キャリア・アドバイザーの松尾順です。
今回は、あなたの行動の背景にあって、行動に大きな影響を与えている「心」の仕組み、すなわち「心理構造」とキャリアの関係についてご説明してみたいと思います。
ちょっと専門的な内容なので、私の説明が不十分でわかりにくいかもしれません。不明点や質問したいことがあったらぜひコメントしてくださいね。
さて、まず4つの輪を持つ同心円をイメージしてください。
木の年輪を上からみた感じです。
行動心理学では、人の心理はこのような重層構造になっていると考えられています。
さて、真ん中の一番小さい円の部分は「動機」です。これは前回ちょっと触れましたね。「動機」のすぐ外側の円は「性格」です。そしてさらにその外側の円は「価値観」、そして一番外側の円が「スキル・知識」となっています。
つまり、人の心理構造は、一番奥(内側)から
動機 → 性格 → 価値観 → スキル・知識
という構造をしているというわけです。
なお、この円の外側に「行動」があります。「行動」は人に見える部分です。
冒頭に述べたように、人が見ることのできる行動に影響を与えているのが、人の目には見えない「心理」(動機、価値観、性格、スキル・知識)なのです。
では、上記4つの心理について簡単にどんなものかご説明しましょう。
「動機」は、人が無意識にやってしまうこと、あるいはそれをやっていると時間を忘れて夢中になってしまうような行動を引き起こす根本的な欲求です。
具体的には、「相手を説得したい」「自分を表現したい」「相手の気持ちを汲み取りたい」「人によく思われたい」といった欲求です。こうした欲求は人によって様々ですが、3歳くらいまでにほぼ決まってしまい、20歳以降はほとんど変わらないと考えられています。
「性格」は、外交的である・内向的である、協調的・非協調的である、感情的になりやすい・いつも穏やかといった言葉で表す人の特徴ですね。
性格は生まれつきのものだという考え方が強いものの、現在は能弁で明るく振舞っているタレントが、実は子供のころは内向的だったということをよく聞きます。また、感情の起伏が激しい人でも、穏やかな環境や人々に囲まれていると自然にあまりキレることがなくなることもあります。つまり、周囲の環境に影響を受けることで本人の性格が長期的に変わっていくこともあるわけです。
さらに「価値観」ですが、これは人が判断や行動する際の基準となる「信念」のことです。
たとえば、家庭よりも仕事を第一に考えるのか、あるいは逆に家庭を最優先させるのか、というのは価値観の違いです。価値観は親の教えや学校で学んだこと、読書から得たこと、実体験などを通じて形成されます。価値観も大人になってからはそれほど変化しませんが、大きな出来事でガラッと変わることもあります。子供ができた瞬間に、ワーカホリックからマイホームパパに変わった男性がいたら、それは価値観が変わったということなのです。
そして一番外側の「知識・スキル」は、多くが学校の教育や、会社の現場での実践を通じて身につけていくもの。
特定の行動(思考活動や身体活動)がどの程度うまくできるかどうかを左右するものですね。
さて、この4つの心理とキャリアとの関係について考えてみましょう。
ただし、以降の説明はおおむね私の解釈でして、かっちりとした研究成果に基づくものではないことをあらかじめご了承ください。
まず
「動機」について。
前回ご説明したように、自然にできてしまうこと、時間を忘れて熱中してしまうような、自分の動機にマッチした行動が求められる仕事に就くことができたら、毎日がハッピーにすごせることでしょう。なんたって、無理しなくても自然に仕事をこなすことができるわけですから。
つまり、動機と仕事内容が合致している場合を「適性」があると呼べるのでしょうね。したがって、自分の「動機」を理解することは、職業・職種の選択にとても参考になります。
「性格」は、仕事における自分らしさ、つまり個性として現れてきます。
営業担当の中には、外交的で口達者、元気いっぱいな人がいる一方、あまり押し出しが強くなく、訥弁で控えめな人もいます。そして押しの強いいかにも営業担当という方が必ずしもトップセールスとは限らず、目立たないおとなしい人がナンバーワンの座を占めていることがあります。
性格も人ぞれぞれ。良し悪しや正しい・正しくないという見方をすることは避けるべきです。大事なことは、自分の性格に合った働き方を見つけて、自分らしく仕事をすること。そうした方が、成果にもつながりやすいですし、また本人にとってもハッピーなキャリアになるのですよ。
「価値観」は、仕事のやり方に関係してきます。
仕事は金儲けの手段でいい、趣味に多くの時間を使いたいという価値観を持っている人は、そうしたことが可能な仕事・職種を選択するべきでしょうし、あるいは、どんな仕事であれ、自分の価値観に基づいて仕事をするという姿勢を貫くこともOKだと思います。
同じ仕事に就いていても、遅くまで働く人、定時で帰る人の両方がいると思います。これは、本人の価値観に基づいてそれぞれ異なる働き方を選択しているわけです(現実には、上司・同僚が残っていると自分だけ先に帰れないといった「職場の価値観」に従わざるをえない場合もあるでしょうけど)。
ただ、仕事上の成果をきっちり出しているのなら、残業しようが、早く切り上げようが、どちらが良い・悪い、あるいは正しい・正しくないということではないですよね。
そして
「知識・スキル」は、説明するまでもなく、仕事の効率や質を高めるために必要なものですね。
あなたがどんな仕事に就いていようと、常にその仕事をよりよいものにしていくために、知識・スキルを磨き続けてください。
(注)心理構造の説明については、人材評価コンサルティング会社「
キャリパージャパン」の資料に基づいています。
参考文献
『勝者の人材戦略 ジョブ・マッチング』
泉田雅典、宮崎陽世著(ゾディアック叢書)