これまでどれぐらいの数の居酒屋に入ったことがあるだろうと考えるときがあります。私の場合、割烹とか和食の店とかではなく、完全に居酒屋ばかりですね。吉田類さんや太田和彦先生の映像や書籍を見ていると、知っているお店がずいぶん出てきます。
居酒屋ではお酒を飲むわけですが、当然少しは食べます。妙なものは頼みません。オーソドックスなものばかりです。
いわゆるチェーン店にはここのところまったく入らなくなりました。十年ぐらい昔はそうでもなかったのですが、あるときから敬遠するようになりました。私ぐらいの年齢の方だと皆さん同じようなことをおっしゃいますね。食べ物があまりおいしくないからかもしれません。
まずくはないのにおいしくもない。不思議な感覚ですね。魂がこもっていないからなのでしょう。そういうの、やっぱり伝わってきてしまう。
チェーン店もずいぶん向上してきているのは知っています。昔みたいなパックに入った業務用のおつまみ(居酒屋経営の雑誌なんかに広告が出ているやつ)をそっくりそのまま出しているようなお店は淘汰されてしまうのかもしれません。それでも個人の手作りというわけではなく、きちんとレシピは決まっている。ブレのなさが、ある意味でつまらなさにつながってくるのですね(このあたり授業と共通するものがあります)。
最近は凝った家庭料理みたいなのを出す居酒屋さんもありますね。料理自慢のご主人や奥さんが突然独立してはじめたようなお店。おいしいし雰囲気はいい。しかし、私はあまり行くことはありません。上品な料理が目立ちすぎるのですね。
何というか、だらだら飲んでいてふと食べ物が存在していたことを思い出すぐらいがだらしない酒飲み(=私)にはちょうどいいのです。そういう姿勢を許さない主張が食べ物から発散されていると、それはそれで申し訳なく感じてしまう。
下町の居酒屋に行くと、じつは今日にかぎって素材があまりよくないなと感じるものが出てくる日があります。値段の関係で仕入れられなかったのですね。それを少しでもおいしく食べさせるためにーーときには微妙にごまかすためにーー味を濃い目にしてあったりする。ずいぶん濃いなと感じるときもありますが、そこがいいのですよ。シメサバが極端に酸っぱかったりすると、いろいろ苦労しているなと微笑ましい。生きた人間が生きた素材を扱っている感じが伝わってくるのですね。
大塚のEやK、北千住のO、十条のS、湯島のS、神楽坂のI、中野のD、名古屋伏見のD、大阪野田のU・・・ぱっと思い浮かぶのはそのあたりかな。
2013.01.31 15:23
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