ご縁がありまして、高等教育総合研究所さん
http://www.kosoken.jp/と月1回くらい打ち合わせをし、様々な情報交換をしています。
本研究所は、多くの大学の学部・学科のコンサルテーションをしたり、新しい大学を作るときのお手伝いをしたり、現行の大学で行われているカリキュラムが適正なものかどうかを診断したり…というお仕事をされており、代表の
亀井信明氏もTV・新聞メディアを中心に意見を発信しています。
先日の打合せで話題になったのは、
「中高生が進学先を選ぶとき、自分の本当にやりたいと思っている仕事にできるだけ近づけるにはどうしたらいいか?」ということです。
中高生の段階では、まだまだ知らない仕事が多いです。
とくに BtoB 企業、つまり、商品やサービスの売り先が個人ではなく法人であるようなサービスにイメージを馳せるのは至難の業でしょう。
毎年発表される「
就職希望人気ランキング」においてコンシューマー向けのサービスを行っている企業(1位から資生堂、サントリー、シャープ、…)がほとんどですしね。
まだ職についていない人が職業を選ぶとき、イメージ先行になるのは仕方のない話です。
大学生ですら上記の「
就職希望人気ランキング」のようになってしまうわけですから、ましてや中高生にいたってはなおさらでしょう。
しかしそこで、イメージ先行が余りにも強すぎて、本人がほんとうに「やりたいこと」との乖離が生まれてしまう学部学科への進学はできる限り避けたいところですよね。
もちろん、高校生までの人生経験で“ほんとうに「やりたいこと」”と定義したものは、実際に就職するまで期間中に、本人自身が成長することや知識を吸収することを前提としておりませんから、学部学科に入ってから“ほんとうに「やりたいこと」”と定義したものとのズレが生じる方がフツウなのですが…
それでも、高校生までに“ほんとうに「やりたいこと」”を探し求め、よいアドバイスを得ながら帰着した学部学科において「ズレ」が生じる場合と、抽象的にしか「やりたいこと」を考えず帰着した学部学科において「ズレ」が生じた場合を比べたら、前者の方が後者よりも圧倒的に「自らの幸せを求めていく過程の中でのズレ」と言えるのではないでしょうか。
つまり、やはり中高生時代に、将来をいろいろ考えておくのは大切なことなんですよね。
たとえば、僕が進学した東京大学工学部都市工学科(都市環境工学コース/当時は環境・衛生工学コース)。
それまで
「環境に関わる仕事をしたい!」くらい漠然とか考えていなかった僕は、とにかく就職先選びに苦労しました。
「環境」の中でも何がやりたいのか、全く定義できていなかったんですね(だから「環境」と名前のついている学科に、無意識に進学しただけなのです…)。
途上国でのODA活用などに従事することも考えました。
環境を良くする装置の開発なんてのもいいですね。
また、国外の植林活動などを援助する企業に就職するという発想もあります。
どれも環境に関係しますよね。
でも、これらのすべての職を検討するときに、当時所属していた学科に所属するのが「最も適切」といえたか、というと、決してそうではありません。
加えて、途中で「環境教育」の考え方に目覚め、軸足を大きく「教育」に移しましたから、結果的に僕は「教育学部」に進学していた方が近道ではありました。
進路選択、そして今の仕事に就いたことは全く後悔していませんが、「もしもう1回やり直せるとしたならば」、教育学部、そして社会教育を専攻したい、という自分がいるのも確かです。
また、ご縁があっていろいろ情報交換させていただいている、早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科。
こちらの学科に進学した学生には
「医療に関わりたい、それも医療機器など、間接的な分野で」
「人としての“生”を考えながら、電気工学の知識をいかしたい。たとえば、太陽光発電とか」などの考えを持った方がいらっしゃいます。
#上記の研究事例
http://www.eb.waseda.ac.jp/2009/applicants/frontline/frontline01.htmlhttp://www.eb.waseda.ac.jp/2009/applicants/frontline/frontline02.htmlしかし、これらの具体的な考え方にたどり着き、進学先をこの学科に定めるのは、なかなか容易なことではないんですよね。
「医療」に目覚めたら「医学部」という選択肢が目に入りやすいですし、「環境」に目覚めると僕と同様、どうしても「環境」の冠がついた進学先を考えますし。
“ほんとうに「やりたいこと」”が、早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科(電生)にあったにも関わらず、高校段階でのリサーチが足りなかったり、将来の深堀りに時間を割かなかったりして、想いと違うところ~上記の例では医学部や「環境」の冠がついた学部~に進学するのは残念なことです。
そこで、親御さん。
子どもが将来の夢を漠然と定めたら、その夢を深堀りできるような環境を作ってあげてください。たとえば、医療関係、と子どもが口にしだしたら、
・子どもの「ホンネ」は研究医学なのか臨床医学なのか
・ほんとうは医学の「基礎研究」に興味があるだけなのか
・臨床で人とコミュニケーションすることだけに興味がある、つまり「医学」ではなく「コミュニケーションが多い職業」が先にきているのではないか否か
・看護学の視点から医学に携わろうとしているのではないか
・医療「機器」の方に興味があるのではないか
…いろいろ可能性はあります。
そして、それらの可能性を、
子どもに「直接聞く」のではなく、
・会話などから察する
・様々な情報を用意しておく
という態度が大切になるかと思います。※直接聞いても、ほんとうの「やりたいこと」を引き出せないことが多いばかりか、抽象的にしか語れない子どもの夢を壊すことにもつながりかねませんので…
これは、学校の先生を初めとした「まわりの人」にできることではなく、一番本人と接している親御さんだから、できることだと思います。
本人の成長とともに、どんどん“ほんとうの「やりたいこと」”に近づいてきたとき、「それならこういう就職先があるよ。そこに就職するにはこんな学科もあるよ」と、「自分の知らなかったこと」提示してくれる父親・母親…
なんとも頼もしく感じませんか!?
※本記事は、高等教育総合研究所からの情報提供ならびに依頼を受け、大学に関することを定期的に執筆する活動の一環としてしたためています。