キャリア・アドバイザーの松尾順です。
ある分野で「超一流」を目指すためには、持って生まれた「才能」に加えて、日々、倦まずたゆまず自らの能力を磨き続ける「努力」が欠かせません。
もちろん、以前の記事、
『才能がないからって簡単にあきらめない』
で書いたように、
それほど大きな才能がなくても、人の何倍も努力することによって「超一流」の域まで達する人もいます。
しかし、「才能」だけに頼り、能力を磨き続ける努力を怠ってしまった人は「一流」レベルまでは行けても、たいていそこで終わりです。
華々しくデビューしたものの、わずかの間に表舞台から姿を消してしまうことが多いですね。
こうした、「才能」と「努力」の関係について改めて考えさせられた番組を先日テレビで見ました。
それは、
4月27日放送の「NHKスペシャル」
「ミラクルボディー 第3回 ハイジャンプ 翼なき“天才”」
です。
ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
この番組では、北京オリンピックの走り高跳びの種目において金メダル候補となっている2人の選手、ステファン・ホルム(スウェーデン)とドナルド・トーマス(バハマ)の驚異的な肉体の秘密が明らかにされていました。
この2人、極めて対照的な存在です。
アテネ五輪金メダリストのホルムが「努力の人」であるのに対し、世界陸上でホルムを破ったトーマスは「才能の人」なのです。
ホルムは、6歳の頃から父親の指導を受けつつ、毎日毎日、高跳びのための地道な練習を続けてきました。
身長は180センチほどで、走り高跳び選手としては小柄な方です。
また、ジャンプ力も一般人並なのです。生まれ持った才能と言う点では、決して恵まれてはいません。
しかし、ホルムは不断の努力を通じて「跳び」の技術を磨き上げ、美しいフォームでバーを越えます。
一方、トーマスは、元々はバスケットボール選手。
「ちょっと跳んでみたら?」と言われてなんの練習もせず、走り高跳びにチャレンジしたら、いきなり世界記録に迫るジャンプ力を示したため陸上選手に転向しました。
そして、走り高跳びに取り組んでわずか1年半で、現在高跳びの世界で頂点に立つホルムを破ってしまったというわけです。
ただし、彼のジャンプのフォームは我流もいいところ。跳んでいる最中に足をバタバタさせる異例なスタイルは、従来の走り高跳びの常識を覆すものだそうです。
上記番組での分析によれば、走り高跳びというよりも、バスケットボールで、ボールを直接ゴールに入れる「ダンクシュート」を決めるフォームでバーを越えているという感じでした。
しかし、形はどうあれ結果として高く飛べるわけですから、彼のコーチはフォームを矯正することをしていません。あれこれ考えず天性の才能に頼って跳ぶことがトーマスにとって最善だとコーチは判断していたのです。
さて、もしトーマスが現在のスタイルを続けてしまえば、遅かれ早かれ「限界」が来ていたのではないかと思います。
あくまでたとえばの話ですが、たとえホルムは破ることはできても、トーマスと同じ程度の才能を持つ選手が登場し、しかも、その選手の技術がトーマスを凌駕するものであったら、確実に負けてしまうからです。
トーマスがこのことに気づいたのかどうかわかりません。
しかし、彼は自ら自分のスタイルを変えることを決意しました。
さらに高く飛ぶために、踏み切りの位置や助走ルート、跳躍フォームなどをどのようにすればいいのか考えて跳ぶようになったのです。
ただ、慣れない新しいスタイルづくりに取り組んだため、このところ出場した陸上大会でもあまり調子がでず、勝つことができません。また、足を痛めてしまうというトラブルにも見舞われます。
それでも彼は、
「走り高跳びで最高の記録を残す」
(世界記録を破ることを意味しているようです)
ことを目標に、才能を磨き上げる努力を始めたのです。
私が言うのもなんですが、前述したように、
“トーマスが「我流」を通したら一流止まりだった。しかし、努力することの必要性を認識した今、超一流の道を歩み始めた。”
と言えるのではないでしょうか。
以上はスポーツの世界の話でしたが、私たち一般ビジネスパーソンの世界についても同じですよね。
私たちはそれぞれなんらか得意なことがあります。いきなりやっても結構こなせてしまうようなことです。
それは、まさしく天性の「才能」でこなせる仕事と言えます。
これは、以前の記事、
『心理構造とキャリア』
における「動機」にマッチしている仕事ということです。
しかし、ビジネスにおいても、才能だけではやはり限界がきます。さらに日々の努力を積み重ね、その仕事に必要な能力を高め続ける。
こうすることよって、超一流のビジネスパーソンへの道が開かれるのです。
自分が得意なことは、簡単にできてしまうがゆえについつい努力を怠りがちになるものですが、どうかトーマス選手と同じように「努力」の重要性に目覚めましょう!
それにしても、北京五輪でのホルムとトーマスの戦いはどうなるでしょうね・・・!