先日、ある教育関係者の集いに出ており、理科学習についていろいろ話している中で、「小学3年生から始まる理科では…」という発言が出た時、
「えっ、理科って、小学1年生からじゃないんですか?」と質問が。
確かに、質問された方は、「高校」の教育に関わっている方(&教師でもない)なので、分からないかも知れませんね。。。
小学1・2年段階で社会と理科を教える教育課程は、1991年度を持って廃止となり、1992年度から新たに
「生活科」という科目が設置されています。
ですから、30歳以上で、お子さんがまだ小学1年生になっていない方は、ほとんどご存じないと思います。
しかし…ある程度お子さんが自立した中学・高校の課程ならまだしも、小学教育課程の教科が「自分のときとは違う!」というのは、若干焦るものですよね(苦笑)。
加えて、生活科は、学力形成においてもとっても大切な教科であり、
Z会小学1年生コースのカリキュラムにおいても、「生活科」に対応する「
経験学習」を設置し(
Z会だけの特長です)、ご家庭を支援しているほど、「重要!」とみているのです。
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「生活科」を重要視する理由、それは、学習指導要領の「生活科」の「目標」に書かれた文章に表れています。
「具体的な活動や体験を通して、自分と身近な人々、社会及び自然とのかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生活について考えさせるとともに、その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、自立への基礎を養う。」「自立」。学力形成においてとても大切な態度であることはお分かりですよね。
では実際に、どのような具体的な子どもの姿を想像して授業が行われているか―
ここでは、平成23年12月に、
横浜市立本郷台小学校にて行われた研究発表会の資料を紹介します。
◆研究主題「豊かにかかわりながら、考えを深める子の育成~子どもの学習意欲を高める授業づくり~」
これが研究主題です。
「かかわること」と「自立すること」…言葉の表層だけ捉えると、一見矛盾してそうですよね。
しかし、上述の「生活科」の「目標」の文章では
1.具体的な活動や具体的な活動や体験を通して
2.自分と身近な人々、社会及び自然とのかかわりに関心をもち、
3.自分自身や自分の生活について考えさせるとともに、
4.その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、
5.自立への基礎を養う。
と分解でき、「かかわること」で(1)、「様々な関心や能力を身につけさせ」(2~4)、そして「自立」する(5)ことが明確に表れています。
自分一人で好き勝手に生きていくことが「自立」ではないんですよね。
社会や自然とのかかわりを意識し、把握し、大切だと捉えながら身を立てるのが「自立」なんですよね。※だから
Z会の経験学習でも、親子の「かかわり」を重視し、親が自然にお子さんにかかわれるキッカケ的な教材構成になっています。
本郷台小学校では、平成22年度の授業研究を振り返り、こうまとめています。
「昨年度までの取組の中で、子どもが興味・関心をもってくりかえし人・もの・こととかかわると、問題を追究する意欲が連続していくことがわかった。そして、学習意欲が高まると、子どもは自分の考えを相手に伝えたいと切実な思いで表現することも分かった。
このことから、人・もの・こととかかわる中で、「どうしても調べたい」「なぜだろう。ぜひ~してみたい」と思えるような
切実感のある子どもの問題が成立すれば、問題を追究する過程で子どもの考えはさらに深まっていくと考える。」
切実感のある子どもの問題、これをキーワードにしています。
◆研究内容と方法1.単元構成の工夫
2.個の追究の保障
3.子どもの実態に合った言語活動の充実
の3点が掲げられ、この3点が独立せず、関係しながら、「豊かにかかわりながら、考えを深める子」の育成に向かっています。
1の「単元構成の工夫」では、子どもの興味・関心に沿って題材を選定する、子どもの問題を吟味する(=子どもが見通しを持ち、本気で追究する問題設定ができるようにする)、などに注意が払われます。
最初に「切実感のある子どもの問題」を「引き出す」ために、子どもの心理に寄り添うことが大事と言うわけですね。
2の「個の追究の保障」では、子ども一人ひとりの思考の流れを把握し、解決の見通しがもてるように支援する活動が行われます。
子どもの興味関心が一人ひとり異なるわけですから、それに応じた対応、そして、「彼らの理解できる言語表現」にて次のステップに進めることが大切です。
3の「子どもの実態に合った言語活動の充実」では、友だちとのかかわり、集団での学び合いのあり方による考えの深まりが見られるようにします。
2で先生から「かかわり」、そして3で友達、集団で「かかわり」を持つようなイメージでしょうか。
本場面では「友だちとの意見の比較」も重要視されています。
以上のようなステップを踏むことで、再度「切実感のある子どもの問題」が、1以前の問題とはレベルも次元も違う形で、子どもたちの心の中から浮き上がってくる…これが「自立」につながる過程です。小学校低学年保護者の方で、「一人で学習させる」という形だけに拘り、保護者が関わらず一人で机に向かう姿だけを見て安心する…という状態では、実は「自立している」ことにはつながらない(単に「親が構っていない」だけ)ことがお分かりになるかと思います。
また、「保護者がラクしたい」という気持ちの裏返しとして、「一人で学習させる」形へと子どもを過剰に誘導する方もいらっしゃって…これではやっぱり、好ましい成長過程を描かないと思うんですよね…(もちろん、過干渉になるのも違います!)。
◆本郷台小学校、およびZ会小学生コースの具体例小学1年生の「生活科」の授業「わたしとかぞく」(単元名)において、次のような構成を考えたクラスがありました。
上記1に対応するものとして、「家族のすごいところを見つけて、みんなで家族自慢大会をする」「家族の笑顔を増やすことやお手伝いの実践を学級目標と関連させて“キラリン作戦”と呼び、進んで実践することを応援する(キラリン、という、親しみやすい言葉にするのもコツ)」。
2には「“個表”を活用する」「活動時間を十分に確保する(これにより、ゆっくりと熱心に活動を行う姿勢が担保されますね)」
そして3では、「1の内容をどんどん書き出し、見せ合う」「お互いの活動から気づいたことを自分のカードなどに書き、みんなで振り返る時間をとる」「家に帰って家族で話すことに誘導する」、と続きます。
Z会の経験学習では、たとえば「家でパーティーを開こう!」という題材を作り、ケーキ作り(とそれに伴う準備)の経験を踏んでもらおうとすることなど。これが1の段階。
2では、活動結果を添削者の先生に報告する誘導がありますので、ここで添削者の先生が個別にフィードバックしています。
そして3では、題材の中で適宜「保護者」とかかわりを持たせる工夫を施していますし、「家でパーティーを開こう!」の会では、「お友達にパーティーに呼ばれたとき」を想定し、友だちのおうちの人に挨拶をしたり、使ったものを片付けたりするマナーについて、「教材のなかで」自然な形で紹介しています。
これらがすべて、学力形成において最も大切なものの1つ「自立」へとつながり、「自立」した姿勢を持って中高へ続く高度な学問習得を容易にさせるのです。いかがですか?
「生活科」って、ほんとによく考えられた教科ですよね。子どもたちに寄り添って、実践している先生の皆さんには、ほんとに頭が下がります。
上述しましたが、「かかわらないこと」で「自立する姿」なんて生まれません。
自立するまでは「かかわり」が大切なのです。
小学生の保護者の皆さん、中学になるまで、お子さまのサポートをしっかりお願いしますね!