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2013.11.14 23:50

政府主導の政策会議である、「教育再生実行会議」が、先の10月31日、第四次提言として「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」をまとめました。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai4_1.pdf
この提言を踏まえ、検討課題を議論する場として、11月8日に中央教育審議会(中教審)の高大接続特別部会(第八回)が開催され、筆者は傍聴してきました。
※配布資料はこちら
 
再生会議と中教審の関係を短く述べれば、再生会議の政策論から見た提言を受け、現在の教育をしっかり把握している中教審の委員が制度設計について議論する、という構造です。
 
報道のカメラは7台、そして傍聴者数は140名。中教審の部会としては異例とも言える注目度でした。
これは、事前に、報道で
 
「大学入試センター試験は5年後を目処に廃止か!?」
「人物本位の試験になる!?」
「えっ、2次試験廃止だって!?」
 
などと受け止められるリリースが次々と出され、大学入試は多くの人にとって「過去に経験した身近感のある話題」であることが拍車をかけ、社会の中で「大学入試が変わる!」という温度感が醸成されていた影響でしょう。
※本ブログ「2次試験廃止!?大学入試で問う力とは」でも取り上げた話題ですので、よろしければご参照ください。
 
 
様々な報道がなされ、そして、その報道内容の「一部」に対し、賛否の意見がインターネット上ではたくさん、ほんとうにたくさん見受けらました。
素人感覚で、感想を述べる、くらいであれば「なるほどねーそんな感想もつんだねー」と受け止めるのですが、“(教育畑の人間からすると)よくありがちな”諸外国の例を持ち出し批判的に述べたり、自分の教育観に基づき偏った、かつ声高な主張には、「多分それらのことは、中教審の委員はよく弁えてますよ」とか「一次情報を見に行っているのかなあ。。。メディアの情報を勝手に解釈していないかなあ。。。」などと感じるものも少なくありませんでした。
 
 
そこで…
提言そのものは上記 pdf の通りですが、実際にポイントとなる制度設計はどんな温度感で進んで行くのか。中教審の皆さんはどれだけ「いま」の教育をしっかり見つめて考えてくれているのか。
 
これらを自分の目で、耳で、肌感覚で確かめるために、僕は傍聴に伺いました(誰でも参加できます)。
果たして、中教審の部会の皆さんは、しっかり、そして誰よりも、教育や入試の現状を把握し、向き合って考えており、素晴らしいと思いました。
 
一例を挙げます。
報道の影響で、「学力を問う試験から人物本位の試験へ」というイメージが脳内にこびりついてしまった方の中で、「今の推薦やAO入試でも面接などのみでの選抜が行われている!しかもそれは、学力がほとんど身についていない高校生を大学に合格させるための仕組みとして使われてしまったじゃないか!」という意見を、ネットでは相当数拝見しました。
…大丈夫です、餅は餅屋で、部会の皆さんは十分そのことを弁えており、かつ、弁えた上で、(大学入試全体を俯瞰した)問題の発見や代替案の提示を行おうとしていました。
当然といえば当然なんですが、これを当然とせず、普通の方より少しだけ(入試の)知識がある、声の大きい主張屋さん(苦笑)が、メディアを流れる情報の空気をつくる場合がありますので、受け手は注意しなきゃ、なんですよね。
世間の空気が、本格的な議論を妨げる場合も得てしてありますので。。。
 
 
では、2時間に渡って開催された、今回の高大接続特別部会(第八回)。どんなことが語られたのでしょうか?
僕の解釈も入り恐縮ですが、ポイントを絞って7点にまとめてみました。
 
 
1.「これからの日本社会にどんな人材を育成することが必要か」を最上位において議論をしている。
 
いわゆる育成ビジョンですね。
メディアの過熱報道の話題になったり、話が横道にそれそうになったりするたびに、安西部会長が本点を強く主張されました。
 
大学入試をどうするか、それは学力評価か人物評価か、云々よりも前に、育成すべき人材像を明確に描かないといけない、と。ごもっとも、です。
 
大学入試をこうすべき!という論をネットその他で見る際には、その論を「育成すべき人材像が明確か?」という視点で見てみると、筋が通った論かそうではないかが分かる気がします。
 
 
2.1のために、高校教育、そして大学教育はどうあるべきか、が次。そして、そのためには、高大接続部である「大学入試」をどうするか、という順序で考えるべき。
 
1、2の論を安西部会長が語られた時、心から「仰る通り!」と思いました。
第四次提言では、大学入試制度の変革にかなりのスポットライトが当たっていますが、そもそもそれも、「大学が育成すべき人材」を適切に選抜することが、現在の入試制度では難しい、という、大学教育を基点にした考え方ですよね。
もちろん、大学教育につなげるための、適切な高校教育も必要で。
 
山本繁委員は、高大接続の問題を、「マッチング」の問題、という例えを使われました。
多様な時代なので、多様な大学教育に、多様な高校教育が必要で、多様性に対応するための大学入試制度の在り方は、まさに「マッチング」を問われます。
 
 
3.1、2の順序ではあるものの、「大学入試」の変革はインパクトが大きいのも確か。
 
1→2の順序で考えることは大切なのですが、1→2の順序で考えると様々な障壁もあり、なかなか検討が進まないこともイメージできますよね。
「大学入試」の変革は、ある意味外科的手法。ここを変えれば、大学教育も高校教育も変わらざるを得ない状況に追い込まれます。
 
 
4.(他の提言とは異なり)本件は拙速はダメ。教育上のカリキュラムの問題を軽視してはいけない。
 
安西部会長が「下村大臣からも、本件は拙速にしてはいけない、と指示を受けている」と仰ったのが印象的でした。
 
教育再生実行会議の第一次提言は「いじめ」の問題であり、これはすぐにでも良くなる処方箋を提示する方がベターでしょう。実行第一のものです。
しかし大学入試の場合、制度を変えても高校教育はカリキュラムを変えない…とはいきません。
ちゃんと高校時代に、「学び」にどん欲だったら、多くの大学教育への道が開ける、でなければいけませんからね。
 
…となると、大学入試制度単独で考えるのではなく、学習指導要領の改訂と同時並行で、慎重に進めなければいけない点が大きいのも確かです。
 
ただし、拙速の反対は巧遅です。功遅を選択しているだけの話で、「どーせ今までとそんなに変わらないものが出てくるでしょ」と、タカをくくっていたら、驚く制度が出来上がると思います。
それだけ今回の中教審の皆さんは本気。拙く速い、ではなく、巧みを磨き極めるために「慎重」を選択しているわけですからね。
 
 
5.制度設計はこれから。
 
政策レベルで、大上段に構えた提言はされましたが、細かな制度設計はまだほとんど決まっていないようでした。
大学には経営問題もあります。理想を語っても、現実には不可能な制度になってはいけません。
 
また、制度といえば、世間の耳目は「達成度テスト」に集まっているようです。
「達成度テスト」を簡単にまとめた資料はこちらですが、その中でも
 
・「基礎レベル」と「発展レベル」の2つのレベルを用意する。
・複数回受験機会を与える。
・試験結果は1点刻みではなく、ある程度の枠で括った段階別に評価する(たとえば1~10の10段階評価、など)
 
が(一般の皆さんは)気になるところのようです。
こちらについての議論は今回ほとんどありませんでしたが(これが「制度設計はこれから」というイメージを持った所以です)、情報が余り届いていないところを補足すると
 
・「基礎レベル」は(中教審の)「高校教育部会」で、「発展レベル」は「高大接続特別部会」で議論すること、とされている。
・「発展レベル」は、今のセンター試験に置き換わるようなイメージ(委員の発言より僕が解釈すると)。「基礎レベル」が、これまでにない全く新しい試験、というイメージ。
・「複数回受験」と理想を提示されたのみで、現実問題は様々な問題をクリアーしなければいけないですし、その問題は他の問題と比較しても大きなものである(委員もそう受け止めているようです)。
 
という感じです。
 
 
6.安西部会長が、教育再生実行会議にも出席し説明している。
 
これが、これまでの第三次提言までと異なる進め方のようです。
つまりは、再生会議と中教審の同期がとれている、ということです。
中教審で制度設計が案として出されたら、政策的にも実現可能性が高くなる、ということになりますね。
 
 
7.「能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する大学入試選抜制度への転換」という視点
 
「 」内は、第四次提言中に出てくる文言です。
これを報道では「人物本位」と表現しているようですが、提言の中にはどこにも「人物本位」と言う言葉はないんですよね。ここは情報に流されてはいけないところです。
 
では、この文言の意味するところは何か。
恐らくは、従来型学力に加え、今回の部会で濱名篤委員が主張していた、「コンピテンシー」を測る試験の導入などを意味するものだと思います。
 
より具体的には、言語運用能力、数理論理力・分析力、問題解決能力を測るための試験、ということであり、これはすでに、実証実験が進められている最中だそうです(文科省の参加者が話されていました)。ただ、形にするまでにかなり時間がかかるものである、と。。
 
いずれにせよ、上記の文言を「人物本位」という言葉に置き換え、さらに「面接」や「ボランティア活動の重視」と過剰に解釈してはいけないわけです。
 
以上、部会で話題に上ったポイントを7点、できるだけわかりやすく示しました。
後編では、委員の発言の内容を紹介したいと思います。
 
 
※高大接続特別部会の委員は名簿の通りで、今回出席されていた委員は、安西部会長の他、相川、生重、浦野、及川、勝、小林、近藤、垂水、濱口、濱名、山本、吉田の計13名の委員でした。後編の議事録について、発言者の氏名・名簿は、名簿を参照して頂ければ幸いです。
 
 
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寺西隆行
ICT CONNECT 21 の寺西隆行です。小松高校→東大理一→工学部環境系→教育の道へ。教育とマーケティングをずっと見つめながら過ごすことが喜びです。
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