表題、第174回国会(常会)にて示されたものを、「文部科学省メールニュース」から転載しておきます。
・教育に携わり
・Webで情報発信している
人間としては、上記所信を出来る限り多くの方に、できるだけそのままの形でお届けすることが大切なことの1つかと思いまして…
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(はじめに)
第174回国会において各般の課題を御審議いただくにあたり、私の所信を申し上げます。
日本は今、様々な困難に直面しています。長引く経済の低迷。国際的な競争の激化。少子高齢化は、世界に類を見ない速さで進み、我が国の形が大きく変わりつつあります。
これまで我が国は、長い歴史に裏付けられた豊かな伝統と文化を大切にしながら、世界的に質の高い教育と、それにはぐくまれた人材の活躍により、科学技術を発展させ、世界の主要な一角を占める成熟した社会を築いてきました。今、我が国は直面する困難の克服に向けて自信と活力を取り戻さなければなりません。そのために何をなすべきか。
このようなときこそ、我が国は「人と知恵」をはぐくむことを国政の中心に据え、未来を切りひらく牽引力としなければなりません。国民一人一人が、自らの持つ潜在的な力を最大限に発揮し、個人と社会の成長につなげ、だれもが幸福を実感できる国にしていかなければなりません。また、厳しい課題を世界に先駆けて克服し、モデルとなる国家像や社会像を提示する国にしていかなければなりません。
私が担当する教育や科学技術は、未来を担う「人」を育て、国の持続的発展を支え、世界に貢献する「知恵」を生み出すものです。また、文化、スポーツは、人々に喜びと感動、やすらぎと活力をもたらし、人間が人間らしく生きることを実感させるものです。
私は、「人と知恵」が輝き、尊敬される国を目指し、文部科学行政の充実発展に全力を挙げて取り組んでまいります。
(教育は我が国の成長と発展の土台)
昨年の12月、私は中央区の泰明小学校と都立文京盲学校を訪問しました。そこには、子どもたちの元気と好奇心に満ちた笑顔、ハンディに負けずひたむきに努力する姿、そして温かく、時には厳しく子どもたちを導く教師の姿がありました。私は、これらを見て、改めて自分の職責の重さを感じました。
今後、私たちはどのような教育を目指すべきか。私は、人間の尊厳と平和、生命の尊さ、真理と正義を大事にする人間の育成であり、感性や創造性に富み、人格の向上発展を目指す人間の育成であり、そして自立と自律の精神、豊かな人間性と公共の精神を持つ人間の育成であると考えます。
このような理念の下で、幼児教育を含め初等中等教育から高等教育に至るまで、学校間の接続と社会との連携を重視しつつ、個々人の潜在能力を高め、様々な分野で活躍する多様で重厚な人材層をはぐくむことが、我が国の成長と発展の土台となると考えます。また、その実現のため、現在、国際的に見て低い水準にある教育への投資をしっかりと確保し、「ヒューマン」「ソフト」「ハード」のあらゆる面において、学校の教育力を高めていかなければならないと考えます。
(学校の教育力を高める)
その中で最も重要なのは、教員の質と数の充実です。今後、教員の資質向上方策の抜本的な見直しについて、学校関係者、大学関係者、保護者等の意見を把握しながら、あらゆる課題について幅広く検討を行ってまいります。
教職員定数については、子ども一人一人と向き合う環境をつくり、新学習指導要領を円滑に実施するため、来年度4,200人の改善を行うこととしています。平成23年度以降の学級編制及び教職員定数の改善の在り方についても、本格的な検討に着手します。
また、教材のデジタル化、ICTの活用、指導方法・学習方法の変革と、変革を支える学習環境づくり、環境教育、コミュニケーション教育など、21世紀にふさわしい学校教育への転換を目指します。
子どもたちが一日の大半を過ごす活動の場であるとともに、非常災害時には地域住民の応急避難場所ともなる学校施設の耐震化は極めて重要です。予算を効率的に執行し、より多くの耐震化事業を行うよう努めるともに、地方公共団体のニーズを把握しながら、耐震化の推進に取り組みます。
さらに、教育への財政措置や地方教育行政、学校運営など、学校教育環境の将来像や整備の在り方についても検討してまいります。
(子どものいのちを守る)
鳩山総理は、先般の施政方針演説において、いのちを守ることを強調されました。「人と知恵」をはぐくんでいく上で、子どものいのちを守ることは最も大事な課題です。
先般、江戸川区で起こった親による子どもの虐待死事件で、私は言いようもない憤りと深い悲しみを感じました。今回の事件では、子どもの変化の把握や、関係機関の連携において問題がありました。二度とこのような事件が繰り返されることのないよう、また、いじめや不登校などの子どもたちの悩みを受け止め、その解決に導くよう、スクールカウンセラーの配置や24時間いじめ電話相談、関係行政部局と民間団体のネットワーク構築など、子どもが安心して相談できる様々なチャンネルを作ってまいります。
(すべての意志ある人に質の高い教育を)
昨今、経済と雇用の状況が悪化する中で、子どもたちが保護者の失業などにより学業を続けられなくなることが心配されています。また、少子化の要因の一つである経済的負担への不安をぬぐい去り、お金を理由に子どもを持つことをあきらめるような社会を変えていくことが必要です。
そもそも教育は、個人の豊かな生活ばかりでなく、社会全体の発展と活性化を実現するものです。したがって、教育は社会全体で助け合い負担するという考えのもと、いかなる環境にあっても、すべての意志ある人が安心して質の高い教育を受けることができるようにしなければなりません。
このため、公立高校の授業料は不徴収、私立高校等では就学支援金を支給することにより、高等学校を実質無償化することとし、予算案と関連法案を今国会に提出いたしました。今春から確実に実質無償化を開始できるよう、速やかな御審議をお願い申し上げます。
また、各大学が実施する授業料減免の拡大への支援や日本学生支援機構による奨学金事業を拡充することとしています。国際人権A規約における漸進的無償化条項の留保撤回も視野に、これらの施策を進めてまいります。
(新卒者の就職支援と社会人・職業人として自立できる人材の育成)
学生・生徒の就職環境は、大卒予定者の内定率が今春過去最低水準となるなど、非常に厳しい状況にあります。若者が自分たちの将来に希望を持てないようでは、国や社会の発展は望めません。このため、今後、政府の緊急雇用対策を踏まえ、関係省庁と協力して新卒者の就職支援に努力します。
一方、若者の非正規雇用の増加や新卒者の早期離職など、学校から社会・職業への移行を巡る課題が顕在化しています。今後、初等中等教育から高等教育までを通じ、社会・職業との関連を重視したキャリア教育・職業教育の充実を進めることにより、社会人・職業人として必要な能力を身につけ、勤労観・職業観を確立した人材の育成に努めてまいります。
(我が国の未来を築く「新しい公共」)
鳩山内閣の基本的な施政方針の一つに「新しい公共」があります。
「新しい公共」とは、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、例えば学校支援地域本部など、地域による教育支援をはじめとした身近な分野で活躍していくことです。
「新しい公共」を実現する上で、学校教育や社会教育を通じ、担い手となる人材を育成することが大きな課題です。また、教育・文化・スポーツは特に「新しい公共」の発展が期待される分野であり、学校や社会教育・文化・体育施設、NPOなどのネットワーク化を推進します。これは、地域の「絆」の強化や活性化にも効果をもたらすものであり、積極的に取り組んでまいります。
また、NPOなど多様な「新しい公共」の担い手の活動を支えるために、寄附文化の醸成や寄附にかかわる税制の整備等が重要です。総理が開催する『「新しい公共」円卓会議』における議論などを踏まえつつ、検討を深めてまいります。
国の政策形成にあたっても、審議会における専門家の議論に加え、現場との対話やウェブを活用した議論の活性化など、現場レベルの意見の吸い上げと自由闊達な議論による熟議を行い、施策に反映します。
(世界をリードする大学の実現とグローバルな貢献)
高等教育については、我が国の将来や世界、そして地域に貢献する機能を充実していくことが必要です。このために、学生の学力や就業力の育成など社会の期待に応える大学教育の推進、多様かつ高度な教育研究活動に向けた大学間連携や人的・物的資源の共同利用の推進、イノベーションの創造に貢献し世界をリードする
大学院の形成・強化に取り組みます。また、社会人が何度でも大学で学び、その成果を社会で生かせる環境づくり、大学の教育研究資源の活用による地域産業の活性化と人材養成についても支援してまいります。
また、喫緊の課題である医師不足解消のための医学部の入学定員の増員や、社会の要請にこたえる優れた医療人の養成、地域医療において中核的な機能を担い、高度医療を開発・提供する大学病院の充実に努めます。
これらの前提として、大学教育を支える基盤的経費である国立大学法人運営費交付金や私学助成等の確保が重要です。これまでの削減方針を見直し、必要額を確保しつつ充実に努めます。また、老朽・狭隘化した施設設備の整備に取り組みます。
アジアにおける国際交流を進める上で、大学が大きな役割を果たすことが期待されています。昨秋の日中韓首脳会談において合意された、質の保証を伴う大学間交流や高度専門職業人育成を推進するとともに、大学間の単位互換などの大学の国際化や、留学生の受入れと派遣の大幅な拡充、若手研究者の交流、国際共同研究の強化に取り組み、今後の東アジア交流やアジア太平洋協力を支える人材の育成と域内の共通課題の解決に長期的視野を持って貢献します。