後編まで長々と書いてきましたが、僕が思うところの、現在の2次試験の形態を活かしつつ、教育再生実行会議が指摘する欠点を補う入試の形は、下記です。
補)あくまで2次試験以降に論点を絞っています。念のため。
1.2次試験で記述による解答の割合を増やす
2.点数化される論文試験を課す
3.2までで、各大学のアドミッション・ポリシーに沿った学生を選抜しきれないと判断した場合、その大学においては、2までの合格者を9割~9割5分にとどめ、2までの合格ボーラーライン近傍一定割合をセレクトし、面接または点数化されない論文などの試験を課す
1にするだけで、知識偏重は是正されます(欠点Aの克服)。
2により、アドミッション・ポリシーに近い学生を選抜する問題を設定する可能性が開けますし、論文では主体的なコミットメントも試せます(欠点C、Dの克服)。5教科試験との点数の割合は、アドミッション・ポリシーに応じ、各大学個別に決めれば済むことです。
最後に3により、合格者の多様性も確保できることが期待できますし、1点刻みの試験の代案としての納得性が増します(欠点B、Eの克服)。
これでいいと思うんです。
そして、この形、今の大学入試制度上で可能ですし、近い形で実施している大学も相当数あるはずです。
「2までの生徒に、3を課す」あたりが、「2までで一度合否を決め、それとは別に、3の割合が多い試験を実施する」(現実的な)形態である「分離分割方式」(前期・後期日程での開催)とは異なる提案になりますが。
3について、後編との絡みで少しだけ補足すると、後編で取り上げた面接は、「面接の前までの試験で合格してきた人間を“落とす”ための面接試験」という見せ方をしていますが、上記では「面接の前までの試験で不合格だった人間を“受からせる”ための面接試験」という位置づけで見せています。実態は全く同じなのですが、20歳未満が多数と言う発達段階を考慮すると、点数化されない試験を課す場合には、「受からせるためのもの」という見せ方の方が、現実に無理なく対応できると思います。
以上、教育再生実行会議で挙げられた課題を解決する方法論を考えてみました。
課題解決の案を考える際は、どうしても「制度をどうするか」「手法をどうするか」に話がいってしまいますし、それはそれで仕方がないことなのですが、論を展開する間、あるいは論を普段から考える間、決して忘れてはいけないのは
「大学入試で問う力とは何か。それにはどんなものがあるか。それらの力を問う割合(バランス)はどれくらいか。」
という視点です。ここを忘れてしまうと、それこそ、制度のための制度になってしまいますので…
個人的には
「大学入試で問う力は、学力である。学力とは、学ぶ力のことである。」
と定義できるのでは、と思います。
学力を学ぶ力と定義しないから、学力=5教科の力と(無意識に)定義している人とそうではない人で、論がすれ違う。
入試では学力を問う、と定義しないから、人間力とか主体性とか、別の表現が出てくる…。
本来は、「学力」の中に全部包含されており(このブログの高校生の皆さんは、高い学力を持っている、という見方。そして、この力は、教育再生実行会議で大事にしようとしている力ですよね?)、包含されている中の力を要素分解し、「5教科の能力」「主体性」その他の能力をどれくらいの割合で見る試験が望ましいか、目安を文科省が!?提示し、あとは大学個々のアドミッション・ポリシーに従い、割合を変化させ、それに即した試験を実施する、でいいと思うのですが。
いずれにせよ、繰り返しになりますが
「大学入試で問う力とは何か。それにはどんなものがあるか。それらの力を問う割合(バランス)はどれくらいか。」
と、大学入試の制度設計を考える際は、常に自分に問いかけておかなければいけないことだと思います。
長々と語ってきた、大学入試、2次試験廃止!?の論の最後に…
このニュースが世に流れた時に、「Z会はどうなるんだろう?」なんていう素朴な疑問を持たれた方も、ひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。
僕がZ会社員だから、過剰に意識しちゃっているのでしょうか(笑)
Z会の経営理念。
「わたしたちZ会グループは、「学ぶ」ことにより成長したいと願う人々に対して、
知性・感性を育む教育サービスを提供することを通して、 社会の革新と発展に貢献します。
わたしたちはこの使命を達成するために、お客様にとって最高のサービスを提供します。」
どこにも「5教科の力を高める」とは書いてありません。あくまで現時点において、「5教科の力を高める」商材・サービスを提供した方が、経営理念と会社の存続を突き詰めて考えると、最も良い形と判断しているにすぎません。
大学入試の形が変化したら、それに伴って、提供する商品・サービスの形を変えるだけ。
Z会の経営理念が上記であり、それを理解している社員ばかりであれば、大学入試の形が変わっても、最高のサービスを提供し続けられるはずですし、そうしなければいけない。
強くそう想っています。
2013.10.14 01:16
- カテゴリ :教育のこと