは学生のころに五色沼周辺をかなり時間をかけて歩いたこともあるのに、うかつにも彼の存在を知らなかったのです。遠藤現夢のお墓も五色沼にあるらしいのにですよ。なんとしたことでしょうか。わたしはこの探勝路を歩いたのに…。

軽くうちのめされながら、惰性で『木を植えた男』で検索をかけてみました。すると、なんとなんと遠藤現夢じゃなくて、『木を植えた男』のエルゼアール・ブッフィエの方が創作だったということがわかりました。二度ビックリ、吃驚の沙汰、驚倒の限りです。

わたしが創作だと思っていた話は実は実話で、実話だと思っていた話が創作だった。しかもあると思っていた両者の影響関係なんてものは一切ない…。見込み違いもここまでくるといっそ清々しいものがあります(−−)

まさかこんなまとめ方をしなければならないとは思いもよりませんでした。何事も予断と偏見は禁物だなあと改めて思い知った次第です。あ、『星になったチロ』も『木を植えた男』もどちらも面白いですよ。大きな本屋さんなら置いてあるはず。一度ごらんになってみて下さい。

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