2015.03.17 07:33

 以前も書いたかな。将棋界のエピソード。ある名人(文字通り最高峰です)経験者がお弟子さんにこういう話をされた。
 私はこの話をずいぶん昔、お弟子さんご本人の書かれた何かで読みました。ただあまりにも昔なので、どこまで正確であるかは自信がありません。概要は間違えていないはずです。
 お弟子さんが一人前の棋士になる以前のお話でした。修業中の奨励会員。東京と大阪で定期的に対局があります。
 
 名人はお弟子さんに大阪に遠征するときは必ず新幹線のグリーン車に乗りなさいとおっしゃったそうです。そうやって自分の価値を高めていけば必ずA級8段になれる。
 A級8段というのは順位戦のいちばん上のクラスで、ある意味タイトル保持者ぐらいの実力と権威があります。ほんのひと握りの棋士しかのぼれません。名人は10代の少年に「いちばん上のクラスに入れる人間になるためにグリーン車を使いなさい」と告げたわけです。
 これはもちろん贅沢を・・・という意味ではないですね。それぐらい高く自己を扱いなさいという意味でしょう。
 
 逆に、たとえば規定の交通費を浮かせ各駅停車を乗り継いで(ということができるのかどうかはわかりませんが)安く上がった・・・と喜んでいるようでは「A級8段の器」ではないという意味をこめていたのでしょう。
 一般的にはそういう発想の人間のほうが多いでしょう。よく会社員でもサウナに泊まって出張費を浮かせたなどというお話がありますね。それはそれで微笑ましい庶民の工夫であり私は全然嫌悪感を持ちませんが、確かにいつもいつもその発想だけでサラリーマン社会の「A級8段」にのぼれるかどうかはわかりません。
 
 似たような話があります。25年ぐらい昔のお話です。ある予備校の先生が移動の際にグリーン車料金を請求したら予備校からだめだと言われたそうです。皆さん、普通席で移動されている。その先生だけグリーン車代を出すわけにはいきませんね。
 とても穏やかないい先生でしたから「そうですか・・・」で収まりました。ただ私には当然自分にはグリーン車代が出るものだと考えていたとおっしゃっていました。それぐらいの貢献はしているという自信もあったのでしょう。
 
 その先生はーー現在はおつきあいがないのですがーー大成功を収め、非常に大きな大学の教授になっていらっしゃいます。書籍もたくさん出版されている。私は陰ながらうれしく思っています。
 そこの予備校の先生方全員がそうなられたわけではないので、その先生にはやはり「A級8段」的な何かがあったのでしょう。本当の意味で、自分をどう位置づけるか。たとえばもし本当に国際社会で大活躍したいと考えるのであれば、今日の自分自身に対する扱いを変えなければいけない・・・ということが出てくるかもしれませんね。
 
 グリーン車に乗るというのは自己への先行投資です。お金をかけて楽を買うのではなく、将来の自己像を強める手段を買っている。よい服(ブランド品という意味ではありません)を着たりよい食事(高いものという意味ではありません)をしたりというのも、そういう要素があるでしょう。よい教育を受けるというのも同じことです。
 エゴだけが肥大化していくケースもあるのでなかなか難しい。本当の自分を謙虚に見つめられるかどうか。いわゆる「大風呂敷を広げる」というのとはまた別の視点です。
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長野先生
35年以上、中学生を教え続けてきました。生徒たちが日々の学びを通じて大きく成長できますように明るいヒントを発信していけたらと思います。

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