キャリア・アドバイザーの松尾順です。
先日、あるメルマガに次のような印象的な言葉が紹介されていました。某大学教授が語ったことだそうです。
“「自分」をわかるためには、自分が「何」であるかを考えるのではなく、「自分」が「何」を失えば自分でなくなるかを考える”
あなたにとって「何」を失えば、自分でなくなると思いますか?
それが何なのか、すぐに言えますか?
英国の新進オペラ歌手、ポール・ポッツ(Paul Potts)氏の場合、
「歌」
を失うことが、自分でなくなることだったに違いありません。
ポール・ポッツ氏は、元携帯電話のセールスマンです。
彼は、「スター誕生」の英国版のテレビ番組「Britain's Got Talent」のオーディションに、大変失礼ながら、あまりぱっとしない風貌で登場。
ところが彼は、
「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」
(プッチーニの歌劇、『トゥーランドット』から)
を情感豊かに歌い上げ、審査員を始め聴衆を感動の渦に巻き込んだのです。
彼は結局、この番組の初代チャンピオンとなり、36歳にしてCDデビューを果たします。このCDはたちまち世界的なベストセラーとなりました。
また、その後に行った世界ツアーも成功裡に終えています。
まさに、「オーバーナイトサクセス」ですね。
ポールさんのこの成功物語は、日本でも昨年以来、ネットの口コミで盛んに流れましたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
彼は、世界ツアーの一環として今年4月末に東京・渋谷のオーチャードホールで来日公演を行っています。
私もぜひ聴きたいと当公演のチケットをゲット!そして、公演では、彼の繊細で美しい歌声にすっかりノックアウトされてしまいました。
さて、彼は小さい頃から、自分は他人とちょっと違うという感覚を持っており、気弱な性格のせいか、学校ではいじめられたこともあったそうです。
そんな彼のベストフレンドはずっと「歌」でした。
いじめられて落ち込んだ時に、自分を支えてくれたのが歌だったのです。
彼は成人してからも、様々な職を転々としながらオペラを歌い続け、お金を貯めて自費でイタリアにオペラ留学も果たしています。
とはいえ、それ以外にオペラ歌手としての正統な教育を受けたわけではなく、プロ歌手になることはポールさんにとっては遠い夢物語に過ぎなかったようです。
しかし、彼は歌をあきらめることはしませんでした。
それは、冒頭に書いたように、彼にとって「歌」を失うことは、自分でなくなってしまうことだったからでしょう。
また、彼は、ずっと自分に自信がありませんでした。
自分のことを取るに足らない人物だと思い込んでいたのです。でも、歌を歌っている時だけはそんな悩みも感じることがなかったのです。
「Britain's Got Talent」の最初のオーディションは、そんなポールさんに大きな自信を与えました。
彼の歌に感動した聴衆のスタンディングオベーションを受け、審査員に絶賛された時に初めて、ポールさんは自分の存在意義を感じることができたのです。
彼はその後、次のように力強く語っています。
“After the first audition, I realised I am somebody. I'm Paul Potts.”
(最初のオーディションの後、自分も結構いけてることがわかったんだ。ぼくはポールポッツだ!)
実際、来日公演で見た彼は、最初のオーディションに現れた時の自信なさげな表情とは全く違って、堂々として自信にあふれたステージパフォーマンスを披露してくれました。
ポールさんの場合、自分では過小評価していた歌の才能があり、かつその才能を磨き続けた結果、36歳にしてついに世に出るチャンスをつかみました。
ある意味、とてもラッキーでしたし、誰でも同じような劇的な成功をつかめるわけではありません。
しかし、成功を収めるかどうかはさておき、誰にとっても、それを失くしたら自分でなくなってしまう何かがあるはずです。
どうか、それを大切にしてくださいね。
【参考】
>> ポール・ポッツ氏公式サイト(英語)
>> BMG JAPAN(ポール・ポッツ氏の日本語での紹介)