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2017.04.26 08:30

15楽しい夜

「楽しい夜」岸本佐知子 編訳 講談社

 

「何らかの事情」の岸本佐知子さんである。なんだか不思議な、ちょっとへんてこりんな海外の小説を翻訳するのがお得意の翻訳者である。今回も奇妙なテイストの小説を集めてきた。おかしくて不思議で、ちょっとほろっとするような作品もあって、この人の集めるものは間違いない、と笑いながら思う。
 
様々な作家の作品を集めた短編集だ。最初に載っているのが、かつて実家を捨てるかのようにして出てきた女性がボブディランを連れて帰省する話。作者はマリー=ヘレン・ベルティーノ。もはやこれはSFか?と思うほどである。まだボブ・ディランがノーベル賞を貰う前に書かれたんだろうけれどね。
 
地球上のスペースが手狭になったので、人類は全員、他の生物を体表もしくは体内に寄生させなければならないことになった。
 
で始まるアリッサ・ナッティングのSFは、まずそこで読む目が止まり、自分だったらどんな生物をどこに寄生させるだろうか、としばらく想像してしまった。豊胸手術をして詰め物の中に水棲生物を住まわせるというのはなかなかすごい。でもちょっといやだなあ。やっぱり頭頂部にちょっとフジツボでも生やしてお茶を濁す程度がいいかな。Tシャツにカエルを・・・って、これは別の話か。
 
岸本さんは単に翻訳しただけなんだけど、この日とはどうしていつもこんなぶっ飛んだような物語ばかり発掘できるのだろう。世界中には変な作家が山ほどいるのだなあ。
 
            (引用は「楽しい夜」岸本佐知子編訳 より)
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2017.04.24 15:35

14やくみつるの秘境漫遊記

「やくみつるの秘境漫遊記」やくみつる 文藝春秋

 

やくみつるって、はた山ハッチだったんだ!・・・って、のっけからどうでもいい情報ですまん。言われてみりゃあ、画風は同じだもんねえ。
 
クイズ番組で結構な回答率を誇ったり、相撲について意見を述べたり、かと思うとタモリ倶楽部では地形について熱く語ったり。本業の漫画海外の仕事の方ばかり拝見していた。あんなに忙しそうなのに、こんなに世界中を飛び回っていたのね、と驚いている。
 
ブータン、イラン、コモド島、ラオス、ネパール、ヨルダン、ミャンマー、スリランカ、東ティモール、インド、トルクメニスタン、イエメン、リビア、エチオピア、ルワンダ、エジプト、南西アフリカ、ナミビア、ギニア、ガーナ、ソマリランド、モロッコ、マラウイ、モザンビーク、アンゴラ、ホンジュラス、コロンビア、エクアドル、トリニダード・トバゴ、ギアナ、ボリビア、ウルグアイ、パラグアイ、コスタリカ、バヌアツ、クリスマス島、ガダルカナル島、トラック諸島、オイミヤコン、リトアニア、ラトヴィア、アルバニア、トンガ。
 
見事にマニアックでコアな場所ばかりだ。ちなみに個人的にフランスと国交断絶をしているので、家族スタッフがフランス旅行している間は棄権だそうだ。どんなところでも怖がらずに飛び込んでいって、現地に溶け込み、尊重し、かつ楽しむ。この姿勢はとてもいい。体力もいりそうだけどね。クイズの回答率の高さは経験値にもよるのだなあ、とつくづく思った。
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2017.04.23 09:00

13三つのまほうのおくりもの

「三つのまほうのおくりもの」ジェイムズ・リオーダン ほるぷ出版

 

新年度の読み聞かせ活動が始まった。昨年度は何かと忙しく、絵本を選ぶ余力がなかったのと、一度試しにやってみたかったのとで、一年生から六年生まで、全てのクラスを「王さまと九人のきょうだい」で読み通した。驚いたことに、どの学年のどのクラスでも大受けであった。ひとりで読むより大勢で読んだほうがより面白くなる本ってあるのだなあと思った。と共に、昔話の持つ力に感心した。
 
今年度はもう少し丁寧に絵本を選んでいこうと思って読んでみたのがこれ。ベースはロシア民話。貧乏な弟と、金持ちの兄さん、どちらも名前はイワン。なんでロシア民話はいつもイワン一本槍でいこうとするのだろう。何か謂れがあるのかな。
 
ありがちなネタだが、弟は正直者でちょっと間抜け、兄は金持ちでずる賢い。食べるものがなくなった弟が兄に相談に行くと、カップいっぱいの小麦粉を貸してくれる。ただし、十倍にして返せよ、と言われる。ところが帰途、弟イワンは小麦粉を風に吹き飛ばされてしまう。怒ったイワンは風を追いかけ回し、風から魔法のテーブルかけをもらう。そのテーブルかけをテーブルにかけて「ごちそうをおくれ!」と言うと、テーブルかけはぎゅっとすぼまって、広がったときにはごちそうが山ほどのっている!
 
うーん、このテーブルかけは欲しいぞ、と心から思う。細かいメニューも指定できるともっとよろしい。今ならふきのとうの天ぷらとかね。などと邪念に走ってしまう私。
 
それはともかく、そのテーブルかけを弟は兄に騙し取られてしまう。で、次に弟はまほうのやぎを手に入れるのだが、それも兄にとられ、最後に手に入れたまほうの袋からでてきた大男が「やるべきことをや」ってくれた、というお話。
 
兄もずる賢いが、弟も馬鹿すぎるぞ、と思うのも含めて定番の物語。でも、こういうパターンは世界中でずっと語り継がれてきたのだから、やっぱりある種の真実を含んでいるのだろうなあ。バカ正直は報われる。まあね、そればっかりじゃない現実も知っているけれど。
 
四年生に読み聞かせようかと思っていたのだが、14分強かかる。持ち時間は15分だが、開始がちょっとおくれたりするともう間に合わない。最後の落ちまでたどり着かないとどうしようもないし、今回はこの本は見送り。でも、面白かった。
 
 
 
ところで、気になって調べてみたら「イワン」はキリスト教のイオアン、つまり聖ヨハネにちなんだロシアや東中欧のもっともポピュラーな男性の名前だそうだ。英語のジョン、フランス語のジャン、イタリア語のジョバンニ、ドイツ語のヨハン、スペイン語のファン、ポルトガル語のジョアン、オランダ語のヤン。みんな、イワンの仲間だそうだ。イワン大帝は15世紀後半、モスクワ公国をタタールの軛から開放し、イワン雷帝は16世紀、恐怖政治を行った。イワンについてわかったのは、このくらい。
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2017.04.22 09:18

11ヨーコさんの言葉

「ヨーコさんの”言葉”」佐野洋子文 北村裕花絵 講談社

12ヨーコさんの言葉 それが何ぼ

ヨーコさんの”言葉”それが何ぼのことだ」佐野洋子文 北村裕花絵 講談社

 

こんな本が出ていたとはしらなんだ。NHKで佐野洋子さんの言葉を取り上げて番組にしていたそうで、それが大人のための絵本になった。最初は「二番煎じか?」と警戒していたが、さすが佐野洋子さんである。実に味わい深い絵本になっている。
 
一冊目の最初の「才能ってものね」で既に打ちのめされる。以前に絶対オリジナルで読んでいるはずなんだが。こどもを水泳教室に連れて行くだけで、特別に出来ること、特別にできない子がいることを見つける。その間に凡庸という集団がぞろりと存在する。
 
そして、凡庸は凡庸な努力をシコシコと重ねて、人並みというものにかろうじてしがみつく。凡庸は凡庸と競争し、その中の喜びも悲しみも生きてゆくのである。(中略)
私はプールのガラス越しに、水を盛大にとび散らしている必死の形相の男に、「一つや二つ特別に才能なくても、どうにか生きていこうぜ。三つや四つ凡庸ってものにもありつけるわよと、見えないメッセージを送った。
                  (「ヨーコさんの”言葉”」佐野洋子より)
 
凡庸というもののありがたさをしみじみと感じる私である。特別な才能なんて無くてもいい、幾つかの凡庸を大事に抱えて生きていこうと心から思う私である。佐野さんは本当になんでもない顔をして、すごいことを言ってのける。その深さ、鋭さ、強さ、温かさにいつも私は驚かされる。知っていたはずの言葉でさえ、読み返すたびに打ちのめされる。
 
また、絵がいい。佐野さんを邪魔しない。そして、もっと深めて見せる。この人は、佐野さんを理解して、愛しているのだと伝わってくる。
 
もう一冊あるんだって。それも読まなくちゃ。
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2017.04.21 09:52

10古い洋画と新しい邦画と

「古い洋画と新しい邦画と」小林信彦 文藝春秋

 

週刊文春のコラム「本音を申せば」2015年連載分を収録した本。かつては週刊文春を毎週読んでいたが、ここしばらくは一年に一度、本にまとめられてから読むようになっている。
 
小林信彦のコラムは頑固で厳しくて鋭くて他の誰にも書けないものだ。私が今お気入りの伊集院光のラジオの凄さを教えられたのもこの人からだったし、「あまちゃん」を見てみようと思ったのも、辛口のこの人が褒めていたからだ。
 
人は年をとるなあと思う。安倍政権批判をこのコラムのそこここで展開していた小林信彦だったが、だんだんそれがぼやきというか、愚痴めいたものになっていて、最近は社会的なことよりも昔見た映画の話が中心になっている。本人もそれを認めていて、行動範囲の狭さと情報を集める気力のなさを嘆いておられる。そういうわけで、話はどうしても昔見た良い洋画と、たまに褒めたい邦画が題材になってしまう。
 
とはいえ、この人に勧められる映画は確かに良いものばかりで、また驚くほど鮮明に見どころを覚えているのがわかる。読んでいる時は、これも見たい、あれも見たいとなるのだが、読み終えると見たかったはずの映画の題名をあんまり覚えていないのは、こちらも年取ったせいなのか。
 
こんなコラムをかける人は他にはいない。お年を召されたのが気がかりだが、いつまでもお書きいただきたい、と願ってやまない私である。
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2017.04.20 09:10

9小倉昌男 祈りと経営

「小倉昌男 祈りと経営

ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの

森健 小学館

 

夫が面白かったというので読んでみた。小学館ノンフィク本大賞受賞作品。
 
ヤマト運輸の「宅急便」の生みの父で、優れた経営者として何冊も本が出され、本人の著作も超一流のビジネス書として評価されている小倉昌男。彼の偉大さについてはもう言い尽くされているかのように見えていたが、森健は、彼が退職後に始めた福祉事業に着目し、何が彼を福祉の道に駆り立てたかを調べ始める。現役時代には福祉に対して取り立てて興味も持っていなかった彼が唐突に福祉関連事業をめざし、巨額の私財を投じた背景に何があったのか。それを追うことで、誰も気づいていなかった、彼が闘っていたものに突き当たる。
 
良い本だった。どんな優れた仕事を成し遂げた人間にも、あるいはひどいことをしてしまった人間にも、家があり、家庭があり、家族がいる。人間としてその人の成り立ちを知ろうとすると、仕事や社会的に行ってきたことだけ見ていても、足りない部分がある。そこを丁寧に調べ、追った、良いノンフィクションだった。
 
読み終えて、身につまされることが幾つもある。反省するところもある。人は外見だけ、外的なふるまいだけでは計り知れない、と改めて思う。小倉昌男は誠実な人であった。弱さもあった、脆さもあった。としても、最後まで人として誠意を尽くした。ということが改めて分かる、良い本であった。
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2017.04.19 09:05

8今週末この映画を

「伊集院光の今週末この映画を借りて観よう」伊集院光 宝島社

 

今年一番感動した映画「人生フルーツ」を教えてもらったのが伊集院のラジオだった。実際にはゲストの樹木希林が教えてくれたのだが。それでも伊集院はゲストがこの映画の話をすると聞いて事前にちゃんと最後まで見ていた。そして、とてもいい映画なのでぜひ、と自分なりの言葉で勧めていた。そこに彼の誠実を見たし、結果、本当に見てよかったと思えるものだったので、映画に関して伊集院の信用度は高い。
 
その伊集院が、一回目はゲストにネタバレがないようにおすすめの映画をプレゼンしてもらい、その後、ゲストや伊集院やアシスタントもそれぞれにその映画を見て、二回目にはネタバレOKの状態で思い切りその映画を語るというラジオ番組をやっている。この本はその記録である。もともと伊集院はテレビ局の楽屋で爆笑問題の太田光が勧める映画をみるのが好きなんだそうだ。本来なら自分では見ないような映画を勧められて見たらめちゃめちゃ面白い、という経験を何度かして、それがこの番組の企画に繋がったという。
 
というわけで、もちろん最初のゲストは太田光だが、以後、宮藤官九郎、石野卓球、三村マサカズ、山本晋也、玉袋筋太郎、崔洋一、戸田奈津子と続く。この人らしいな、という選択もあれば、え?これ?というものもある。誰もが自分の好きな映画だから熱く語っていて、読むだけでも面白い。
 
本来なら「みるまえに編」を読んだらツタヤに直行して映画を見て、それから「みたあとで編」を読むのがこの本のお約束だ。だって、過激なネタバレもしちゃうからね。でも、ついついそのまま読んでしまった。そしたら面白いんだ。本当に映画をよく見る人なら、やっぱり先に見てから読んだほうがいいんだろうけど、「みたあとで編」を読んだからこそ見たくなった映画もある。戸田奈津子の「情婦」とかね。あと、誰もが知っているはずの「ダイ・ハード」を三村マサカズが熱く語るのもなかなか良かった。ベタを恐れず強く進める彼の姿勢がすごくかっこよかった。
 
私はもともと映像派じゃないし、年に数回も映画を見ない。たまに見るからこそ、いいものを見たいと思う。この本はまだ続編があるので、そっちも読んで、それからゆっくりツタヤに行こうかな。
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2017.04.16 08:50

7女中譚

「女中譚」中島京子 朝日新聞出版

 

「東京観光」が面白かったので、図書館で中島さんの本を何冊か借りてきた。この本は2009年の作品。
 
秋葉原のメイド喫茶の常連である90歳すぎのおばあさんが語る思い出話。女中として働いていた頃の話なんだけど、どうしようもないヒモの男、ハーフのピアニストの少女、変わり者の文士などが登場する。着想は林芙美子や永井荷風などから来ているという。そして、このおばあさんの住む部屋の描写は、どうしたって故・森茉莉のそれとしか思えない。
 
2.26が好きだなあ、中島京子は。現実にあった事件を必ず絡めてくる。最終的には秋葉原無差別殺人事件まで登場する。現実感を出すためか。
 
第一話に登場するヒモは、こういうダメ男いるよなあ、とつくづく思う。そんな男のダメさ加減を十分承知の上で、何度でも騙されるもっとダメな女も、どんな時代にもいる。なんだかなあ。
 
短いけれど、一気に読める小説だった。この物語が「小さいおうち」につながっていったのかもしれない。
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2017.04.15 09:50

6曽根崎心中

「曽根崎心中」角田光代(原作 近松門左衛門)リトルモア

 

言わずと知れた近松門左衛門の浄瑠璃。それを角田さんが翻案している。
 
映画「曽根崎心中」なら、学生時代に見た。と書くと年齢がバレちゃうかなあ。梶芽衣子がお初を、宇崎竜童が徳兵衛を演じた。お初役の梶芽衣子の足元に徳兵衛の宇崎竜童が隠れていて、橋本功演じるところの悪役、九平次とお初が口論すると、徳兵衛がお初の足に頬ずりしたり、手で触る。そのシーンがやたらと色っぽくて、おお、色香というのはこのように表すものか、と感心したものだ。でも、その頃は実はあんまりわかってなかったぞ、と今は思う。
 
角田光代はうまい。一行も飽きさせないで最後まで持っていく。江戸時代の人が曽根崎心中に熱狂したのはこういうことだったのかと思う。お初の切なさ、強さ、温かさ、苦しさ、赦すことと、諦めること。すべてのものが迫ってくる。例の足のシーンからも、色香だけではない、もっとぞっとするような深い心の動きが見えてくる。
 
昔から人は恋をしてきたのだ。どんなに押し込めようとしても、隔てようとしても、心が動くのは誰にも止められない。人間て難儀やなあ。この歳になると、若いって大変ね、という気持ちがちょっと動いちゃうのがつや消しだけどね。あは。
 
 
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2017.04.14 09:44

5東京観光

「東京観光」中島京子 集英社

 

「長いお別れ」以来の中島京子さんである。何冊か読んで、この人の書くものは信頼していいと確信した。この本は2007年から2011年の間にいくつかの雑誌やWEB媒体に書いた短編小説を集めてある。決して東京観光のガイドブックではない。
 
それぞれにテイストが違っていて、前菜のアラカルト盛り合わせみたいに気軽にいろんなものが楽しめる。結構とんでもない設定がさりげなく描かれていて、あれっと思ったりするのが楽しい。放課後しか現れない「ゴセイト」という生徒の話なんて実は奇想天外なはずなんだが、当たり前のように描かれていてそのまんまするりとその世界に入ってしまう。
 
短いけれど、どれも十分味わえる、電車の中で読むのが楽しい短編集だった。
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プロフィール

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サワキ
転勤族なので、全国を転々として、今は夫婦二人の東京ぐらし。息子は北海道の大学院へ、娘は関西の大学へ旅立っていきました。読書とお笑いが好き。読んだ本の紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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