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小田原城下の制札

[2008年06月10日(火) ]

秋葉原の惨劇後、いろいろな検討が始まっているらしい。
歩行者天国の休止。
ナイフ購入の規制。
派遣労働のあり方についての検討。
それぞれ理のあることと思う。
その一方でまた対症療法に過ぎないとも思う。

江戸中期の京都町奉行所与力が書いた「翁草」という本がある。
信長や家康など戦国時代以降の逸話を集めたものだ。
どこまで史実を伝えているかは疑問だが、読み物としては面白い。
そこに、こんな話が載っている。
旅の僧が小田原城下の制札を見て、
「北条氏も長くはあるまい」とつぶやいた。
町奉行が聞きとがめて、「理にかなわぬ禁令があるか」と問うた。
僧は答えた。
「理にかなった禁令ばかりだ。しかし、30年前に見たときは5条、今見ると30条に増えている。国主に威があってよく治まっているときの禁令は少ない。こまごまとした禁令が必要になるのは、民の心が離れてしまっているからではないか。」
これは4代北条氏政のころの話だ。
北条氏は5代で滅んでいる。

今という時代はどうだろう。
国民主権を自覚するならば、為政者ばかりを責めることはできない。
法は権力や罰則によって守られるものではない。
それ自身が倫理であり公益であることによって守られる。
そう、信じたい。
なのに、人を傷つけてはならないという最も基本的な法が、
かくも無残に踏みにじられている。

危険なナイフは規制されるべきだろう。
しかし、人を傷つける方法はほかにもある。
たくさん規制したから安心が高まるわけではない。
阻害された人の心が凶器と化しているのだ。