コンプリートチーム[2008年07月10日(木) ]

キャリア・アドバイザーの松尾順です。


自分のキャリアづくりは基本的に、

・自分が何をやりたいのか
・自分は何が得意なのか

といった、「個人」単位で考えます。

ところが、キャリアが形成される仕事の現場は、ほとんどが上司、同僚、取引先パートナーなどとの協働作業ですよね。個人で完結するのは、画家などの一部の芸術家くらいでしょう。

(絵画も、大規模になると弟子も制作に関わりますし、孤独な作業と思われがちな小説家も、プロともなれば出版社の編集者との緊密なチームワークで作品が生み出されています)

したがって、キャリアづくりを個人単位でしっかり考えるのは当然として、仕事の上での成果につなげていくためには、チームとしてどう仕事に取り組むかという視点が欠かせません。


「そんなことを考えるのはリーダーの仕事では?私はまだリーダーじゃないから・・・」

と考えたあなた、ちょっと待ってください!

チームをとりまとめるのは確かにリーダーの役割です。でも、チームメンバーの1人として、自分の役割を認識しておくのも重要ですよね?

つまり、現在属しているチームにおいて、自分がどのような役回りを果たすのが、最大の成果につながるのかを考えて仕事に取り組む。

こうすることで、チームの成果だけでなく、あなた自身のキャリア的成長にもプラスになるのですよ。

なぜなら、自分の強みや持ち味をチームとしての活動に反映させることによって、あなたの強みや持ち味をさらに伸ばすことができるからです。



そこで、今回はある理論に基づく理想的なチームづくりについてご紹介しようと思います。

ある理論というのは

「FFS理論」(FFS = Five Factors & Stress)

と呼ばれるものです。

組織人事心理学者であり、経済学博士、教育学博士でもある小林恵智氏が提唱しています。

私は数年前、FFS理論についての小林氏の研修を受けて基本的な知識を学びました。とはいえ、この記事では専門的に深入りすることはしないでおきますね。


さて、FFS理論は、主に企業組織のコンサルティングに活用されていますが、どのような特性(資質や性格など)を持つ社員を組み合わせたチーム(部署)が最大の成果を出せるか、ということを科学的に分析することが可能です。

とりわけ興味を引くのが、同理論に基づく人材のタイプ分けです。具体的には以下の4つに分類されています。

タグボート型人材 偵察・先導が得意、アイディアマン。
リーダーシップ型人材 変革・拡大が得意、文字通りビジョンを示すリーダー。
マネジメント型人材 管理・調整が得意、参謀的、ナンバー2にふさわしい人。
アンカー型人材 堅守・徹底が得意。


そして、この4つの人材タイプの持ち主が適度に含まれているチームが最大の成果を残せる理想のチームであることがわかっており、

「コンプリートチーム」(完全なるチーム)

と呼ばれます。


理解を深める具体例として、コンプリートチームでエベレスト登山隊を組んだと想定してみます。この時、次のような役割分担になります。

タグボートな人がまず、予定した登山ルートに危険がないか偵察に行きます。
タグボートさんが戻ってきました。「隊長、登山ルートには問題ありませんでした!」と報告。
そこで、リーダーシップな人(=隊長)が、「さあ出発だ!」とチームメンバーを鼓舞し、先頭を切って歩き始めます。
マネジメントな人は、そんなリーダーの背後で天候のチェックや、装備が万全かどうかの確認に余念がありません。
アンカーな人は、ベースキャンプに残ります。実際に登攀するメンバーと連絡を取り、いざという時に備えて守りを固めます。


あなた自身は、どのタイプだと思いますか?

ちなみに、私は「タグボートな人」です。

タグボートな人やリーダーシップな人と比べて、マネジメントな人、アンカーな人は地味な存在です。しかし、彼らがいなかったら登山の成功は難しいでしょう。

腰は軽いがそれだけ脇の甘いタグボートな人と、前に進むことしか考えられないリーダーシップな人しか登山チームにいなかったらどうなるでしょうか。道に迷ってしまったり、悪天候に巻き込まれて遭難してしまう可能性が高いですよね。

つまり、チームとしての成果を出すには、アイディアを出す人、アイディアを実現する人、攻める人、守る人などそれぞれ異なる強みを持つ人材がいてうまく全体としてのバランスが取れていることが必要なのです。



この人材タイプ分けは、本来は、FFS理論に沿って設計されたアンケートスタイルの調査票に回答することによって判別するのですが、人(自分)の行動パターンを観察することによって、

「私は、マネジメントだ」
「○○さんは、タグボートだ」
「□□さんは、アンカーな人だ」

とおおよそ推測できるかと思います。

そして、自分の人材タイプを踏まえてどのようなメンバーと一緒に仕事をすればよい成果を出せそうか考えてみたらどうでしょう?

(会社内だと選べるメンバーが限られていますし、メンバーを選ぶ権限が必ずしもないかも知れませんが・・・)



*FFS理論についての説明については、全て私の責任で書いています。

*FFS理論に興味のある方は、以下のページを参照してください。

>> FFS理論とは ― ヒューマンロジック研究所