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日銀総裁と勘定奉行

[2008年04月01日(火) ]

村井淳志著「勘定奉行荻原重秀の生涯」(集英社新書)を読んだ。
悪評の高い荻原重秀再評価の書である。

5代将軍、徳川綱吉の時代、幕府財政の窮乏は著しかった。
幕府財政の建て直し、大役を担ったのが勘定奉行荻原重秀である。
国内の金銀生産は下降の一途、貿易による流出も大きい。
佐渡金山を再建したが、その効果はたかが知れている。

抜本的な改革が必要だ。
だから、重秀は貨幣改鋳を断行し、通貨量の増大をはかった。
金の割合が高い慶長小判を溶かし銀を多く混ぜて元禄小判を作る。
慶長小判2枚で元禄小判3枚ができる。
その差を出目というが、この出目が財政幕府を救う。
無論、慶長小判のかわりに元禄小判をわたされた人々の不満は大きい。
しかし、貨幣の価値は材質の価値に裏打ちされる必要はない。
1万円札は原料のミツマタの価値とは関わりなく、信用によってその価値を保つ。
貨幣改鋳の目的は通貨量の調整による経済と財政の安定であった。
そう考えれば重秀の策は理に適っている。

しかし、荻原重秀は運が悪かった。
徳川綱吉の死後、後を継いだのは徳川家宣である。
家宣は新井白石をブレーンとしていた。
白石は名分にこだわる儒者である。
聖人君子は貨幣改鋳を許せない。
白石の度重なる弾劾によって重秀は解任された。
貨幣改鋳で私腹を肥やしたと重秀の悪評を書き残したのも白石である。

現代、通貨の番人といえば日銀総裁だろう。
その日銀総裁がなかなか決まらない。
新年度が始まるというのに‥‥。
財政は行き詰まり、金融は混乱したまま。