前編の続きとして、部会を傍聴し、書き留めた、各委員の発言をご紹介します。
※高大接続特別部会の委員は名簿の通りで、今回出席されていた委員は、安西部会長の他、相川、生重、浦野、及川、勝、小林、近藤、垂水、濱口、濱名、山本、吉田の計13名の委員でした。
正確な議事録(発言録)は、後日、
高大接続特別部会 議事要旨・議事録・配布資料にて公開されますので、そちらで確認してください。また、あくまでも書き留めたメモを元に記述していますので、解釈のずれなどが多少あるかもしれません、ご容赦ください。
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○高橋教育再生実行会議担当室長(教育再生実行会議での検討事項の説明)
・6月以降に教育再生実行会議にて検討されてきたことを受けての部会である。
・先日第四次提言が出されたが、第三次提言までと異なるのは、本部会の安西部会長が会議に出席し、これまでの中教審の検討事項を説明し、それを受けて第四次提言にいたる検討がされた、ということ。
・人口減少社会で、人という資源の最大活用は大切。だから教育の役割も今まで以上に大きい。
・現在の大学入試では正当な評価ができていないと思われる。
・マスコミは大学入試のシステムに注目しがちだが、本来は大学教育が、高校教育が、(いずれも)どうあるべきか、が先。
・大学入試センター試験のあり方のみがクローズアップされた報道は、議論の反映の正確性をやや欠いている。だがそれだけ大学入試の話題は、世間が注目しやすいのも事実。
・大学入試が高校時代の能力を養成する歯止めにならない時代になってきている。
・高校教育で身につける力・身についた力の明確化が必要。そのための達成度テスト。
・基礎レベルは小中で行われている全国一斉学力テストのようなものだが、実際の大学入試の推薦入試やAO入試で使われることを想定しているあたりが異なる。
・学力を問わない推薦・AO入試の濫発で大学生の学力が崩れている、それを止めたい。
・本来は達成度試験に強制力を持たせ、実効性のあるものにしたいが、法的に難しいので、受験を促す形に。すべての高校生に義務付けよ、という会議メンバーの意見もあったが、高校生の多様性を尊重した。
・基礎レベルで直ちに卒業認定や大学入試資格を与える、ということはない。
・大学での人材育成を強化させたい。「大学でもっと勉強せよ」というメッセージを出したい。
・大学卒業(出口)時点でしっかりした人材の輩出を。入ることより入ってからが大事。
・達成度テストにおいて、センター試験と異なるところは、「複数回受験」と「(1点刻みではなく)段階別評価」の2点をイメージ。
・ただし現在のセンター試験は、50万人が同時に一斉に受けるという、世界に類を見ない大変なシステム。複数回受験も関係各所に負荷が増大するという問題点がある。制度設計上の課題。
・達成度テストを「いつやるか」(1月以外か)、「どの科目でやるか」などは(再生会議では)決めていない。制度設計は中教審で専門的な見地から考えて欲しい。
・以上の案に総論で反対する方はほとんどいない。だがコストの問題がある。だから国もできるだけ補助していく。
○濱名委員
・提言は、暗記型試験(ペーパーテスト)の対極に多面的・総合的に見る細やかな試験、というイメージに映るが、対極の例として挙げられているものはすべて推薦・AO入試で実施されているものばかり。(変えることによる)効果はあるのか?
○高橋室長
・ペーパーテストが一切いかん、という議論ではなかった。ただ、ペーパーだけでは限界がある、という話。
・全面的に変えるわけではなく、(多面的・総合的に選抜する試験を)「大幅に増加」させるという提言。大幅、というのは、私見だが、全体の2~3割というイメージ。
○浦野委員
・提言に違和感はない。大学に入る人に意欲がないのが問題。学ぶ側の学ぶ覚悟についての言及が必要では。
・専門高校の生徒にも配慮した仕組みにして欲しい。
○高橋室長
・仰るとおり。また、達成度テストでできないことは2次試験と組み合わせることも想定している。
○吉田委員
・センター試験を廃止し、(以前議論されてきた)高大接続テストもやらず、達成度テストにする、という前提なのか。
・達成度テストは強制ではないそうだが、「なるべく受けて」という指示を出されると、受験する側は疑心暗鬼にならないか。
・当然高校教育のカリキュラムも変わっていく。センター試験を見据えると暗記型学習の面が(結果的に)強くなるが、変わるとなると…。加えてTOEICだのなんだの、多様性に応えようとするが余り、生徒側が迷子になることが懸念される。
○高橋室長
・それらのことはこれから議論すること(そして、課題解決に向かわせなければいけない、というニュアンス)。
・基礎と発展を一つにまとめられないか、という議論もあったが、基礎レベルを中心に据えると入試に使えるものにならず、(高度な)学力形成のインセンティブになりにくく、かといって発展レベルを中心に据えると多様性に対処できない(という話で、2つに分けざるを得なかった)。
○垂水委員
・発展レベルは今のセンター試験を変えるようなイメージで捉えいている。今のセンター試験実施すら大学側は四苦八苦しているが、さらに複数回となると…。複数回という主張の強さは。
○高橋室長
・意見の分かれるところであった。社会に出てから一発勝負のこともたくさんあるから、その経験をさせた方がよいのではないか、という意見もあったが、最終的に一点刻みの一回テストで足切りの憂き目にあうのはいかがなものか、という意見が強かった感じ。
○近藤委員
・「幅広い教養」という文言の意味合いとしてどのような議論がされたか。大学では教養に力を入れつつあり、その中で専門性とのバランスを常に考慮しているわけだが。
○高橋室長
・「幅広い教養」=“文理問わない”という意味合いが強い。文系・理系という分け方ではないものへのイメージ。その教養をどう大学の教養課程に接続させるか、までの議論には至っていない。
・今、再生会議では、6・3・3・4制の議論に移っている。この議論の中で、カリキュラムの接続の話が出てくると思う。
○及川委員
・基礎レベルは幅広い学力、発展では大学教育に必要な能力、と捉えたが、この二つは重なっているのか重なっていないか。
○高橋室長
・基礎レベルが新たに導入する試験というイメージで、発展レベルはセンター試験をベースに考えており、2次試験との併用を想定している。ご指摘の部分ほどの細部まで文言(や境目)の検討はしていない。
○安西部会長
・一本線の教育から、できるだけ多様な子供達に対応して行きたいという趣旨と捉えた。
○田中室長(高等教育政策室長)
・達成度テストは、センター試験の改善という位置づけ。
・基礎レベルは高等学校教育部会で議論される。
・高校教育の質の向上と大学教育の向上、そのための接続(としての大学入試)はどんなものがよいか?が検討すべきことである。
・多面的、総合的に評価、判定する大学入学者選抜とは?という議論も必要。
・アドミッションポリシーの明確化を、学校教育法で義務付けた。
・国公立は小論文を八割近く取り入れておるが、ほとんどが後期試験という実情。
・多面的、という観点はAO入試で(測ることを)期待されている。その例として、東北大学工学部、SFC、九州大学21世紀プログラムがある。
・(アメリカの)SATは高校での学習状況を重視している
○濱名委員
・いくら新しいテストが理想的なものであっても、使いやすいものではないと(大学側は)移行しない。
・言語能力や数的思考力などの育成は先延ばしできない課題である。
・東北大学などの例をあげられているが、いずれも少人数だから実施が可能になっている。大人数では…。
・AO入試を否定しながら、AO入試に近づく提言になっていないだろうか。
・教育そのものを変えて行くのが先。
○浅田課長(高等教育企画課長)
・入試をどうするかに目が行きがちだが、高大接続の課題は入試選抜制度だけではない。
・入試そのものに着目すると、入試もペーパー試験だけではない。その例として新テストを提示した。
・(濱名委員の仰るように)より望ましい教育の形は何か、を考えるのが先。
○安西部会長
・「多面的、総合的に評価とはなんぞや?」を具体化するのが本部会の使命と捉えている。
○相川委員
・高大接続は、発展レベルの試験で、という認識。(大学を受験しない)すべての生徒も基礎レベルはできる、というのが前提だと捉えている。
・早ければ5年後に実施、という報道もあるが、制度が先の問題でもなく、カリキュラムが対応しているかも考えなければいけない。
・縦割りで決めて欲しくない、横の連携を希望する。
○浅田課長
・高等学校教育部会で議論もしている内容。横の連携も大事。場合によっては会議を一緒にやることも考えている。
・下村大臣から「このテーマは拙速はいけない、丁寧に。」と言われている。子供達含めて関係者にどう影響が出るかを十分考慮する。
○安西部会長
・大学入試選抜制度だけで議論してはいけない。
・高校教育、大学教育、高大接続、三位一体での変革が必要。
・高等学校教育部会の方で、来年三月までに何かすると聞いているが…。
○小林室長(教育制度改革室長)
・(安西部会長の最後の発言を受けて)目標がないといけないので、年度末までに出したい、ということ。4次提言の内容検討も含めて。
・ただ、非常に難しい提言で、年度内は難しいかもしれない。
○濱口委員
・濱名委員をなぞる意見だが、毎年55万人を超える入試制度の変更と、2、30人対象のAO入試を並列で参考にしても…。
○田中室長
・CBT方式で、言語能力などのコンピテンシーを見ることで、センター試験の不足を補えることも期待されている。
・ただし、CBT方式の場合は問題数が5万から10万のストックが必要。インフラの整備も含め、とても時間がかかる
・言語能力や数理能力を測る試験の研究開発を実施中。モニタリングもしている。濱名委員の大学でもご協力を戴いている。
○山本委員
・(感想ですが)各大学が個性的になればなるほど使えなくなる(達成度)テストと感じた。
・センター試験と入学後のGPA(成績評価値)との正の相関がなかった。
・(アメリカの)SATは、過去の大学入学者の行動を分析した上で、(SATという)選抜試験に生かし、正の相関ができるように持ち込んでいる。
・高大接続は、大学選抜ではなく、大学と生徒とのマッチングの問題。
○生重委員
・山本委員の仰るとおり。
・今の小学、中学の学びで本当に「理想的な子供」になるか、ここが大切で、入試制度が云々ではない。どんな人材像を望んでいるか、ここが最大の力点。
・少子化に伴ってどういう人材を望んでいるのかが大事だという情報発信をしていって欲しい。
○小林室長
・入試の問題ではなくどんな人材を求めているか、である。
・大学がしっかり明示するべきところもある。
・大学の経営上、学力がない人を合格させてしまっている、こうならないようにするにはどうしたらいいか、は、基礎レベルの運用と一体化して考えるところもある。
○吉田委員
・これまでの提言で、一次、二次の、いじめ問題や教育委員会改革の提言はスピードをもって対処することが大切。
・三次提言の大学改革は、提言を受け入れた大学がやればいい。
・四次提言にはセンシティブな問題もいろいろ含まれている(ので慎重に)。
・なんで今まででの入試ではいけないか、という実証がでているのだろうか。
・提言を受け入れなきゃいけない、ということはありませんよね?
・教育再生実行会議のことは全部やらなきゃいけないとは思わない。
・それとは別に、今の学校で預かっている子供達をどうするか、は、喫緊の問題。
○安西部会長
・中教審と実行会議は敵対するものではなく、両輪である。
・これからの時代の教育のあり方をスピード感を持って決めなければいけない。
・制度論そのものの話とはやや違う
・大学入試選抜だけをとりあげてはいけない
・みんなでいっしょにやりましょう!(多くの委員が頷く)
○勝委員
・(入試という)入り口が変わると高校教育が変わるから注目されている。
・大学教育が変わるには、企業との連携が大切
・多面的な評価、というが、面接やインターンシップの評価などによる入試はすでにやっている、しかし、それが55万人に適用できるのか?
・達成度テストで議論すべきは基礎レベル、これがどんなものか。
○高橋室長
・具体的なイメージはできていない
・規模については制度設計の問題。テストを2つ受けるかそうではないか、や、浪人生はどうするか、など。
○濱名委員
・センター試験は導入時、3年前予告に予告し、問題作成に2年間かけている。
・コンピテンシーが高い人材を企業が求めている。
・先延ばしになっているコンピテンシー型テストの開発を急ぐ方がよいのでは。
○垂水委員
・高校の内申書がどれだけ使えるか、信用できるか。
・内申書を信用できるレベルにあげていただければ、大学側も問題はないわけだが…。
・国際バカロレアは信頼できるから岡山大学で使った。
・何よりも内申書を信頼できるものに。
○浦野委員
・大学教育でのアウトカムを今まで重視してこなかった。
・企業は「その会社で何をしたいのか」求めている、これは昔から変わらない。であれば、大学でも、「その大学で何をしたいのか」を問うところは必要。是非各大学でやってほしい。
○及川委員
・基礎レベルはできるだけ多くの人が受験してほしい。加えて、推薦・AO入試でどれくらい(結果を)使ってもらえるかがカギである。だから、参加する大学が活用しやすいものにしたい。
○安西部会長(まとめ)
・生徒たち、子供たちが生き生きとした人生を送るにはどうあるべきか、から考えるのが一番大事。
以上でご紹介を終えたいと思います。