2019.05.05 00:34

 身近なご近所の方で私がこの人はすごいと感じるのは、通っている床屋さんのご主人です。これはもう間違いないですね。10年は通い続けていますが、ここまで広範な教養に支えられた知性の持ち主はめったにいらっしゃらないと思います。
 まあお歳も80代半ばですから、それなりの教育を受けてこられたという事情もあるでしょう。お仕事をずーっとされているせいか、見た目は70代で十分通ります。腕もとてもいい。はじめは上手だからという理由で通うようになったのです。
 
 そういう関係もあるのでしょうか。何かのテレビの企画番組にお店が出たことがあるそうです。さらにロックバンドのプロモーションフィルムに使用されたこともありました。あとで見せていただいた。ひたすらメンバーが髭を剃る変なプロモーションフィルムでしたよ。ご主人の投書が大手の新聞に掲載されたり、ハガキがラジオで読まれたりもしていました。まあ、市井に大賢あり・・・といったところでしょうか。
 気難しくはないですよ。お客さんにはとても親切で丁寧です。
 
 いつも難しい話が出るというわけでもないのです。私が眠そうなときは何もおっしゃらない。ただ何かでーー自分もいちおう国語の先生ですからーー文化的な話題になると、古今東西の教典からの引用がばんばん出てきます。教典だけでなく、漢詩文、和歌、歴史的エピソードなども披露してくださる。
 先日(連休中)散髪していただいた。顔を剃るとき仰向けで目をつぶっていると右の靴に少し違和感を感じました。目を開けると、ご主人が私の靴の泥をぬぐってくれているではないですか。
 
 私個人、靴が汚れていることはめったにありません。そのへんは神経質なのです。ところが連休中という油断もあり、前の晩犬の散歩で公園を歩いた靴でふらりと来てしまった。公園は土の道なので、土が付着していたのですね。
 それを黙ってタオルでぬぐってくださった。あ! と思いましたが、何も言いませんでした。ご主人もそれはそれという感じで淡々と作業を再開されている。
 結局、このあたりですね。積み重ねてきた教養が日常にどれだけ生きるのか。
 
 うちは理容室であり、靴の汚れは守備範囲外であるというのがごくごくあたり前の考え方です。それでまったく悪くない。しかし、世の中全体を積極的によくしていこうと思ったら、それぞれが「悪くないことだけ」をしていても到底追いつかないのも事実です。悪いことは何一つしていないよと胸を張ったところで、温かい社会を作るために「それだけで大丈夫?」ということになってしまう。愛情だとか善行だとかという概念の発露ではなく、積み上げた教養が自然に動ける器を作るということが大切ではないか。本来の教育は、そうあるべきでしょう。
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長野先生
35年以上、中学生を教え続けてきました。生徒たちが日々の学びを通じて大きく成長できますように明るいヒントを発信していけたらと思います。

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