それが、井筒俊彦『イスラーム文化 その根柢にあるもの』(岩波文庫)である。
イスラム文化の根底にあるのは、もちろんイスラム教である。
しかし、それは「日本文化の根底にあるのは仏教(または神道)である」「欧米文化の根底にあるのはキリスト教である」というのとは、かなり様相を異にする。
日本人にとっての仏教や神道については言うまでもないだろうが、キリスト教にも「カエサルのものはカエサルに」という言葉がある。俗と聖は別次元のものと考えるわけである。
しかしイスラム社会においてはそうではない。
**********
人間生活のあらゆる局面が根本的、第一義的に宗教に関わってくるのです。(中略)個人的、家族的、社会的、民族的、国家的、およそ人間が現実に生存するところ、そこに必ず宗教がある。そしてこのように人間存在のあらゆる局面を通じて、終始一貫して『コーラン』に表われている神の意志を実現していくこと、それがイスラームの見る宗教生活なのであります。(本著p41より引用)
**********「まあまあ、それはそれとして、固いことは言わずに……」というのが通じない世界なんです。
この本を読めば、現在イスラム世界で起こっているあんなことやこんなことのウラがすっきりわかる...というわけでは必ずしもない。
しかしその前段階として、イスラム世界で生きる多くの人々の行動原理を知っておくことは不可欠であろう。
『イスラーム文化−その根柢にあるもの 』井筒俊彦 岩波文庫
※この記事は、「Z会OBOGメルマガ」で連載しているコラム「学人 行動するための読書案内」の2015年4月14日の記事を再編したものです)