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あと18ケ月

[2008年09月09日(火) ]

文芸春秋9月号には芥川賞受賞作ばかりでなく、
いろいろな記事や読み物が掲載されている。
「特集日本の師弟89人」もその一つである。
多くは弟子が師を語っているが、逆もある。
ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏は、弟子の戸塚洋二氏への追悼文を載せた。
「思えば一期生で電子陽電子衝突実験を引き継いでくれた折戸周治君が早世したとき、なんとむごいことかと嘆いたのに、今度また二期生で神岡地下実験を引き継いでくれた君がさきだってゆくとは。特に君の場合はあと十八ケ月元気でいてくれれば日本人みんな大喜びさせてくれる可能性も多分にあったと思われるのでことさら残念の極みです。」

ちょうど、佐藤勝彦著「宇宙96%の謎」を読み終えたばかりだった。
この本には、ニュートリノ検出時のエピソードが語られている。
1989年2月24日、大マゼラン星雲に超新星出現を知った著者。
急ぎ電話をした先は、カミオカンデの研究を推進していた戸塚洋二氏だった。
超新星からのニュートリノをカミオカンデが捉えているはず、そう考えたからだ。
しかし、ニュートリノ検出一番乗りをめざしているのはカミオカンデだけではない。
一刻も早く確認したいと著者はやきもきするのだが、
データは宅急便で送られるという悠長さであった。
2月27日には東大で小柴教授の最終講義が行なわれ、著者も出席した。
その後のパーティーでようやく解析が始まったことを知る。
翌日、昼ごろ電話で問合せるとまだ「解析中」との返事。
本当はこの時、すでにニュートリノを検出していたのだが、
小柴氏から論文を発表するまではと緘口令が敷かれていたのだという。

実は、ニュートリノの検出がどれほどすごいことなのか、よく理解できていない。
それでも、著者のもどかしい気持ちが伝わってわくわくする。
私が、よく理解できないくせに量子論やゲノムの本を好んで読むのは、
研究の最先端にいる科学者たちのわくわく感に共感したいからかもしれない。

戸塚氏は、1998年にはスーパーカミオカンデでニュートリノの質量観測にも成功している。
「あと十八ケ月元気でいてくれれば」
来年こそノーベル賞受賞のタイミングだったのだろうか。
惜しまれながら、今年7月、戸塚洋二氏は生涯を閉じた。

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上野国出身者様

母上様は順調にご回復されているようですね。
小柴先生と親しくお話しするなど、滅多にない機会のはず。きっと励みになることと思います。
Posted by:シルバーバック at 2008年09月11日(木) 12:44
suger様

ブルーバックスなどでも、非常にわかりやすいものもあれば、これでは一般読者の8割が読み通せまいと思うほど初心者への配慮を欠くものがあります。
「理科担当のシコウ」は大変に興味深い事柄をわかりやすく解説してあって、毎回楽しみに読んでいます。
Posted by:シルバーバック at 2008年09月11日(木) 12:34
こんにちは。
話がそれて恐縮ですが、先月
ある会場で私の母親が小柴先生と席が近くなり
2時間ほどお話させていただいたそうです。
多くの方からのサインの求めにも気さくに応じて下さる
優しく明るい先生だそうです。
そんな偉い先生とお話できる程、母親の言語や歩行が
回復したのかと、私も嬉しく思いました。
Posted by:上野国出身者 at 2008年09月11日(木) 10:25
確かにおっしゃる通りですね。

>学問のフロンティアにいる研究者たちを広く知らせる
>必要があるのではないでしょうか。

「この役割をZ会が担う」という方法もあると思います。
少なくとも,ブログでの紹介は簡単ですので,機会があれば,いろいろと紹介していきたいと思います。
Posted by:sugar at 2008年09月10日(水) 19:25
専門外の人間は、ノーベル賞受賞というニュースに接して初めてその偉大さを知るという傾向があります。もっと学問のフロンティアにいる研究者たちを広く知らせる必要があるのではないでしょうか。ノーベル賞受賞のニュース以外に研究者が記事になるとすると、訃報。それでは悲しすぎます。
Posted by:シルバーバック at 2008年09月09日(火) 18:26
戸塚先生は、「小柴先生と、師弟でのノーベル賞受賞」という、日本の科学界において、非常に明るいニュースが飛び込んでくる可能性があった人だけに、その死は、残念でなりません。
Posted by:sugar at 2008年09月09日(火) 18:13