キャリア・アドバイザーの松尾順です。
先日、両国の国技館に行き、生まれて初めて、大相撲を生で観ることができました。
私は小さい頃から、相撲好きだった祖父の影響で、NHKの大相撲中継は毎日のように見ていたんですね。
でも、18歳で東京に出てきてからは、その気になればいつでも国技館に行けたのに、その頃から相撲に対する関心が薄れたこともあって、これまで行ったことがなかったのです。
でも最近、再び相撲に対する興味が高まってきたので、思い切ってチケットを入手し、大相撲を初体験したというわけです。
やはり生の迫力は違いました!
今回は、1階のマス席ではなく2階の椅子席からの相撲観賞でしたが、国技館の雰囲気には独特のものがあります。
自然に気分が高揚するのを感じました。
さて、途中でトイレに立った時のことです。
現役時代には幕内上位で活躍された力士であり、現在はある相撲部屋を運営している親方をたまたま見かけました。
その日の親方は、たまたまワイシャツにスラックス姿でしたが、着物よりも、こうした洋装の方が体の線がわかりやすいですよね。
2メートル近くの上背を持つ親方の、ヘラクレスのようながっしりとした肉体にはさすがに圧倒されました。
この親方のことを全く知らない人でも、おそらくほとんどの人が、元力士だとすぐにわかったことでしょう。
(国技館の中でなくても・・・)
そのくらい、「力士」という職業を目指すには身体的に飛びぬけた資質が必要なんだということをこの親方のほれぼれするような体格を目の前で見て感じたのです。
私たちは通常、自分の好きな職業、やりたい職業を自由に選べるという前提でキャリアデザインを行いますよね。
ところが、スポーツ、とりわけ大相撲のような格闘技の世界では、言うまでもなく、誰でも力士になれるというわけではありません。
新弟子検査にパスするためには、一定の身長・体重をパスしなければならないのはご存知かと思います。
どんなに相撲の技がうまくても、身長2メートル前後、体重150キロといった外国人力士が活躍する現在の大相撲では、そもそも身体的に対抗できる資質を持ち合わせていなければ、生き残ることはできないのです。
梅澤正氏(日本教育大学院大学客員教授)は、近著の『職業とは何か』の中で、
「職業が人を選んでいる」
という側面もあるとおっしゃっていますが、大相撲の場合には、まさにこの言葉が一目瞭然で納得できますよね。
しかし、悩ましいのは、一般のビジネスパーソンの場合です。
ほとんどがデスクワークですから、身体的な資質はそれほど問われません。
むしろ、ある仕事(職業・職種)が自分に向いているかどうか、またうまくこなせるかどうかは、目に見えにくい知能的・心理的な資質次第です。
そして、現実には
「職業が人を選んでいる」
ということが一般のビジネスパーソンにも起きています。
これは、「人」の立場から言えば、
「その職業に対する適性がない」
ということになりますが、ある職業に対する適性があるかどうかは、事前の「適性検査」だけでわかるものではありません。
適性検査を否定しているわけではありませんが、人の知能的・心理的資質を正確に把握するのは、身体的特徴ほどは容易ではないということです。
ですから、適性の有無は、ある程度の期間、その仕事を実際にやってみた結果として好きになれるかどうか、あるいは相応の成果を出せるかどうかを確認するしかないのです。
その意味では、一般のビジネスパーソンにおける職業選択は、多くの場合、「お試し」的なものと言えるのではないでしょうか。
まずやってみるまでは、それが自分にとっての「適職」とは確信が持てないわけですから。
もちろん、「お試し」だからといって適当に流してはいけません。
全力でその仕事にぶつかってみる。とことんやってみる。
それでうまくやれればよし!
一方、100%の力を出し切ってもうまくできないようであれば、残念ながら
「その職業はあなたを選んでくれなかった」
ということです。
でも、選ばれなかったからといって、落ち込む必要はありません。
あくまで「お試し」だったんですから。
別の仕事にチャレンジすればいいのです。
自分の可能性を拡げつつ、目の前の仕事に全力を尽くしていれば、いつか必ず、あなたを選んでくれる職業に出会えます。
(参考図書)
『職業とは何か』
梅澤正著、講談社現代新書