2019.08.19 07:55

 先日、電話で教室への道順を確認されてきた大人の方がいらっしゃって「何しろ、昔の渋谷とは全然違うから」とおっしゃっていました。昔の渋谷というのがいつの時代のものなのかはよくわかりませんが、昔の渋谷と全然違うのはその通りで、私自身も感慨深いものがあります。
 少年時代、私は毎日渋谷に通っていました。当然、渋谷駅周辺を友人とうろうろしたものです。「少年」というのはそういうことをしますね。
 
 うろうろする相手は多くはなかったのですが、うろうろする場所は比較的決まっていました。中学生のころはいまはなき東急プラザによく行きました。大きなレコード屋さんがあってレコードを試聴することができた。
 もっともお店にとっては迷惑みたいなものですね。中学生がLPレコードを試聴したところで「ではこれを」とすぐに買うわけがない。あるとき、友人がある曲を試聴してくれないかと私に言ってきたことがあります。
 
 私はその曲を知っているので、聴きたいのならきみ自身で頼めよと言うと、いやいや作戦があるんだ。聴きたいのは自分だけど、長野から頼んでほしいんだと言われました。気が進まないまま私は店員さんにLPレコードの中のある曲をかけてくださいとお願いした。
 曲がかかりはじめると友人は何度も私に「たいした曲じゃないじゃないか」と文句を言いました。流れが不自然なので理由があるのだろうと思って黙っていたら、最後まで聴き終わってから店員さんの前で私に「こんな曲なら買う気にならないよ」とだめ押しした。
 
 レコード店を出ると彼は笑顔で「うまくやっただろう? おれはいつもこうやって店員を撃退するんだ」と得意そうに胸を張りしました。「ただで聴くいい方法だろ? 大学生の兄貴から教わったんだ。向こうも薦めようがないからさ」と言った。私は複雑な気持ちになりました。
 世の中は、そうしたことに満ち満ちているような気がします。「うまくやる」ということですね。そしてそれこそが「正義」だということになっているのかもしれません。
 
 ただ私自身は「うまくやる」ことにはほとんど興味がありません。もちろんわざとへまをしたいとは思いませんが。試聴はしたいけれども店員さんに気が引けるのでいつも言いだせないーーそんな少年時代で本当によかったという気持ちがあります。
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長野先生
35年以上、中学生を教え続けてきました。生徒たちが日々の学びを通じて大きく成長できますように明るいヒントを発信していけたらと思います。

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